12月
一週間経過し、12月もあと2週間となった。福寺は一時落ち込んだが社会人として仕事に励んでいた。案外仕事をしている時のほうが余計な事を考えないので気持ちが紛れた。ツイッターに何かメールが届いてないかを確認した。ホーム場で上島が送信したメールは家に帰ってから知った。そのメールを読んだ時、「人違いだったの」っと思った。謝りの返信をしようかと悩んだが、さんざんこっちから推し進めておいて人違いでしたとは言いにくかった。しかし福寺のなかには待ち合わせをしたのに何も言わずに逃げてしまったことと、駅で何分も待たせてしまった事に対しての申し訳なさは残っていた。
上島のメールがその後送られてくることはなかった。もう関わることはないだろうと福寺は思っていた。
仕事終わりに水田が福寺のところにやってきた。
「忘年会、事務と出荷でいっしょにすることになったよ」
「いつするのですか?」
「今週金曜日」
「えっ急ですね。」
「うん、これそう?」
「まあ。大丈夫だと思います。事務となら人数多くなりそうですね。」
「無理な人もいるみたいだから今のところ12人ぐらいかな」
福寺はもうそんな時期なんだなあと改めて思った。会社全体で忘年会をすることはない。各担当部所が個々で開催するかを決めるようになっていた。去年は水田が幹事となり出荷担当だけで忘年会を行った。上司と水田が積極的に決めていた印象が福寺には残っていた。そんな前向きな水田が今年からは事務に配属した。12月半ばになっても忘年会の話を聞かないので福寺は今年はないものだと思っていた。
「もう帰る?」
「はい」
「私もすぐにいくね」
「はい」
水田は事務に戻った。福寺は片付けを終え更衣室に入った。(忘年会するんだ。) 会社の行事になると断りづらかった。しかも事務と合同ですることに嫌悪感があった。この働きかけは水田だと確信した。余計な事を計画する人だなあと思った。
「お待たせ」
明るい水田の声が福寺の後ろから聞こえた。
着替え終わると二人で会社をでた。作業は屋内なので外にでると一段と寒く感じた。
「寒いねー」
「うん、寒いですね」
二人は駅に向かって歩きだした。
「忘年会合同でするんですね」
福寺がもう一度水田に聞いた。
「事務と出荷でできたらいいなって言ってみたらOKがでたの。私は事務のメンバーより出荷のメンバーのほうがなんかいいしね」
福寺は軽く何回かうなずいた。
「どこでするのですか?」
「前の場所は予約がとれなかったから天王寺かな。快速で一駅だし帰りやすいと思うし」
「そうですね。」
「今日中に予約してみる」
去年に続き今年も幹事をする水田のようにはなれない、なりたくないと話しながらつくづく思った。
いつのまにか福寺は寒さを忘れていた。そんな会話が続き二人は駅についた。
「お疲れ様です」
「お疲れさまー」
二人は駅で別れた。一人になった福寺は水田との会話を思い出した。
「木元君、出荷といっしょにするって言ったら喜んでたよ。前、福寺さん誘った時、こられなかったでしょ。福寺さん誘ったけど無理だったって言ったら残念がってたよ。」
水田の話している顔が脳裏にうかんだ。何が言いたいのか推察した。
福寺は木元のことは知っているが、自分より2、3歳上の事務の男性ということぐらいしか知らなかった。
(いい人だったらどうしよう…)
こないだはとんでもない人違いをした。知ってる人のほうが安心感がまだあると痛感した。予感がめぐった上島の事を忘れたわけではない。しかし探偵じゃないのでもう一度見つける事ができるとは思わなかった。
(金曜日か…)
すこしだけだが金曜日が楽しみになった。




