龍次君の朝
眠い···。
ちょっと夜更かししてしまった。
アクビをしながら、靴を履き、学校に向かって歩き始める。
ほんとアニメが重なってると大変。
十分ほど歩くと、学校の門が見える。
朝練の生徒でなかなか活気づいている。
うちの学校は、運動部はだいたい強い。
それこそ、弱いのは卓球部ぐらいだろう。
特に強いのは、テニス部と··男子バスケットボールとかかな。
教室に入ると、石川と古橋がいた。
俺の顔を見るなり、石川はとんできた。
「昨日の試合は良かったね~。」
「あそこまで打つと今日の試合が心配だけどな。」
昨日は阪神の快勝である。
俺らは、毎朝こんな感じで野球の話をして過ごす。
話がなくなれば、俺は読書を始めたり、やっていない宿題をしたりする。
やがて、菊水が来てその後、加部、新井と続く。
そろそろ、菊水が来る頃だろうか。
教室の後ろのドアが開く。菊水が来たのだろうか。
振り返って見ると、そこには、菊水ではなく宮崎がいた。
空気がなんか痛い。この教室に俺を含めて四人しかいない状況では気まずい。
しかし、早い時間に学校に来ること事態はいい判断と言えよう。
もっと人がいる時に来れば、気まずいだけでは済まないだろう。
この時間帯に来ているやつは、たいていカーストの低いやつだ。
それはどの学年、クラスでも共通しているのではないだろうか。
俺も毎日早く来ている。
最初はチャイムぎりぎりで学校に来ていた。
しかし、俺がドアを開いた後、一瞬向けられる視線。
そしてそれが(なんだお前か···)といったものに変わる。
これはなかなかきついものだ。
宮崎はそういった視線にも耐えていた、というか気にしていない感じだった。
でも、昨日のこともある。わざわざ何か言われると分かっていて、遅く来る必要はない。
それに、 今日は眼帯と包帯 セットらしい。
何故、今日に限って。そんな疑問もあるが、今日だからという見方もあるかもしれない。
「自分をできるだけ隠しておきたい。」みたいな。
宮崎は授業中自分の世界入ったりとかはしない。
そもそも、アニメでいるようなのが現実に存在するのか。
そんな疑問は置いといて、俺には無理して演じているようにしか見えない。
そんなことを考えるまでには、俺は宮崎のことが気になっていた。
また、ドアが開いて今度は菊水だった。
当たり障りのない会話を交わし、その間に人がだんだん集まってくる。
騒がしくなる教室、その一角で一人静かな宮崎。
こんなに人がいるのに、俺には宮崎が目に付いて離れなかった。