表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/53

第三十四話  カレンダーに予定を書く意味

『もしもし、松浦さん、瀬戸です』

 柚希から携帯に電話がかかってきたのは、家の駐車場に車を停めた直後だった。

「今日は、お疲れさん」

 エンジンを切って、車から降りずに通話を続ける。

『いえ、こちらこそ、ありがとうございました』

「どうしたの?」

 つい一時間ほど前まで一緒に撮影していたのに、どうして電話をかけてきたかわからず、首を捻る。明日も写真部は集まるし、俺も少しは顔を出すと言ってあるからだ。

『実は、個人的にお願いがあるんです』

「なに?」

『時間に余裕が出来てからでいいので、お家に招待していただけませんか?』

「え? うちって、俺の家?」

『はい』

「別にいいけど、なんで?」

『写真を見せてもらいたいんです』

「……あ、そういうこと」

 柚希は、俺の部屋にある、碧の写真を見たがっているのだ。林原が言ったことを、柚希はずっと覚えていたのだろう。

 俺は吹き出しそうになるのを噛み殺した。

「いいよ。明日は撮影があるし、明後日はどう?」

『いいんですか?』

「大丈夫だよ。そうだな…、三時でいい?」

『行けます』

 駅まで車で迎えに行く約束をして、電話を切った。切ったあとで、碧の写真が見たいなら、ボードに貼ってあるのを外してあげればいいじゃないかと気がついた。すぐかけ直してそう提案しようと思ったが、ボードに貼ってるのはわずかだし、ほとんどは外付けのハードディスクの中にデータとして保存している。

 携帯型のコンパクトなディスクではなく、結構かさばる古いタイプだから持ち歩く気になれない。やはり、来てもらった方が俺は楽だし、柚希も多くの写真を見られる方がいいだろう。

 しかし、本当に碧が好きなんだな。

 恋とはかくも、情熱的なものなのか。

 家に入り、荷物を自分の部屋に置く。最近、大学に行くときはカメラ一式持参だから、大荷物だ。

 下に降りると、お袋が洗濯物をたたんでいた。

 俺はお袋に、柚希のことを話した。

「母さん、明後日、大学の後輩が写真を見に来るから」

「何時?」

「三時過ぎ」

「いないかもしれないけどいい?」

「べつに、いいよ」

「じゃあ、もしいなかったら、お茶は自分で出してよ」

「ええ~、お茶とかべつにいいって。写真が見たくて来るだけなんだから」

「馬鹿なこと言わないで。それより、就職活動や大学に行く日を、そこのカレンダーに書いておいてほしいのよ」

「今週?」

「三月半ばから四月上旬まで」

「そんな先のこと、まだわからないよ。状況次第で変わるかもしれないし」

 あまり考えたくないが、思い通りに内定をもらえなければ、受ける会社を増やす必要がある。

「わかってるだけでいいから。変更があったら、書き換えていって」

 なんだろう。いままであまり、こんなことを言われたことがないから、妙な感じだ。夕飯の都合なら、二、三日以内の予定を訊くだろうし、親父や友人と旅行に行きたいのだとしても、俺や雄介の都合を訊く必要があるのかな。

 食事や洗濯も、子どもじゃないから数日留守にされても問題ないのに。

 それでも俺は、疑問を口にすることはしなかった。問いかけるのも、理由を訊くのも面倒だったのだ。

 今日は少し、くたびれた。

 撮られる方が、撮るより何倍も疲れる。柚希はよく我慢してるよな。

 そういえば、夏にモデルをしてもらった礼も、ちゃんとしてなかった。後輩とはいえ、なにかしてあげたい。

 だが、性別不明の後輩は、なにを喜んで、なにを好まないのかさっぱりわからない。

 男なら飲みに連れて行ってもいいし、サッカーや野球の試合を観に行くのも悪くないんだけど……。かといって、花やアクセサリーをあげたら怒らせそうだしな。

「あ」

 そうだ、写真だ。碧の。

 わざわざ家にまで来たがるんだから、碧の写真をあげたら喜ぶだろう。

 明後日、柚希が来たときに、碧の画像データをなんらかの形にして渡してやろうと、俺は思考を巡らせた。



言うまでもなく、更新が厳し~いです。

人によっては、週一回とか、月一回の更新という方もいらっしゃいますが、私の場合、あまり間隔をあけると書けなくなりそうで、ある程度のスピードというか、勢いは必要みたいです。連載を複数持つのも無理ですし。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ