表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/53

第八話    写真部の非凡なる後輩たち

 ゼミが終わって部室に行くと、最近おなじみのメンバーが机を囲んでいた。

 佐々木や碧、それに柚希は、もともと写真部の活動も熱心だったけど、さくらはこのところ、意外に頑張っている。

 さくらは去年、学祭の名画を手伝っているうちに写真部に入部したのだが、そのあとはコンパくらいにしか顔を出していなかった。今年は個人写真も出品したし、ちょっとやる気になってるのかな。

「うわっ、副部長、なんか顔、汚くないですか?」

 さくらに容赦のない指摘をされて、俺は自分の顔をなでた。口の上と顎に少しざらついた感触がある。

「そういや、三日…いや、四日くらい、髭、剃ってないな」

「やだな。横着しないでくださいよ。似合わないんだから」

 無精ひげが似合う奴なんか……いるか。林原なんかちょっとそんな感じだし、佐々木も似合いそうだな。でも、佐々木が髭を伸ばしたら、おっさんになりそうだ。

 俺はもともと髭が薄いから、毎日剃ったりはしないんだけど、さすがに四日目になると目立ってくるか。

「昨日は友達の家に泊まったから、剃れなかったんだよ」

「部長のアパートっすか?」

 佐々木の問いに、俺は首を振った。

「いや、美大の友達。ああ、そうだ。佐々木によろしくって言ってたぞ。あいつ、お前のこと、気に入ったみたいだな」

「油絵の林原さん?」

「ああ」

「泊まりにいったりするほど、仲良かったんすか?」

「高校の同級生だからな。でも昨日は遊びに行ったんじゃなくて、絵のモデルに行ったんだ」

「へー。松浦さんがモデル……。想像できるような、出来ないような。油絵のモデルって、脱ぐんすか?」

「脱ぐよ」

「きゃー、エロいー!」

 さくらがふざけてはしゃいだ。この子は、いちいち反応が激しいよな。

「期待を裏切って悪いけど、上半身だけだから」

「なんだ。つまんない」

「つまんなくて、悪かったね。林原が言うには、俺の背中は主張し過ぎなくて、いま描いてる絵にちょうどいいらしいよ」

 部員が一斉に、どっと笑った。

 そんなに面白かったか? いまの。


「こんにちは。あ、なんか盛り上がってる」

 ノックの音と共に、部室のドアから入ってきたのは亜衣だ。最近よく、写真部の部室を訪れる。

 さくらと碧は、いっそのこと写真部に入ったらいいのに、と説得しているようだが、写真は携帯でしか撮らないからと、入部は断っている。

「いつもお邪魔してるんで、お菓子持ってきました」

 見れば、亜衣の手には紙袋があった。

「亜衣ちゃんの手作りクッキー?」

 碧が尋ねると、亜衣は驚いたように頷いた。

「どうしてわかるんですか?」

「昨日、亜衣ちゃんのブログに、最近お菓子作りにはまってる、って書いてあったし。クッキーを試行錯誤中なんでしょ?」

「そうなんです。ブログってやりだすと愉しいんですけど、私生活がバレバレになりますね」

 さくらと碧がお茶の準備を始めた。最近、写真部の部室は、こんな感じで穏やかだ。めぼしい活動予定もないから、休息中だな。

 写真部の部室は、広さが二十畳くらいだろうか。壁のコルクボードには、部員が撮った写真が重なり合うように貼りつけてある。

 奥まった一角が暗室になっていて、白黒のフィルム写真を現像することができる。水道もあって、何年か前の卒業生が湯沸かしポットを置いていったので、部室とは名ばかりのお茶会ルームのような場所になっていた。

 もともと、写真を撮るときに部室で撮ることは稀だし、佐々木や碧は鉄道だの景色を撮るから、本当に活動しているときは外に出て行ってる。

 ここに集まっているときは、情報交換だったり充電してるときだから、この状況も当然ではあるのだ。

 この部室が写真部らしい活気で溢れるのは、学祭の準備のときくらいだ。

「さっき、なんか盛り上がってました?」

「そうなの。訊いてよ、亜衣ちゃん。副部長がね、ヌードモデルしてるんだって」

「ええ? すごい……んですか、それ?」

「さくらちゃん君の言葉じゃ説明不足だろ。美大の友達に頼まれてモデルになってるんだよ」

「ああ、そうだったんですか」

「副部長の背中が頼りなくて、ちょうどいいんだって」

「頼りなくて、なんて言われてないって。主張し過ぎなくて、だよ」

「どっちでも一緒じゃん」

 さくらがぽそりと呟くと、また一斉に笑い転げた。どうもこないだから、笑われてばかりだ。

「でも、副部長さんって、脱いでもあんまり色気とかなさそうですよね」

「男に色気なんかあるの?」

「ありますよ。もちろん」

「うーん、そういえば、林原にも言われたよ。『惣介は美少年と言うより好青年だから、色気はない』って」

「完璧な表現ですね。さすが美大生」

 部員全員に大きく頷かれて、さすがに俺は落ち込みそうになった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ