後編
そのとき、誰かの声がしました。
「さっちゃん!そのまま、まっすぐに走ってエレベーターに乗るんだ!」
さっちゃんは、言われるままに、エレベーターに乗りました。さっちゃんが、エレベーターに乗るとドアが勝手に閉まりました。
さっちゃんには、エレベーターが、上がっているのか、下がっているのかも分かりません。
エレベーターが急に止まり、ドアが開きました。
真っ暗でした。
誰かの声が、また、さっちゃんに聞こえました。
「さっちゃん、とにかく前に走るんだ!」
「こんなに暗いのに、そんなこと出来ないよ!あなた、誰なの?!出てきて助けて!!」
さっちゃんは、涙をポロポロこぼして叫びました。
「……それは、出来ないんだ!でも、僕は、いつも、さっちゃんに応援してもらっているから、さっちゃんの力になりたいんだ!
さっちゃん、前を、よく見て。何か光っているのが見えない?それに向かって走るんだ!」
さっちゃんは、暗闇を、よく見てみました。確かに、かすかに何かが光っています。
さっちゃんは、その光を目指し、思い切って走り出しました。
走れば、走るほど、その光は、強くなり、さっちゃんに近づいてくれている様でした。
すると、後ろから魔女の声がしました。
「待て~、待っておくれ!私のエモノ……。」
力なく聞こえる、その声の方に、さっちゃんは、決して振り向かずに光に向かって走ります。
もう光は、目の前です。
(あと少しだ……!!)
そう、思ったとたんに、さっちゃんは、温かな光に包まれました。
「……さっちゃん、着いたよ!さっちゃん」
さっちゃんは、お父さんの声で、目が覚めました。車の中に、いました。お父さんが言います。
「お父さん、ちょっと用事があるから……」
「ダメー!!
お父さんも、私とデパートに行って、スターくんのグッズを探すの!!」
「うーん、わかったよ。でも、さっちゃん、今も手にスターくんの人形を持っているじゃない?」
「え?」
さっちゃんは、自分の腕の中を見てみました。
さっちゃんの腕の中には、
マントはボロボロになり、顔は泥だらけのスターくんの人形が確かに、ありました。
(おしまい)




