23時 2
この間は待ち合わせをしたのに会わずに帰ってしまいごめんなさい。その後も駅で待たせたこと、何も連絡しなかったことも謝ります。ツイッターで夜の高井田の写真を見た時、ある男の人とR55さんとを勘違いしてしまいました。R55さんは謝ることはないです。R55さんには大変ご迷惑おかけしました。今、会社の忘年会で天王寺にいます。もう一度会いたいと書かれたメールを読みました。11時まで天王寺にいます。11時前に駅前の魚うおというお店の前で立っています。私も直接謝りたいおもいはあります。急な話ですがよろしくお願いします。
福寺はメールを送信した。会いたいと思っているならもう一度機会をつくってもいいと思った。メールを読んで正直どんな人がくるのかが分からなくなってきた。ただ迷惑をかけた人に対して直接謝る事ができる。もし23時まで待って来なかったらもう一度謝りのメールを送ったらいい。そしてこれで終わりにしたかった。
送信後みんながいる場所へと戻った。福寺がなかなか帰って来なかったので何かあったのかと水田は気になっていた。そんな時に福寺が戻ってきた。
「どうしたん?暗い顔して」
福寺の様子を見て水田が言った。
「そうですか?」
福寺は無理に笑顔をつくって水田を見た。
「何かお酒でも注文しよっかな」
福寺はメニューを手にした。この後どうなるのかという不安が根底にあった。そしてうわべだけの会話がなおさら面白くなかった。お酒を注文したのはこの場で楽しんでない自分の雰囲気を一掃したいのが本音だった。
「あっこれ甘酸っぱくておいしいよ」
水田が横から教えてくれた。
「そしたらそれにします。」店員を呼び福寺はすすめられたラズストローベリーを注文した。
「今度またこのメンバーでしません?」
木元が話し出した。
「いいよねー」
水田が同調した。
「そうだ、来年花見に行きません。休日の昼ぐらいから集まって桜の下でバーベキューなんてどうですか」
「うん、また考えてみよっかー。うちらだけでしてもいいしね」
木元はうなづいた。桜の下で缶ビールを飲んでどんちゃん騒ぎしているテレビ映像を福寺は思い起こした。あんなふうになるとは思わないが到底行きたいとは思わなかった。福寺は二人の前向きな話しを聞いていたが、心からそう思っているのだろうかと疑問を抱いた。本音なら自分との温度差がかなりあると感じた。
18時半から始まった忘年会は今21時になろうとしていた。注文した料理もすべて運ばれ、みんなも満足した状態だった。会話も途切れ途切れになりだらだらした状況になりつつあった。福寺はその後一杯追加した。顔がうっすら赤くなっていた。
水田が事務と出荷のトップ二人に締めの言葉をお願いした。
(もう終わるんだ)
福寺は内心喜んだ。二人の言葉も終わり拍手でお開きとなった。一行は外にでた。
「さむっ」と自然にみんなから声がもれた。
福寺は水色のコートのボタンを一番上までとめてマフラーを巻いた。となりにいた木元が福寺に声をかけた。
「福寺さんまだ時間大丈夫?」
「どうしたんですか?」
「まだ9時半だから別のとこでもどうかなって」
「すいません、親がもうすぐ迎えにくる事になっているので」
福寺は残念そうに断った。そしてみんなは挨拶して駅の方に行った。福寺は水田たちにも両親が迎えにくると伝えて反対方向に歩いて行った。時計を見るとまだ21時30分だった。
(あと1時間半…)
角を曲がると夜空の真下にライトアップした通天閣が見えた。そんなに高いタワーではないのに何故か存在感が満ちあふれていた。急に寂しさがおそってきた。深夜まで営業しているファーストフードの店が目に入った。福寺は中に入りホットコーヒーを注文した。白いトレイにコーヒーだけのせて二階の席へ移動した。壁側のソファーに座りコートを脱いだ。一週間の疲れがたまり顔には元気がなかった。コーヒーにミルクと砂糖を全部いれた。一口飲んだ時、その甘さで疲労から少し解放された気持ちになった。
母親には水田の誘いでカフェに今から行くので、家に帰るのが遅くなるとメールで伝えた。なるべく早く帰ってきなさいと返信メールが福寺に届いた。12時までには帰るよと送り返し心配するだろうと思う両親に対して前もって手をうった。
そしてソファーに座りながらツイッターにログインした。そして二人の過去のコメントをもう一度見た。高ぶることなく優しそうなコメントがまだ削除されずに残っていた。高井田ですれ違った上島の顔を思い出そうとしたが、もううっすらとしか記憶がでてこなかった。携帯を置いて周りを見渡した。店内には5人しかいなく静かだった。




