待ち合わせ2
「やばい、おくれる」
上島は時計を見て呟いた。とめようとしていた天王寺駅前のバイク置き場が満車だった。どこかバイクを停める場所がないか必死に探した。
「あー電車で来たらよかった」
上島は想定外の展開に反省した。なかなか見つける事ができなかった。
(そうだ、ホームセンターがあった)
すぐさまUターンして、もと来た道を戻った。天王寺駅から多少離れたが停める事ができた。停めるまでにかなり時間をロスしてしまった。施錠してすぐに駅まで走った。
天王寺駅で出会い、それからの事をいろいろと前日まで想像していた。やっと自分にも彼女ができるかもしれないと喜びに満ち溢れていた。
阿倍野ハルカスが近づいてきた。
(もうすぐ!)
息が切れてきたので速足に変えた。ボディーバッグから財布を取りだした。人と人との間をぶつからないように注意しながらすり抜けていった。駅の入口が見えてきた。腕時計をみた上島は再び走りだした。
(間に合いそうだ!!)
改札をICカードの入った財布でタッチして駆け抜けた。18番ホームの階段はすぐそこだった。階段をかけおりたあと、左右に首をふって待ち合わせの場所を確認した。
(こっちだ)
何も考える余裕はなかった。電車が出発した後だったのでホームに人は少なかった。上島は前を向いて走りだした。すぐに水色のコートを着た女性が、前からこっちに向かってくるのが分かった。
(あの子かも!!)
上島は立ち止まった。
「すいませ…」
その女性の顔を見ながら声をかけようとした。
緩やかな風と香水の香りが吹き抜けた。
上島の時が止まった。女性は下を向いたまま自分の顔を見ることなく、声も聞くことなく上島の横を走り去って行ってしまった。悲しそうな表情をしているが分かった。
(待って…)
上島は振り返り、追いかけようと数歩踏み出したがやめた。立ち止まりその後ろ姿をぼうぜんと見続けた。まだ香水の香りがそこに残っているようだった。女性は階段を上がってしまい見えなくなった。
(行ってしまった…)
早く来なかった自分の失敗を悔やんだ。その女性は福寺だった。
福寺は上島に気づく事なくホームを後にした。後ろを振り向くのが怖かった。環状線の看板が目にはいった。福寺は環状線のホームに降りた。ちょうどオレンジの電車がホームに停車していたので乗り込んだ。少し息が切れていた。ハンカチで涙を拭いた。電車は天王寺駅から大阪へと走りだした。何も考えられなかった。ただ電車の音と車内アナウンスだけが聞こえていた。
上島は近くにあったイスに座った。周りを見たが水色のコートを着た女性は他にはいなかった。
(あな子だ、絶対)
上島は頭をかかえた。
(まだ間に合うかも)
携帯をとりツイッターにログインした。
「11時にホームで見たと思うのですが声をかけれませんでした。すこし同じ場所で待っています。」
そう文章を打って送信した。待ち合わせ場所から一番近いところにあるイスに座った。まだ駅の近くにいるなら戻ってきてくれるっと信じて待ち続けた。もしかしたらメールが届くかもしれないと思い、時折ツイッターを更新した。上島の視線の先で電車が何本も通りすぎた。普段なら電車を撮影しようと思うのだが、今はそんな気にはなれなかった。
期待はむなしく時間だけがすすんだ。
(12時かー)
約一時間待ったが、戻ってくる事はなかった。上島は立ち上がった。同じ場所でずっと座っていたので体が少し痛かった。気分的にも痛い思いをした上島は、ゆっくりと改札口にむかって歩き出した。改札でICカードをタッチして外にでようとした。
「チャージしてください」自分の手元で声が響いた。
(あっ、そうだ)
定期券は切れたままだった。機械で入金して外にでた。
(何をしよう…)
上島は考えようとしたがすぐには思いつかなかった。まずはバイクを置いた場所に戻ることにした。
(あの子、どっかで見たことがあるかもしれない)
何か上島にひっかかるものがあった。




