再会 2
(高井田の!!)
福寺はまさか上島が来るとは思っていなかたったので驚いた。
「えいこさんですか?」
「はい」
上島は笑った。
「よかったー、上島です。」
「福寺、福寺栄子です。すいません、私、11時に約束したのに遅れてしまって」
「いいですよ。僕も前遅れたので。」
まだ上島が来たことに動揺していて声がつまったので首をふった。
「待ってくれてありがとうございます。」
気をとりなおし、少し笑って福寺が話した。
上島がこないだの事を言おうとした時、福寺の携帯がなった。上島はとっていいですよっというジェスチャーをした。
「もしもしお母さん。」
福寺が母親と電話している姿を上島は見ていた。
(高井田の写真…高井田で写真を撮ってた時に会ったかも…)
上島は夜に高井田の写真を撮った時の事を思い起こした。帰りに女の子と目が合った事を思い出した。しかし数ヶ月前の夜だったので顔までは記憶になかった。目の前の福寺を見てあらためて待っていてよかったと思った。
上島は23時前に魚うおの前に到着した。23時になっても福寺は来なかった。ツイッターにメールもなく、どういうつもりか分からなくなってきた。歩道で20分ぐらい立って待っていたが状況は変わらなかった。少し離れた車道にとめたバイクに座って待つことにした。時折店の前を見るがそれらしき人はあらわれなかった。だんだん体が冷えてきた。0時30分になったら帰ろうと決めた。ハンドルにもたれかかるように座っていたら、走ってくる水色のコートを着た女性が目にはいった。見た瞬間に分かった。焦っている姿をみて確信した。緊張しながら声をかけた。目の前に会いたかった女性がいるので緊張がおさまる事はなかった。
上島は福寺の電話で話す内容によって大体は理解できた。
「なんとかして帰るね。」
そう言って福寺は電話を切った。
「ごめんなさい。」
「電車ないんですか?」
「そうなんです」
会いたかった上島が目の前にいるのに自分の失敗のせいで心から喜べなかった。
「家は?」
「高井田です。」
「高井田…」
上島は場所を思い浮かべた。
「タクシー?」
福寺は首をふった。福寺はあまりお金を持ってきてなかった。それに夜のタクシー代の相場がわからないので乗りたくなかった。
「少し歩いてみて、無理そうならタクシーに乗るか、母に自転車で迎えにきてもらおうって思ってます。」
「歩いて…すこし遠いいよ」
上島は募る話もあったが、親も心配してるみたいなのでまず家におくる事を考えた。
「20…、15分ここで待っててくれる?なんとかしておくってあげるから」
そう言って上島は停めてあるバイクのところに行きエンジンをかけた。白いバイクが福寺の前を勢いよく通り過ぎていった。それを見ていた福寺は、どこにいくのか分からなかった。
終電をのがし、父親はお酒を飲んだので迎えにこれないと分かった。最悪歩いて帰るか、24時間営業の店で待機するかどっちかの選択肢しかなかった。ツイッターの相手が間違っていない事が今になって分かった。そして、こんな時間まで待っててくれた事が嬉しかった。今までの色々な思いが頭に巡った。優しそうな顔立ち、あの時見たままだった。
寒空の中、福寺は魚うおの前で一人で立っていた。5分しか経過していないのに、かなりの時間待ったような気がした。
(まだかな…)
福寺は腕時計を見た。ただただ待つしかなかった。携帯で友達のSNSを見たりして時間をつぶした。さらに5分が経過した。福寺は上島が向かった方を見た。車ばかりが通り過ぎバイクは来なかった。
(どうしたんだろう)
だんだん不安になってきた。福寺はもう15分ぐらい過ぎたと思っていたが、上島は戻って来なかった。このまま戻って来なかったらどうしようという思いが沸いてきた。急にこの場所で孤独になったような気がした。しかし福寺は上島の言葉を信じて待つしかなかった。携帯をポケットになおして道路の
方を向いて立った。時間がたつにつれ、少しでも早く帰らないといけないという思いが強くなってきた。
しばらくすると遠くからバイクのヘッドライトが見えた。
(あれかも)
福寺の不安が期待に変わりだした。バイクが近づいてきた。福寺は上島であってほしいと願った。そのヘッドライトをずっと見続けた。スピードを落としたバイクが福寺の前で止まった。上島のバイクだった。(上島さんだ)
福寺は上島が戻ってきたので涙がでそうだった。もしかしたら、本当に戻って来ないかもしれないという思いがどこかにあった。
(よかった…)
ヘルメットをとった上島は
「ごめん、ごめん」と待たせた事を謝った。
「ヘルメット買ってきたよ」
上島は新しい白いヘルメットを福寺に渡した。
「私に?」
上島はうなずいた。
「後ろに乗って。家まで送ってあげるから」
上島は断られるか不安なところがあった。冷たいヘルメットを手に持った福寺はいきなりバイクの後ろに乗っていいのか戸惑った。しかし自分の為に買ってきてくれたので断る事はできなかった。福寺はヘルメットをかぶった。サイズはちょうどだった。
「きつくない?」
「うん。」
上島が緩めてあるヘルメットのベルトを締める為、福寺の顔の前にてを伸ばした。その手が震えているのが福寺には分かった。ベルトがキュッと締まり、安定した。福寺は上島の目を見た。
「どう?」
目が合った上島が聞いてきたので、福寺はうなずいた。上島もヘルメットをかぶり、バイクにまたがった。
「乗っていいよ」
福寺は足をかけて上島の後ろに乗った。持つところが分からなかったので上島の肩を掴んだ。肩を持たれた上島はドキッとした。
「行くよー。」
北に向かって進んだら中央大通りにぶつかる。そしたら右折したらいいと上島はルートをうかべた。二人乗りしたバイクが動きだした。福寺は初めてバイクに乗った。上島はいつもより慎重に運転した。信号待ちで止まった。
「大丈夫?」
上島は少し振り向いて大きめの声で聞いた。
「はい」
「初めて後ろに人乗せて運転した。」
「そうなんですか。大丈夫ですか!?」
「たぶん!!」
信号が青になり再び動きだした。
福寺は上島の肩を持ちながらその後ろ姿を見ていた。そしてさっき見た桜の公園の夢を思い出した。
実際にあった子供の時の嫌な思い出だった。
親に連れられて知り合いの家に行った。そして近くの公園に新しいボールを借りて一人で遊びに行った。ボールを置いて遊具で遊んでいるとボールがなくなっていた。探しながら泣いている時に、同い年ぐらいの少年が声をかけてきた。なくなったボールを公園に隣接する不気味な廃墟の中から見つけてくれた。中学生が置いてあるボールを蹴っていき廃墟にいれたところを見ていたので福寺に教えた。無事にボールが見つかったので何もなかったようにその日は過ぎ去った。しかしあの時の焦りと不気味な廃墟の印象が幼心の福寺に強く残っていた。今の自分の状況が当時と似ているように思えた。目の前で運転している上島にも助けられた思いだった。このまま後ろから抱きしめたくなる思いだった。
中央大通りに入りだんだんと高井田が近づいてきた。上島は初めての二人乗りだったがだんだん慣れてきた。緊張感もいつの間にかなくなっていた。せっかくなので家まで送ってあげようと思った。
「そろそろ高井田駅だけど、道教えてくれるー?家までおくるから」
「高井田駅でいいですよ!!」
一度は断ったが、もう一度言ってくれたので家の近くまで送ってもらうことにした。
「まだまっすぐ!!」
福寺は後ろから道案内をはじめた。そしてバイクは高井田駅を通り過ぎた。上島はいつでも曲がれるようにスピードを落として運転した。初めて二人が出会った場所を福寺は見た。
「次の信号待を左に曲がってください!!」
上島は言われた通りに左折した。
「ここで大丈夫です!!」
上島はバイクを止めた。
「もう家はそこなので」
バイクを降りた福寺は自分の家の方を向いた。そしてヘルメットをとり上島に渡した。上島の顔を見ると寂しそうな顔に見えた。これで会うことがなくなったらどうしようかという不安が上島にはあった。
「ありがとございます。」
「いえいえ。」
「ヘルメットもわざわざありがとうございます。」
「また使うからいいよ。」上島はそんな返答しか言えなかった。言いたい事を言わなければと上島は思った。受け取ったヘルメットを座席の下になおし終えると上島は福寺を見た。
「また会ってくれます?」
上島はさらっと言ったが、かなり勇気がいった。数秒後に福寺から「はい」という声が笑顔とともに聞こえた。上島にも笑みがこぼれた。




