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第4章 風と氷の相殺

「えーっと、奈乃達がまだ戻ってきてないけど……とりあえず2回戦を始めます」


「始めちゃうのか……」


あの後残された10人は2人が戻ってくるのを待っていたが、いくら待っても戻ってこなかったので2回戦を始めることになった。


「それじゃあ、竜牙と紅希は前に出てね」


「おう!よろしくな、紅希!」


「よろしく。お手柔らかにね」


「そっちこそ!」


「では、試合開始!」


麻菜がそう言ったと同時に、2人はファースト・アイになった。


しかし2人は全く動かずに相手の瞳をじっくりと見ていた。


(紅希のあの色は……氷属性か…?いや、ここはあえて予想にしておくのが妥当だな……)


(あの色、風属性か…。だけど向こうも僕が氷属性だってわかってるだろうから、仕掛けるのは駄目だな……。下手したら、墓穴を掘ることになる)


しばらく静寂が流れ、竜牙は目を閉じて開いた瞬間紅希に突っ込んできた。


「っ!」


それに反応した紅希はすぐさま後ろに飛んで回避するが、それについてくるようにして竜牙も加速する。


(速い!まさか、風にのってるのか!?)


(まさかこの速さを回避するとは、さすがだな。だが……これはどうだ!)


さっきと同じ速さで竜牙は突っ込んでいき、さっきと同じように紅希も避けるつもりだった。


しかし回避する直前、竜牙がある一言を呟いたら紅希は体が動かなかった。いや、動かすことが出来なかった。


突然なことに驚いていると、その間に竜牙が攻撃を仕掛けてきた。


紅希は動けない状態で攻撃を防ぐが、いきなり体が動き、後ろに倒れる形になってしまった。


(やばいっ!)


そう思ったと同時に竜牙が剣を振り落とそうとしており、紅希は慌てて剣を構えて防いだ。


その反動で後ろに倒れるスピードが上がるが、下に氷をしいてわざと滑って態勢を立て直した。


その紅希の動きに竜牙が自然と口笛を吹いていた。


「へぇ、やるじゃねーか。まさか下に氷をしいてわざと滑るとはな」


「そっちこそ、なかなかやるじゃないか。さっきのは風を使ったの?」


紅希がそう問うと、フェアにするために詳細を話してくれた。


「ああ、確かにさっきのは風を使ったぜ。よくあるだろ?風の抵抗が強いと動けなくなること。それと同じ原理さ。紅希の後ろに風を作って動けないようにしたんだ」


「……成る程ね。それは厄介な属性だ」


「味方だったらかなり有利になるんだけどな」


自分の属性が風で良かったぜ、と竜牙は呟いた。


しかし紅希は竜牙の呟きに耳を持たず、この後どう対処するか考えていた。


(向こうは風、こっちは氷…。動きに関する事なら向こうの方が優れているかもしれない……けど!)


一か八か、通用するかどうかわからない賭けをすることに決めた紅希は、剣を構えていた竜牙の方を真っ直ぐに見る。


「準備はいいか?」


「ああ、大丈夫だよ」


「そうか。じゃあ――」


竜牙はそう前置きすると、再び目を閉じ、しばらくして開いて紅希の方に突っ込んできた。


それに合わせて防御態勢をとっていた紅希はさっきと同じようにして避けようとするが、動こうとした時に再び動けなくなった。


「っ!?」


「言っておくが、さっきよりも抵抗を強くしておいたぜ!」


そう言いながら竜牙は剣を振りかぶってくる。

剣が振り落とされる直前に紅希は後ろに力をこめ……











風を氷で凍らせた(・・・・・・・・)



 ☆



「………すごい……」


「これ、次元が違いすぎねぇか……?」


2人の勝負を見ながら、良祐と空はボソリと呟いた。


それもそうだろう。今まで一緒に戦っていた仲間がこんなに強かったのだから。


しかし2人以外は、冷静に試合を見て分析していた。


「紅希は技術力が高いね…。まさか、竜牙の風を凍らせるなんて……」


「けど、これを何回も続けていたらすぐに疲れてしまうだろうな」


「……どうやら紅希さんは長時間の戦闘に向いていないみたいですね」


「え、そうなのか?」


3人の会話に良祐達は驚いた。


2人は薄々とだが、紅希が1番強いと理解していた。

そんな紅希が長時間の戦闘に向いていないということが不思議でならなかったのだ。


そんな疑問を否定するかのように3人は話を進めた。


「さっきも言った通り紅希は技術がある。だけど1度の攻撃に多くの力を使いすぎてるの。短時間で済むなら効率が良いけど、今は絶対に長時間の戦闘になるからね……」


「それに比べて竜牙の攻撃は簡単で破られてもおかしくない。だけどその分使っている力も少ないんだ」


「……それに竜牙は短時間で終わらせる高度な力も扱えます。だからいつも相手に応じて短時間の戦闘にするか長時間の戦闘にするかを判断しているんです」


「なるほどな……」


「それにさ、ほら、試合を見てみなよ」


澪に促されて試合を見た良祐と空は、改めて3人の言ったことに納得するのだった。



 ☆



「くっ……!」


「どうした? テンポが落ちてきてるぜ!」


竜牙がさっき言ったように、紅希はだんだんテンポが落ちてきていた。


抵抗を相殺させるために力を使ったが、それをどんどんやっていくうちに力が無くなり、唯一のセカンド・アイも終わりつつあったのだ。


それでも負けじと剣を振ったが空振りで終わり、最終的には竜牙の勝ちで終わった。


「終了!2回戦は竜牙の勝ちね」


紅希は麻菜の宣言を聞いた瞬間、剣を手から離して膝を地面についた。


そんな紅希に竜牙は手を伸ばす。


「お疲れ。思った通り、紅希は強かったぜ」


「僕なんてまだまだだよ。良祐達と協力しないと何も出来ないし…」


「そんなことねーよ」


2人は話しながら観覧席へと向かった。


そして竜牙はさっき自分達がいた場所に立っている人物を見て声を上げた。


「次は麻菜と澪か。こりゃ、すぐに終わるな」


「……?どういうこと?」


紅希は竜牙の言った意味がわからず、なんのことか問い返した。


そんな紅希を見た竜牙は意味ありげな笑みを浮かべ、はっきりと告げた。





「教えてやるよ。本当に最強なのは誰かってことをな――――」



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