パンク
三連休などあっという間に過ぎ去り、また平日が巡ってきた。朝食を食べ身支度を終えた上島は玄関をでた。天気は晴れで心地よかった。出発しようとバイクに乗った瞬間違和感があった。
(あれっ、何かおかしい)
後ろのタイヤを見てみると空気が抜けた状態だった。
「パンクや!!」
思わず声がでた。穏やかな朝が急変した。
慌ててヘルメットを脱いだ。そして家に舞い戻り玄関で叫んだ。
「パンクした!!」
上島は靴箱の上に置いている自分の自転車の鍵を探した。すると母親が上島の方にきた。
「学校まで車で送ってあげるよ」
しかし上島の頭の中ではもう自転車で行くしかないと決まっていた。
「うん、自転車でいくわ!!」
「いいの?」
母親の声は聞こえていなかった。自転車の鍵を見つけた上島は再び玄関を飛び出した。久しぶりに自転車に乗った。
「あー、空気抜けてる」
また走っていき玄関のドアを開けた。空気入れを取り出し急いでタイヤに空気を入れた。ドアの音がまたしたので母親が玄関前まで出てきた。
「これ、お願いね!」
空気入れをそのままにして、自転車に飛び乗った。
「きをつけてね!!」
上島は何も言わずに家を出た。
「パンクかよー」
小声で呟いた。
黄緑色の桜並木の下をスピードをだし、一生懸命前屈みでこいだ。制服を着て並んで走っている自転車を追い抜き、歩道から車道に何度も車線を変えながら急いだ。数十分たった頃からペースが落ちてきたが他の自転車よりは依然としては速かった。自転車がパンクするのと同じでバイクもパンクするのだとあらためて身に染みた。知らない間に目覚まし時計を止めて寝坊した以来の遅刻になりそうな気がする。JRの高架をくぐった時、緑の電車が通りすぎた。
(あと半分だ!!)上島は自転車をこぎながら思った。
福寺は鏡の前で髪型を整えすべての準備が終わった。これで水田に何も言われる事はないだろうと確信した。
(今週は4日だ)
祝日がある週はやはり気分的にも大きい。福寺は駅に向かい歩きだした。上島と休み前に目が合った場所を今歩いている。その時の事が頭によぎった。
(何とか会えないかな…)
休日の間も忘れる事はなかった。しかし想いはあるが叶わぬ願いであるとうなずいた。今日はいつもより電車が混んでいた。福寺はドアの前に立ち外を眺めていた。自分の予感は頻繁にあるわけではない。むしろほとんどないと言ってもいいぐらいだ。そんな中で久しぶりに働いた予感がプラスのイメージだったので尚更忘れる事ができなかった。
(カメラが好きなのかな…)
福寺は携帯を取りだし同級生のSNSを見た。楽しそうに食事している写真がアップしていた。書かれている文章を読んで、いいねをつけた。直後に福寺は閃いた。
(もしかしたらインターネットに写真をアップしているかも)
少し考えて「高井田」「夜」と画像検索をした。色々な画像があるなかでそれらしいのは分からなかった。次にツイッターで同じように検索してみた。ツイートが順に表示されていった。福寺は順番に見ていった。
(あった!!)
思わず目が大きくなった。画面には見慣れた飲食店と走る車がアップしていた。
(絶対にそうだ)
小さい糸を離さないで手繰り寄せた思いだった。福寺は携帯を胸にあてた。電車の音と心臓の高鳴りが聞こえた。
(どうしよう)
視線を外に移した。高架を走っている電車の中からは晴れ渡る空が見えた。遠くにハルカス、そしてビル、マンション、戸建が無数に拡がっていた。
(もう一度会えるかもしれない)
その望みを抱いた時、高架したを上島が自転車で通りすぎていった。
大学には一限目の途中に着いた。若干息を切らしながら教室に入った。後ろの方に座り自動販売機で買ったペットボトルのスポーツドリンクを一口飲んだ。
(疲れた…)
鞄から筆記用具をださないまま放心状態だった。母に車で送ってもらった方がよかったかなと思った。しかし帰りも大学にきてもらうわけにはいかない。
(帰りは電車…)
電車に乗る事をためらってしまう自分がいた。
(まあ、こんな事はもうないだろう)
呼吸も落ち着き、勉強の姿勢へと変わっていった。
休憩時に自分のツイッターをひらき、こないだアップした写真を確認した。そしてフォローしている人の写真やコメントを見ていった。それを見ていると自分も行って撮影してみたいと思う場所があった。大学とバイトさえなければいつでも動く事ができるのは今の強みだと思う。これぐらいの距離ならバイクで行けそうだと思った時、今朝パンクしていた事を思いだした。バイクのパンク修理にいかなければならない。そしてアルバイトもある。今日は忙しくなりそうだと覚悟した。
(色々写真のせてるんだー)
昼休みに福寺はツイッターを見て思った。プロフィールをみても特に年齢や職業など書いていなかった。アップしているコメント画像からも確認できなかった。本当に高井田ですれ違った人なのかと少し不安になる要素だが、絶対にあっているという自信もあった。今の環境を思い浮かべた時、彼氏ができるとも思わない。
(この人がいい)
目が合った時に浦部と似たように仕事で何か成功しそうと予感がした。しかし瞬間的に何故おおいかぶさるようにこの人は私を助けてくれる存在だと新たな予感がした。どっちが正解なのかは分からなかったがその予感を信じたかった。
(でも彼女がいてたらどうしよう)
まだすれ違って顔をみただけの状況にかわりはない。しかし福寺は名前も知らない上島の存在が大きくなっていった。ツイッターに登録、コメント、思いきってダイレクトメール。これからどのような行動にうつすか考えながらツイートを見ていると、あっというまに昼休み終了の時間になった。
(時間だ…)
携帯をなおし持ち場にむかった。不思議と少し楽しみな気分になっていた。




