早春
上島は大学、福寺は会社に出勤し、いつもと変わらない日々が続いた。そして休日には映画などにも行くようになり二人の交際は順調に進んだ。
3月に入り冬の寒さは少し和らいだ。上島は今月末、中国に行くことが決まっていた。父親は写真をとることが好きな上島をみて、海外の写真を撮ってみるのもわるくないと直感で思った。また海外の社会を見ることも一つの勉強になるとも考えてた。将来この経験が上島に生かされる事を願った。上島が福寺に中国に行くことを話した時、少し迷ったような顔をした。その顔を見た上島は少し躊躇したが、海外に行くなら今しかないと思った。旅行会社に行ってみると、4日間現地スタッフが同行してくれるツアーがあると教えてくれた。これなら1人でも大丈夫だと思い、月曜日出発で金曜日までに日本に戻ってくるツアーに申し込んだ。大学ではすでに後期試験が終わろとしていた。もうすぐ春休みに入るところまできていた。
福寺は年度末の為、忙しい日を過ごしていた。弱音ははかずに今自分のすべきことを、たんたんとこなしていた。
(100個、5ケース。)
作業内容を確認した福寺はいつものように完成した商品の個数を数え、丁寧に梱包していった。納期が迫っている商品もあり、今日しなければならない作業が多数あった。慣れた作業ということもあり、合間合間で昨日日曜日に上島とカフェで話した事が頭に巡った。
(来週月曜日に了君は中国か…)
上島は飛行機が心配と言ってきた。慣れてない人はみんなそう思うよと軽くながした。春休み、海外旅行と羨ましかった。だんだん自分との立場の違いが鮮明になってきた。嫉妬からくる葛藤がないわけではなかった。上島が嫌いになったわけではない。将来結婚を見据えているぐらいだった。しかし上島の行動を尊重しないといけない思いと自分が毎日仕事をしているのに少しは考えてほしいという思いが衝突しはじめた。
(集中、集中。)
福寺は気を取り直し、再び商品の数を数えはじめた。
(土曜日、了君はアルバイトか…)
気がつけばまた上島の浮かれた笑顔があたまによぎった。定時を若干過ぎたが今日すべき作業を終え、私服に着替えた。携帯を確認してみると「明日でテストが終わるー」と上島からメールが届いていた。
(明日から春休みか…)
まだ月曜日が終わったばかりだった。あと4日間仕事かと思うと気が重くなった。週初めの月曜日はこう思う事が多々ある。しかし1日1日は着実に過ぎ去り週末をむかえてきた。そして1ヶ月がたち、この会社でいつの間にか二年目が終わろうとしていた。




