忘年会
週末の金曜日を迎えた。もうすぐ大学は冬休みに入る。そう思うとあまり勉強する気がおこらなくなった。それでも上島はしっかり講義に出席していた。休み時間に今日も上島は福寺のツイッターを見ていた。あの日から毎日のように見てきたが更新されることはなかった。そして自分のツイッターにいいねやコメントがつくこともなくなった。何故自分に会わず先に帰ってしまったのか疑問が残っていた。
(ちゃんと11時前についていたら会えたかもしれない。)
そう思うと悔しさがにじんだ。ホームで送ったメールに対しての返信はなかった。高まっていた気分が一機にさめてしまった。そして、すれ違いざまに見た福寺が可愛いかったことが尚更落ち込む原因となった。
もしかしたら自分に彼女ができたかもしれない。彼女とのデート、メールのやりとりなど憧れる面があった。誰とも関わらない人生から脱却できる可能性があるかもしれないと思っていた。上島は考えれば考えるほどあきめきれない気持ちが強くなってきた。だめならしょうがないと覚悟して、もう一度だけメ
ールを送ってみた。
(さあどうなるか…)
気になりながら講義を受け、後にアルバイトに向かった。返信はまだなかった。アルバイト終了後にツイッターに再度ログインした。するとダイレクトメールが届いていた。
(きてる!!)
上島はメールを読んだ。時計を見た上島はすぐにゴルフセンターを飛び出し、バイクのエンジンをかけて出発した。
その日福寺は忘年会だった。仕事を終えると水田を含むいつもの女4人で天王寺に向かった。残りの9人はお店で集合というながれになった。
「合同ですること、製造部が羨ましがってたよ」
水田は得意気に話し出した。そこからはいつもの不平不満がでてきた。いつものように福寺は聞き役だった。今日は事務と出荷の上司がくることになっている。このような会話は今しかできないと福寺は内心思っていた。忘年会ではあたりさわりのない会話が続くのだろうと予想した。
天王寺駅のホームに降りた。数週間前に上島と待ち合わせしたホームだった。あの時の出来事は昨日のように覚えている。ちらっと待ち合わせ場所だった方向を見た。ホームの端には人影がなく薄暗い空だけが遠くに見えた。
水田が先頭にたち4人で歩きだした。駅をでてすぐ前の国道沿いに予約した店があった。
「魚うお」と毛筆字体で書かれた大きな看板がかけられてあった。
「ちかいですね」
福寺は水田にいった。
「うん、駅から近いほうがいいかなって思って。普通の居酒屋さんかな。お刺身とかが人気あるみたい。課長が肉より魚がいいってリクエストしてきたからしょうがない」
「でもお刺身のほうがいいよね」
みんなはうなずいた。
「いらっしゃいませー!!」
店員の明るい声が響いた。
「何名様でしょう」
「予約している主の原プレスです。」
水田が答えた。
「ありがとうございます。こちらへどうぞ。」
奥の座敷に案内された。部屋には出荷の男性陣2人が先に来て座っていた。
「もうきてたんだ」
水田が言った。6人6人で向かいあって座れるようにセッティングしてあった。福寺はどこに座ろうかとすぐに思った。靴を脱ぎ、一番入り口に近い端に座った。しばらくすると事務と出荷の課長、そして事務の男女5人が案内されてきた。そこには木元もいた。全員そろったところで飲み物を注文した。福寺は烏龍茶を頼んだ。そして忘年会が始まった。




