表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
衝突  作者: ku-ro
14/41

待ち合わせ1

意識はしていないが、いつもより化粧が濃くなったような気がした。水色のコートを着て鏡をもう一度見た。

(うん、大丈夫)

12月になり冬らしくなってきた。待ち合わせの1時間前に家を出た。いつもの駅に向かう道を歩いた。R55から届いたダイレクトメールを思い出した。

「今週土曜日11時前にJR天王寺18番ホームの東側でホームに入ってくる電車を撮影しときますね。もしよかったら声をかけてください。」

(やっと会える)

やはり緊張しているのが自分でも分かる。初めてすれ違った場所を通りすぎた。その時の感情が懐かしく思えた。その日から今につながった。ダイレクトメールを送るか送らないかで悩んだ自分だったが、送ってみて良かったと確信した。

「いろいろなところに行っているんですね。いつも楽しみに見ています。一度直接お会いしてみたい思いがあるのですが大丈夫でしょうか?唐突なメールでごめんなさい」

福寺は数日前にダイレクトメールを送った。

「いつもコメントありがとうございます。ekoさんもいろいろ写真のせていますね。いきなり知らない人と会うのは初めてなので、何を話したらいいのかわからないですがいいですか?」

R55からの返信メールはこうだった。断られなかった事に安心した。

「私もこういうふうに知らない人と会うのは初めてなので緊張しそうです。会社は土日が休みです。天王寺がいいと思うのですがどうですか?」

以前天王寺の写真を投稿していたのを覚えていたので、待ち合わせはそこがいいと考えた。

(私はあなたを見たことあるけどね)

福寺はメールを送った後笑みをうかべた。今度はなかなか返事がかえってこなかった。すこし急ぎすぎたかなっと不安になった。次の日にR55からメールが届いた。福寺の願いが叶い待ち合わせ場所と時間がついに決まった。

(どんな事を話そう。本当に来てくれるのかな…)

福寺の頭の中はその事でいっぱいだった。最後に福寺は年齢と水色のコートを着て行く事を伝えた。それに対して「分かりました。」と一文だけで、向こうからは年齢や職業などは教えてくれなかった。何か疑われているかもしれないと戸惑ったが仕方がないと思った。


いつもの緑の電車がホームにきた。平日とは違い土曜日は人が少なかった。空席の目立つ車内でぽつんと座った。この日まで待ち遠しかった。待ち遠しさが大きいぶんだけ仕事が嫌になった。そんな日々も過ぎ去るものでついに今日をむかえた。電車は走りだし天王寺駅へと徐々に近づいてきた。両手を膝の上におき、その手の甲を見ていた。前におちてくる髪の毛を時折うしろにかきあげた。

「次は天王寺…天王寺」車内アナウンスが流れた。福寺は時計をみた。

(時間通り…)

11時前に天王寺駅に到着した。自然と福寺は大きく息を吸って吐いた。ドアが開くと同時に立ち上がり降りる人の後ろに並んだ。電車を降りた福寺はホーム番号を見た。

(じゅうはち!)

待ち合わせのホームはここだった。いっぺんに緊張感が増した。降りてくる人の邪魔にならないようにホームの壁際に移動した。待ち合わせ場所の方向を向いた。

(いた!!)

太陽の光があたるホームの端に人影があった。一人だけだけだった。

(絶対にそうだ)

福寺は近づいていった。ちょうど反対側の線路から電車が出発した。一眼レフを持った人影がその電車を撮影しているのが分かった。

鼓動がたかなっている。一歩一歩近づいていった。近づくにつれ体型が記憶と違うように思えた。顔もそろそろ確認できる距離になった時、福寺は目を細めた。

(あっ、ちがう!!)

思わずホーム中央にあったベンチに隠れるように腰掛けた。ベンチに座っている人が数人いたので、むこうからは自分が見えないだろうと思った。

(気づかれてはいないはず…)

さっきまでの鼓動の高鳴りが緊張感から恐怖心へと変わった。

(むこうから声をかけてきたらどうしよう)

福寺は時計を見た。

(11時…)

携帯で自分のツイッターにログインした。

(もし遅れるならメールがあるはず)唯一のツールであるはずメールを確認したがR55からの新着はなかった。

(やっぱりあの人なんだ…)

今日の日をどれだけ楽しみに待っていたか、その期待していた感情が一気に覆され、今は間違えてメールをした相手に怯えている状況になった。もう一度人越しにゆっくり前屈みになり確認した。

(やっぱり、ちがう)

涙が流れてきた。

(こっちにきた!!)

その男が福寺の方に歩いてきた。福寺は急いで立ち上がった。涙が流れたままだったので下を向いて反対方向に走った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ