天保山 2
そこから会話がなくなった。どうしたらいいのか上島は戸惑った。福寺の手を握りしめたかった。自分の自信のなさが邪魔をした。こういう状況は初めてだったので福寺の気持ちを理解できなかった。そのままの状態が続いた。しかし福寺はこのままでも幸せだった。自分たちは友達なのか恋人なのかはっきりしたい思いはあった。しかしお互い思いは同じなのだと信じた。
この日は空気が澄んでいるように福寺は思った。
「了君、観覧車乗らない?」
「観覧車?」
「うん。ここの観覧車乗ったことある?」
「ないけど。」
「私もないからいこうよ。」
福寺にうながされて二人は大観覧車へ向かった。案内板の矢印に従って歩いているとエスカレーターを乗るようになった。自分たちの前で数人の女の子たちがエスカレーターに乗って上っていった。上島は福寺を先いかせた。福寺がエスカレーターに乗った後に自分も進んで乗った。上島は福寺の後ろで下を向いて上りきるのを待った。
二人はチケット売り場に並んだ。上島は財布をだした。
「大人2枚」
福寺がカウンターでお願いした。
「今度は私がだすよ。」
「いいよいいよ」
福寺がお金をだすのと同時に上島も自分の分をだした。
二人は乗車券を持って観覧車の乗り口に進んだ。上島は真下から観覧車を見上げた。
「高いなー」
その高さに上島は驚いた。乗車券を係りに渡すとすぐにのれた。二人は向かいあって座った。ゴンドラは二人を乗せて動きだした。上島はボディバッグから一眼レフを取り出した。
「カメラ持ってきてたんだ。」
「うん、一応ね。」
上島はファインダー越しに福寺を見た。軽く笑っている福寺が見えた。ふざけて構えたつもりだったけど、おもわずシャッターをきってしまった。
「ありがと。」
上島は撮った画像を確認した。二人はだんだん高くなってきてる景色を眺めた。
「高くなってきたね」
「ハルカスや」
「今日は遠くまで景色がみえるね」
「うん。生駒山もはっきり見えてるね。」
上島は景色を撮り始めた。福寺も携帯で景色を撮った。
「写真撮るの好きなんだね。」
「まあ。風景とかばっかりやけどね。」
「高井田で撮ってるとこ見たよ。」
「たまたま夜の街を撮ってみたいなって思って。」
大阪の景色が一望できるようになってきた。
「了君の家はどのへんなの?」
「僕の家はあっちのほう」
上島は生駒山の電波塔とハルカスの間ぐらいを指差した。
「栄子さんちは高井田やからあのへんやなー」
「そうだね。なんか不思議なかんじがする」
「何が?」
「こうして二人でいることが。」
上島はうなずいて福寺を見た。福寺は景色をみながら、何のつながりもない二人がよく巡り会えたなと強く思った。そう思うと感動してきた。福寺にはさっきまでの笑顔はなく、落ち着いた顔立ちになっていた。上島はその福寺の雰囲気に魅了された。目があった瞬間二人の時間が止まったように思えた。
「そろそろ一番上だね」
「ほんとだ」
二人は360度景色を見渡した。
「ねえ、写真いい?」
上島はひろがる景色を背景に福寺を撮った。
「了君、一緒に撮ろ。」
「うん。」
上島は福寺の隣に移動した。福寺が携帯を持った手を伸ばして二人で並んだ写真を撮った。二人で画像を確認した。
「あとで送ってね。」
そこからは隣同士に座ったまま外を眺めた。二人だけの空間が続いた。景色がだんだんと
低くなってきた。
「あーもう終わりかー」
上島は名残惜しそうに言った。
「面白かったね」
二人はゴンドラから降りた。
「どうしよっかなー」
「もう一回お店見ていい?」
「うん、いいよ。」
二人はマーケットプレースを歩いた。雑貨店等に立ち寄りいろいろな商品を見た。女性と二人だけでいるという事が上島にとって新鮮で嬉しかった。
「こんなところなんだ」
一通りまわったところで福寺は満足した。
「そろそろ行こっか」
「うん。」
二人はマーケットプレースを出て大阪港駅に向かった。
「明日から仕事だよ」
「大変やねー」
「でも今週行けばお正月休みだからね。」
「平日でもバイトがなかったら僕は大丈夫やからね。」
「うん、分かった。」
初めて二人で過ごす時間が終わろとしていた。
「楽しかったね。じゃあまたね。」
駅に着いた福寺は階段を上って行った。上島は福寺の笑顔をみて少し安心した。上島はバイクの駐輪場に移動した。福寺の為に白いヘルメットを持ってきていたが使うことがなかった。自分のヘルメットをかぶりエンジンをかけた。




