足取りは軽く
兄が居ないことを確認し、部屋を出る。
今日は年に一度、三日間だけ王都で催させる、年の終わりのパレードだ。
皆、王都に足を運び、今年一番の賑わいをみせている。
屋敷の召使い達も平等に、祝いの日、きっとパレードへ出掛けているだろう。
いつも迷惑をかけてしまっているので、今日ぐらいはハメを外して楽しんで欲しい。
いつもは私を監視…見守っている兄も今日だけは、パレードの方へ赴いている。
きっと今頃兄は、表面上だけは楽しそうな貴族の集まり、実際は相手の腹の探り合いをしているのだろう。
これだから、貴族は信用できない。
優しい顔をして近づいてくるものは大抵下心があるのだ。
しかし、今はそんなことはどうでもいい。
今日だけは私は貴族の娘ではなく、街娘なのだから。
抜け道を使い、素早く屋敷を出る。
軽く服についた埃を手で払い、外の空気を思いっきり吸った。
スッキリした空気と一緒に、パレードの香りが私の中に入ってくる。
耳を澄ませば、パレードを楽しむ人達の声が聞こえてきて、私の心臓は高鳴った。
「行こう。」
貴族の鎧を脱ぎ捨ててきた私の足取りは軽い。
早く、早く
きっと今年で最後だから
早く、早く
貴方に会いにいく
早く、早く
それぐらいいいでしょう?
早く……。