溝 2
駅前にあるファミレスで待ち合わせをすることにした。その店前に水田がすでに立っていた。
「すいません、休みの日に」
「いいよ、いいよ。中に入ろっかー」
福寺と水田は店内に入った。16時半ということもあり店内は空いていた。席に座ると福寺はすぐに筆記用具をとりだした。早く解決したい焦りが行動にでた。水田は自分が以前書いた対策書の内容をふまえて何を書いたらいいか教えた。それを福寺はメモしていった。あいまあいまで「対策なんてないで」などと会社に対して不満を述べていたが、色々な内容の文章が水田の口からでてきた。年度末で仕事量が増えていた。急いで数えた為、読み間違いをおこした。一回だけしか数えなかった。2個づつとって数えるのではなく、次回から5個づつとって数えてみることを試す。会社や取り引き先にご迷惑をかけた。福寺はこの文章をまとめたら形になると感じた。
「ありがとうございます。これを家でまとめて提出します。」
「大丈夫?」
「はい。」
福寺は肩の荷がおりたような気がした。福寺がメモ帳を鞄になおすと水田はいつものように喋りだした。さっきまでの頼れる先輩から、不平不満をぶちまける先輩へと変わっていった。福寺は帰りたい気持ちもあったが、わざわざ自分の為に来てくれた水田に対して何も言うことはできなかった。水田が帰ると言いだすまではつきあうことにした。
だんだんまわりの人が増えてきた。福寺たちはすでに食事を終え、コーヒーを飲みながら会話していた。
「そろそろ帰ろっかー。明日から仕事だもんね」
水田がそう言った時はすでに19時前だった。
「そうですね。ありがとうございます。家に帰って対策書まとめます。」
「うん。」
二人は店を出て改札口に向かった。帰る方向が別々なので挨拶をして別れた。
(早く家に帰ってまとめないと)
福寺は予想以上に遅くなったことにため息がもれた。電車で福寺はさっきのメモ帳を開いた。メモを参考に頭の中で文章を考えた。
(反省、発生した原因、今後について…)
最寄りの駅につくまでに頭の中では文章が完成していた。
(19時半…。)
駅から家までの徒歩は上島の事を思った。携帯を確認してみるが上島から連絡は何一つなかった。
(了君は何をしてるんだろう。)
せっかくの休みなのに断ってしまったうしろめたさが福寺にはあった。今日1日を振り返ってみると充分会える時間はあったと思うと余計に上島に申し訳ないと感じた。
家に帰り真っ白な用紙に考えた文章を書いていった。自分の部屋にある学習机に座り真剣にものを書くのは受験勉強、履歴書以来だった。内容より文章の長さを意識した対策書となった。
「終わったー」
思わず福寺の口から声がもれた。時計を見ると21時を回っていた。福寺は上島が朝出発する飛行機に乗ることを知っていた。搭乗手続きの為、空港にはさらに早く行く事ぐらいは予想できた。もう上島は寝てる可能性があると福寺は思った。福寺は携帯を置き、さっき書いた対策書をクリアファイルにはさみ会社の鞄になおした。そして電気を消して一階におりた。
「お父さん、先にお風呂入るね。」
リビングでテレビをつけながら寝ている父親に一声かけた。
「あ…え…いこ…」
寝ぼけながら何か声がしたが福寺は聞こうとしなかった。お風呂から上がり再びリビングをとおるが、父親は起きることはなかった。




