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1話:廃世界

「悠斗≪ゆうと≫...」


誰かが俺の名前を呼ぶ。

いや、すぐにその声は誰かわかった。


「久しぶりだな、小恋瑠≪ここる≫」


俺の目の前にいたのは小さな女の子。

まぁ小さいと言っても年齢は同い歳だが。


小恋瑠の容姿はとても同じ17歳には見えなかった。

肩より少し下にくるほど伸ばされた髪に、真ん丸な目。

正直だいぶ年下に見える。


「頑張って生きてる??」


「あぁ。」


「そっか、よかったよかった」


ホントに幼い笑顔を俺に向ける小恋瑠。

俺も微笑んで小恋瑠の頭をポンポンと撫でてやった。


「いいから、お前は心配すんな」


「えへへ、はいはい。わかったよ」


その小恋瑠の笑顔を最後に目の前が真っ暗になった。





「.....はぁ~あ。夢にまで出てくんなっての」


悠斗は瓦礫の上で伸びをした。

それから飛び上がるようにして立ち上がった。


すると悠斗が寝ていた瓦礫の周りには五人ほど人が集まっていた。


「なんだよ?人の寝顔見に来たのか?」


悠斗はそう言ってニヤリと笑う。

そんなわけないのはもちろんわかっていた。


こんな世界だ、だいたいの人の狙いは一緒。


「飲食料、もしくは金目のものをよこせ」


その五人組のリーダーと思われる男が前に出てきて言う。

周りの四人はそのリーダーを見守るようにして立っていた。


「...ほらよ」


悠斗は反抗せず金の入った小包をポケットから取り出し男に放り投げた。

もちろん怖かったわけではない。

ただ悠斗には金は必要なかった。


「あ、ありがとうございます!!」


男は小包を大切そうに抱え、お辞儀をした。

この男は気づいていた。

自分では悠斗には敵わないと。

しかし自分はもちろん他の4人の命を守るためにはどうしても必要だったのだ。

そして悠斗はそれをわかっていた。

だから反抗せず金を男に渡した。


「ったく。なんでこんな世界なんだろうね...」


悠斗は頭をポリポリとかきながら呟いた。

その瞬間だった。

どこからともなく炎が飛んできた。

そしてそれは悠斗ではなく先ほどの男に命中した。


「な...!」


悠斗は急いで熱がり転げまわる男のもとに駆け寄る。

そして男の炎を消した。


「あ、ありがとうござ「逃げろ」


男のお礼を遮り悠斗が言う。


「え?」


「いいから逃げろって」


悠斗はめんどくさそうに言う。

その悠斗の目の前に炎を飛ばした者と思われる仮面をつけた男が現れた。

仮面の男は再び手に炎を出現させていた。


「行け」


「はい!」


男は他の4人を連れて逃げた。

逃げる五人組に炎を投げる仮面男。

しかしその炎を悠斗は手で振り払うようにかき消した。


「おいおい、異能をそう簡単に一般人に使うもんじゃないよ」


「.....」


「今のこの世界一般人の方が珍しいん.....だからさ!」


そう言った瞬間、悠斗の周りに無数の剣が出現した。

そう...悠斗も異能者だった。

この悠斗の異能は珍しく誰ともかぶってなかった。

そしてそのデタラメな異能に付けられたネーミングは...


「お前...その異能...『無限武装≪インフィニティ・ウェポン≫』か」


「あー、その名前さ。痛々しいからあまり好きじゃねぇんだよな」


「...フッ」


仮面男は両手に炎を出して構える。


「あちぃのは勘弁だぜ。」


悠斗はそう言って無数に浮かんでいる剣の中から何の変哲もない剣を一本、手に取って他の剣を消した。

その瞬間、仮面男が両手の炎を悠斗に投げつけた。

しかし、悠斗はその炎を剣で斬り裂いた。

一つ、説明しておこう。

今悠斗が使っている剣には特別な能力はない。


「やはり、噂は本当だったようだな。鬼逆悠斗≪おにさか ゆうと≫、確かに異能もデタラメだが何より...本人の力相当デタラメだという」


「へっ、褒めてもなにもでねぇぜ!」


そう言って一瞬で間合いを詰めた。

仮面男は反応できず死を悟った。

そして、悠斗は剣を片手で振り上げた。

しかし仮面男は痛みを感じなかった。

目を開くと悠斗が剣をしまっていた。


「.........なぜ殺さない」


「命までとりゃあしねぇよ。その変わり仮面に隠れたイケメン面は拝ませてもらったぜ」


「!?」


その瞬間、仮面が綺麗に二つに割れ地面に転げ落ちた。


「...まいったよ」


「いつか本気のお前と戦ってみてぇな」


ニシシっと悠斗は笑った。

そしてさっき眠っていた瓦礫の上にヒョイっと飛び上がった。


「...そこまでお見通しというわけか。いや、やっぱり本気で戦っても俺じゃあ敵わないだろうよ」


そういって仮面男は悠斗に背を向けた。

そして立ち去ろうとした。

しかしその時、悠斗が呼び止めた。


「おい」


「?」


「名前教えてくれ」


「暁だ。紅暁≪くれない あかつき≫。」


「いい名前だな。じゃあな暁」


「フッ」


暁は少し優しく微笑んで、そして消えた。

このとき暁が微笑んだのには理由があった。

こんな世界では名前を呼ばれる機会はそうなかった。

っというより、ほとんど名前が意味をもたないこの世界で名前を使うことなんてそうなかった。

しかし、そんな世界で名前を覚えられ呼ばれる意味は大きい。

その意味を悠斗はしっかり理解していた。

だから悠斗は自分が気に入った相手には名前を聞き、ちゃんと記憶していた。


「はぁ~あ。疲れた」


悠斗は伸びをして瓦礫に横たわった。

そして再び崩れ去ったこの世界で悠斗はのんびり眠りにつく。

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