表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

鳥は自由ではありません(空にだって交通規制があるんです)

作者: 水無月夜行

 人間は勘違いをしている。



 鳥は自由でいいな?そんな馬鹿げた事を言っている。何をおっしゃいますやら。鳥は決して自由な生き物ではありませんよ?



 いや、中には自由な鳥もいるのかもしれませんけど、僕は自由なんかじゃありません。



 あぁ、遅れましたが、僕は雀です。



 名前なんてありません。



 ただのどこでもいる雀ですから。



 でもこれから語らねばならないので、わかりやすくする為に名乗った方がいいのかもしれませんね。



 そうですねぇ。



 決めました。



 僕の名前はスズ太郎でどうでしょうか?安易な名前なのはわかってますよ。でもそんな事はどうでもいいのです。名前なんてあってもなくても一緒ですから。ここだけの名前です。



 僕の名前はスズ太郎。ただの雀です。



 そしてそんな雀の僕は決して自由なんかではないのです。



 空にだって交通規制みたいなものがあるんですから。





 皆さんは雀を見たことはありますか?ない人はいないでしょう。それほどメジャーな鳥です。体は小さくて可愛い鳥です。自分で言うのもなんですがね。



 さてさて、鳥は自由に大空を飛べていいな。なーんて言う人間がいるみたいですが、僕から言わせてもらえば、何バカ言っちゃってんの?ってな感じです。いや本当に。



 たしかに飛ぼうと思えば飛べますよ?ですけど、それは命をかける事になるんですよ。



 意味がわかりませんか?



 鳥だってね、弱肉強食の世界なんですよ。



 雀は他の大型の鳥類の餌なんですよ。



 喰われる立場なんですよ。



 死んじゃうんですよ。



 大空を飛んだら、隠れる場所なんてありませんからね。ソッコーで見つかって喰われちゃうんですよ。これでも鳥は自由なんてほざきますか?



 一回失敗したら死ぬんですよ。



 人間は失敗してもやり直しがきくでしょう?弱肉強食の世界ではやり直しなんてききませんよ。そこで終わりです。



 僕からしたら人間の方がよっぽど自由ですけどね。



 色んな道を選べる訳ですし。僕らの道なんて一つですよ?それでも鳥になりたいですか?



 僕は生まれ変わるなら、断然人間がいいですね。



 気をつけなければならないのは、俗に猛禽類、と呼ばれる鳥たちですね。



 まぁわかりやすく言いますと、鷲や鷹、トンビなどがあげられます。



 猛禽類を見たら逃げるのが鉄則です。



 逃げ遅れれば即、死、が待っている訳ですから。



 しかしながら、もっとも厄介なのは実は猛禽類ではありません。なんだと思いますか?



 これもメジャーな鳥です。



 答えはカラスです。



 カラスは普段は人間が残した残飯などを漁って食べていますが、彼らも極まれに同じ鳥を食べるのです。



 しかも気まぐれでね。



 だから注意するのがとても難しいのです。



 前にこんな光景を見た事があります。



 一羽のハトが網に絡まって動けなくなっていました。それをカラスは見つけ食べたのです。



 壮絶な光景でした。



 身の毛もよだつ光景とはこの事です。



 泣き喚くハトをよそにカラスは残飯を食べるのと同じようにハトを食べたのです。



 だから一番注意するべきはカラスですね。



 あっ。全然余裕。カラスなんて俺らに興味ないんだから。と勘違いをしてカラスに近づき過ぎて喰われた雀は何匹もいるでしょう。



 おっと。今、僕の隣に顔見知りの雀が来ました。彼も名前なんてものはありませんけど、つけるならスズ次郎ですね。



 スズ次郎は言いました。



 先ほど、カラスに追われている雀がいた、と。ほらね。言っているそばからこんな状況ですよ。



 そうこうしている内に僕の周りに雀が集まって来ました。



 別に僕が人気者だからという理由ではありません。



 簡単な話です。



 仮に猛禽類などに襲われた時に、少しでも生存確率を上げる為です。



 僕たちは仲間を犠牲にして生きているのです。それが生きる事なんです。全員了承しています。



 これが雀の世界なんですよ。



 大空を飛びたい?



 僕だって飛びたいですよ。



 こんなに青く、どこまでも広く、大空はどこまで続いているんでしょうね。



 きっとどこまででも続いているんでしょう。



 なーんて浸っていたら悲鳴と共に、周りにいた雀たちが一斉に飛び出しました。



 なんだ? 



 とは思いません。わかっています。



 きっと僕たちの誰かが死ぬんです。



 いえ、僕が死ぬんです。



 気が付けば僕はカラスのクチバシに捉えられていました。



 どんなに鳴いても泣いても助けなんて来ません。



 みんな助かったと、ほっとしています。



 わかっています。



 これが雀の世界ですから。



 もし、今、願いが叶うなら僕は何を願うと思いますか?



 助かりたい、とは願いませんよ?



 当たり前でしょう?また、同じ様な事を繰り返すんですから。いっときも休まる事のない人生なんて御免です。



 もし、もし願いが叶うなら、僕は―――――



「もし、願いが叶うなら、次は人間に産まれますように」








終わり

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ