第5章 舞う少女と突然の侵入者
「麻菜が試合なので俺が代わりに審判をやらせてもらう。3回戦、始め!」
「さてと、始めようか」
亮介の声が聞こえ、麻菜は楽しそうに、澪は顔を引きつらせながら対峙して剣を構えた。
「麻菜、降参しちゃダメ?」
「ダメ」
「自滅しちゃダメ?」
「ダメ」
澪はどうしても戦いたくなくて何度も麻菜に問いかけてみるが、麻菜は絶対に首を縦に振らなかった。
そんな麻菜を見てやるしかないと思った澪は、一気にセカンド・アイになって突っ込んだ。
☆
良祐達は試合を見て驚愕した。
「え、あ、ちょっ、はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」
「澪、何でもうセカンド・アイになってんだよ! 麻菜はまだファースト・アイにすらなってねーぞ!?」
そう、空の言った通り、麻菜はまだファースト・アイにすらなっていないのだ。
にも関わらず、澪は最初からセカンド・アイになった。
紅希も声を上げずとも驚愕していた。
しかしその時、さっき竜牙が言った言葉を思い出して、思わず竜牙を見た。
(竜牙が言ってたのって、もしかして――)
そんな紅希の考えは、誰にも理解されることはなかった。
☆
試合が始まってからしばらくしたが、両者無傷でいた。
試合状況は澪が麻菜に攻撃しており、それをファースト・アイですらない状態で避け続けていた。
「あーーーもーーー!!麻菜、あんた強すぎ!!」
「だって私、痛いの嫌いだもの」
「ウチだって嫌いだ……よっ!」
「よっと」
会話しながら麻菜は澪の攻撃を軽やかに避けた。
その時の麻菜の動きはまるで舞っているようで、戦闘中だとは思えなかった。
「さて、そろそろ終わりにしようか」
麻菜はそう言うと思い切り上に跳び、澪の後ろで綺麗に着地した。
それに反応した澪が振り向くのと、目の前に剣先が現れたのは同時だった。
「……まだ、続ける?」
「いやいやいやいや、続けないから!!終わりで良いから!!」
その言葉に納得して麻菜は剣を下に下ろし――澪を抱えてさっきよりも高く跳んだ。
それに驚いて澪が声を出そうとした、その瞬間、
ドゴォォォォン!!!
「「「「「はあっ!!!???」」」」」
一同が驚いて見た先にいたのは、壁が崩壊しており、崩壊させたであろう犯人である…
――――ファースト・アイになっている立花がいた。
「今の試合見たぞ。どうやら、張り合えそうなやつが来たみたいだな」
立花はそう言うと、真っ直ぐに麻菜を見た。
それに気づいた麻菜は笑みを浮かべ、澪が持っていた剣を投げて渡した。
「試合……やっておきますか?」
「ああ」
こうして、予定に無かったかつてない試合が始まろうとしていた――――。