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衝突  作者: ku-ro
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都会の森

鶴見緑地についた福寺は自転車から降りて風車の丘に向かう門を通りすぎた。そこから木々が立ち並ぶ都会の中にできた小さな森の坂道を歩いた。軽装、運動靴できて正解だった。あまり木々に囲まれた中を歩く経験はなかったので福寺は自然に癒されるような気分を得た。

坂を登りきると今度は青空の広がる丘にでた。

(きれい…)

ツイッターで見た写真と同じ景色が目の前にひろがった。丘の傾斜一帯に薄紫のコスモスが絨毯のように咲いていた。きれいに整列されたコスモスとその数に福寺は驚いた。そして丘の上にはシンボルの風車が建っていた。家から自転車でこれる距離なのに何故今まで来なかったのだろうと疑問がわいた。そして風車と一面に咲くコスモスを携帯で撮影した。丘をふきぬける風により、福寺の髪がなびいた。きてよかったと福寺は思った。風車を通りすぎるとバラ園があった。

(ここもツイッターでみた…)

福寺はバラ園のアーチをくぐった。小学校一年ぐらいの男の子と2才ぐらい年下の妹が目の前を通りすぎた。バラには見向きもせずに通路や飛び石を楽しそうに走りながら向こうに行った。時間に余裕のある福寺は何も気にすることなく一本一本木々に咲くバラを見ていった。

携帯をギリギリまで近づけて写真を撮った。隣にいた女性が顔をバラに近づけ香りを楽しんでいる姿を見た。

「いい香りがするよ」

福寺に気づいた年配の女性が声をかけてくれた。見ず知らずの自分に対して気さくに声をかけてくることに親近感がわいた。女性に言われたので福寺はバラの茎をつかんだ。自分を守るかのようなバラの棘が手に刺さった。バラに棘があることを忘れていた。痛さを覚えた福寺は、もう一度棘が無いかを確認して茎を持ってバラを近づけた。洗濯洗剤によくある香りだなとまず思った。現代社会の中で、バラが放つ本来の香りの良さが屈折していた。


しばらくして福寺は自転車をとめているところへ戻る事にした。もしかしたらと歩きながら上島の姿を探した。しかし同い年ぐらいの男性はおらなかった。

(いてるわけないよね…)

自転車に乗り鶴見緑地をでた。写真の撮りどころがたくさんあった。緑地の中で見たカップルが楽しそうにバドミントンをしてる姿が羨ましかった。きた道と同じ道を通って家に帰った。行きと同じ道なのに距離が近く感じた。


その夜、今日の鶴見緑地の写真とコメントをツイッターに投稿した。炎天下ではなかったが秋の日射しの中で日中を過ごした福寺は平日より疲れがでた。いつもより早くベッドに横たわり暗闇の中で天井を見つめた。明日は日曜日なので会社は休み。仕事の事は頭から離れていた。目覚ましをかけないで寝る夜は気持ち的に楽だった。

(鶴見緑地の投稿見てくれるかな…)

そんな事を考えているうちにいつの間にか福寺は眠りについた。


自然に目が覚めた福寺は時計を見た。平日より15分だけ起きるのが遅かった。早く寝たので誰かからメールが届いてないかまず確認した。そして布団に入ったままうつ向きになり自分のツイッターをひらいた。

(あっ、コメントきてる!!)

福寺はすぐに内容を確認した。

「鶴見緑地に行かれたんですね。写真を撮ったり、芝生でバドミントンとかして、ゆったり過ごす一日も良さそうですね。」

いっぺんに目が覚めた。自分と思いが同じだったことが分かった。

「そうですね。行ってみてよかったです。シートとか持って行って一日過ごすのもわるくないですね」

そう書いて返信を投稿した。

(やったー)

福寺の心が高まった。そして今度はR55のツイッターを見た。そこには着陸寸前の飛行機の写真が投稿してあった。

(昨日は飛行機を撮りに行っていたんだ)

相変わらずいろいろなところにいくのだなあと笑みがこぼれた。

「大阪にこんな着陸間際の飛行機が見れる場所があるんですね。」

と今度は福寺の方から返信した。


携帯の画面を消して一階に降りた。

「おはよう」

朝ごはんの準備をしている母に福寺は声をかけた。

「おはよう。栄子、今日はどっか行くの?」

「ううん、行かない。」

「買い物に行くんだけど一緒に行かない?」

「いいよべつに。家にいてる」

「そう」

すこし寂しげな声に聞こえた。椅子に座り、母がつけていたテレビを見た。

「チャンネル変えていい?」

「いいよ」

親とどっかに行くことは年がたつにつれ減ってきた。そろそろ交際する人がいてもいいのではないか、そんな親の思いをにじませるような発言がでてくるように思えた。なかなかそう簡単にいくわけではない。親からすれば悪気のない一言一言だが、福寺は聞くのがいやだった。しかし今は望みがでてきたように自負している。すこし親に対しても寛容な気持ちがでてきた。

リモコンをもちチャンネルを変えみた。しかし興味がわくようなものはなく、結局元に戻した。

 テレビを見ているうちに朝食がテーブルに並んだ。

「お父さんまだ寝てるね。」

母が独り言のように言った。

「うん。今日一緒に行くよ。」

「ほんと」

母が嬉しそうに福寺を見た。

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