再会
「ない!!ない!!」公園でボールを探している低学年の女の子の姿があった。住宅街の中にある遊具と広場を備えた小さい公園には、小学生がたくさん遊びに来てた。公園には桜の木々がたくさんあり今が満開だった。そんな桜の木の下をドッジボールぐらいの大きさの新しいゴムボールを女の子は必死に探した。何故ボールがなくなったかは分からなかった。これがみつからないと家に帰れない。親に怒られる。そんな不安と焦りが女の子に襲いかかった。ここには誰も頼る友達がいてなかった。
(どうしよう…)しゃがみこんで、泣くしかなかった。
(助けて…)涙が地面の上に落ちた。まわりの景色が視界から消えると、他の小学生の声がざわざわと聞こえだした。公園に設置された時計のスピーカーから5時を知らせる音楽が流れ出した。女の子は涙目でしゃがみながら時計を見た。
(こんな時間だ…)するとその音楽の音量が徐々に徐々に大きくなってきた。
そのうるささにより女の子は時計を見るのが怖くなり(音を止めて、止めて、助けて…)と呟きながら目をとじ耳をおさえた。胸を締め付ける苦しさが車の加速のように通りすぎようとした時、「どうしたの?」っの囁く男の子の声が聞こえた。
福寺の目が開いた。目の前の携帯が鳴っている事に気づいた。画面を見ると母からの着信だった。
「もしもし」
「栄子!!今どこにいるの!?」
「えっ」
状況が読めなかった。
「メールの返事もないし、なかなか帰って来ないから心配してるのよ!!」
福寺は腕時計を見た。
「12時!!」
思わず口にでた。
「そうよ12時、12時」
自分がいつのまにか寝てしまった事が分かった。
「ごめん!!お母さん、後でまたかけ直すね。」
携帯を一度きって我にかえった。待ち合わせは23時。もうすでに1時間15分過ぎていた。お酒を飲んだせいか、少し気分が悪かった。コートを着てカバンを手にした。立ち上がり冷めたコーヒーを一口飲んだ。まだ半分は残っいるコーヒーをゴミ箱に捨ててトレイを返却場所に置いた。
(どうしよう…)
外にでると一段と寒さが増しているようだった。人影もまばらで数時間前とは大きく変わっていた。自分を待つ人はもうおらないだろうと思った。すでに1時間以上は過ぎている。再び呼び出して自分は行かない。なんて最低な人間だろうと自分を責めた。とにかく魚うおに行かなければならないという思いがあった。すぐそこの角を曲がれば魚うおの並びの通りだった。この短い距離が非常に長く感じた。少し目をとじて考え事をした。まさか寝てしまうとは思わなかった。小走りで福寺は角を曲がると数軒先の魚うおが見えた。歩道にはそれらしき人はいないようだった。
(おらない…)
福寺はそのスピードのままで魚うおの前に向かった。一歩一歩が重かった。店の前で立ち止まり辺りを見渡した。天王寺で写真を撮っていた男性はいなかった。
(やっぱりいない…)
なぜか安心した。この寒さの中でまた待たせたかもしれないというもどかしさがあった。店の前で水色のコートのボタンをしめた。とにかく心配する親の為に早く帰らないとっという思いが強くなった。携帯で帰りの電車を調べた。
「えっ終わってる」
思わずが声がでた。福寺は唖然とした。終電を逃した経験は初めてだった。大きなため息とともに頭がさがった。母親に電話しようと力なく携帯を耳に当てた。
「すいません」
福寺の近くで声が聞こえたのでその声の方向を見た。福寺は高井田で見た男性の顔をはっきりと思い出した。そこには上島がたっていた。




