返信
11月に入り紅葉の季節を迎えた。朝晩は冷えるが日中は暖かい気候が続いていた。
福寺は家をでるとすぐにイヤフォンをつけ音楽を聞きながら駅まで歩いた。少し肌寒さを感じた。時間通りに電車がホームに入ってきた。女性専用車両に入り中を見渡した。空いてる席に座っていつものようにツイッターを確認した。そこには新たに花や紅葉した草木の写真がアップしていた。風車の写真を見た時に鶴見緑地だと分かった。鶴見緑地は自分の家から自転車でも行ける距離だった。親近感がわいたような思いだった。
福寺も最近自分のツイッターに写真をアップするようになっていた。いつの間にか空を特に意識するようになった。昨日は帰り道に見た夕暮れを撮りツイッターにのせた。
(土曜日、私も鶴見緑地に行ってみようかな)
福寺は体を動かす休日もいいかもしれないと思った。
ekoというニックネームでツイッターに登録してから数日たった時、コメントのやりとりこそなかったが、夜の高井田の写真をのせていたR55 (ニックネーム)と相互フォローになった。福寺はR55の過去のツイートを見てみたが返信やいいねは全くなかった。その日から約1ヶ月間、更新されるツイートに対して福寺だけがいいねをつけてきた。何とか自分の存在を知ってもらいたかった。お返しではないが自分のツイートにいいねや返信がつくことを期待した。しかし、おもいは空しく向こうからのアクションはなかった。
(私のとこは見てくれてるのかな…)
答えは分からなかった。携帯をポケットになおし目を閉じた。イヤフォンから音楽だけが一際大きく聞こえた。
(どうしよう…)
少し考え、鶴見緑地のツイートに対し返信をしようかと悩んだ。
(初めまして。鶴見緑地ですね。私も子供の時によく行きました。)
眉間に力が入った。
(初めまして。いいところですね。私も今週末散歩に行こうと思います。)
二通りの返信内容を考えた。どっちにしようと思った瞬間に目を開けた。鋭いめつきで前を見た。対面に座っている女性たちの背後の景色が流れるように過ぎさっていた。降りる駅が近づいてきた事が分かった。いつもより早く駅に着くような感覚だった。福寺は会社に着くまでの間に次の行動を考えた。
会社ではすれ違う従業員と挨拶をかわしていった。朝の顔はみんなが無表情で仕事の大変さがにじみでていた。作業着に着替えて時計を見た。まだ始業までに時間があるので携帯をとりだした。ツイッターを開き、鶴見緑地のツイートに対しての返信を押した。コメントを打つらんに移動した。
(はじまして。いつも楽しくみています。バラが綺麗に咲いているのですね。私も今週土曜日に見に行きたいと思います。)
そしてコメントをもう一度確認して返信ツイートをタッチした。面識のない人へのコメントは初めてだった。そして、こんなに気持ちの入ったコメントも初めてのような気がした。
(さあ、返信したよ)
どんな返答があるのかを待つ立場になった。無理なら無理であきらめたらいい。携帯をなおして持ち場にむかった。仕事中もどうなるのかと気になった。もしかしたら鶴見緑地に来るかもしれないという考えもうかんだ。昼休み、帰り道と進展はなかった。R55から返答があったのは夜の20時だった。
(はじまして。コメントありがとございます。バラが綺麗に咲いていたので行ったかいがありましたよ。また僕も行きたいですね。)
福寺は上島の顔を脳裏にうかべ「おそいなー」と軽く笑いながらつぶやいた。自分のコメントに対して、待ち遠しかった返答があったのでほっとした。




