龍次君のイライラ
(はあ··イライラする···)
どっかの省エネ主義者にあこがれているこの俺だが、
三年になってからイライラすることが妙に多い気がする。
当然、原因はこのクラスにある訳で、その中でも特に大きな要因といえるのは、
今、俺の目の前にいる男 加部雅彦 といえるだろう。
つまり、俺は今イライラしている訳だが、何故イライラしているのか?
まあ、こいつとしゃべっていてもつまらないという理由もあるのだが、
これは俺が嫌いだからということもあるので、置いといて。
やっぱ、大きな理由としては 性格が悪い というものである。
俺は、小学校の頃から加部とわりと話す仲だった。
詳しい経緯は長くなるので、話さないが、
ある時期、俺は精神的にきつい時があった。
そんな時、加部は俺の方を見てニヤニヤと笑っていたのだ。
この時からだろうか。
俺が友達を友達と思わないようにし始めたのは。
そんな加部と今でもしゃべっている理由は俺にも分からない。
だが、友達と思っていない··そう思うだけで楽に感じることが多いのも事実だろう。
いじめられているのをいじられていると考え込むことと、同じことだ。
とりあえず、俺はその時からこいつのことが唯一嫌いで、
そんなやつと嫌でも顔を合わせ、話さなければならないこのクラスでイライラするのは当然のことだろう。
給食の時間、当番のやつらが皆に給食を配っている中、
俺は、菊水、新井、古橋、そして加部としゃべっていた。
最初は、どこにでもあるような当たり障りのない会話をしていた。
しかし、新井、古橋がいなくなると、
何故か俺の好きな人という話になっていった。
「で、いつ告白すんの?」と菊水。
「誰が、誰にだ?」と俺。ここまでは冷静だ。
「分かってるくせに~ で、いつ?」と加部。あぁもうイラついてきた。
こいつらが言っているのは、1ヶ月ほど前うちのクラスに転入してきた鷲沢というやつのことだ。
言っておくが、好きではない。
というか、まず可愛くない。こいつらもゴリラとか呼んでるし。
どうしてこんなことを言われているのか?
驚くことに何一つとして理由がない。
鷲沢の方を見ていた、とか誤解されるようなことをしたのなら、しょうがないと言えないこともない。
しかし、そんなことは何一つとしてないのである。
そうなると、イライラするのも仕方がない。
しかも、これがしつこいのである。
証拠が何一つ上がってないこのネタでどうしてこんなに長続きするのだろう?
というか、菊水は二年の頃はこんなことするやつじゃなかったのに。
やっぱ、加部の影響か···忌々しいことこの上ない。
ちょっとケンカした後、給食の時間が来て俺はようやく平穏な時間を手に入れた。
(しかし、こんな風にケンカしていると本当の友達みたいだな···)
いかんいかん、俺は友達を作りたくないんだ。
自然と頭の中はあの時のこととなっていた。