第9話
それから数日後。
私の気持ちに大きく変化を与える、
2年生最大の行事、宿泊学習が訪れた。
「おっはよ~、玲奈。宿泊学習楽しみだね~!
恋愛とか恋愛とか恋愛とかさ~」
低血圧で朝に弱い私とは逆に、
朝から元気な玲奈は恋愛だけが目的らしい。
「はいはい、おはよ・・・」
今日テンションが低いのは低血圧のせいだけじゃない。
委員会の仕事が前日までずっと詰まってたうえ、
当日もかなりのハードスケジュール。
そして、叶わない恋への辛い思いと、
そんな気持ちを捨てきれない自分。
「うん。決めた。
この旅行、新しい恋を探す旅行にする」
朝早くに起こされたイライラと、
周りの友達のテンションとでおかしくなった私は、
なぜか変なことを口走っている。
「そうねえ!頑張って~」
中澤という恋人がいる七海は楽しそうにはしゃいでいる。
2泊3日の1日目はほとんどバス。
バスに乗ると、今までの疲れが出たのか爆睡してしまった。
そのせいなのか、昼間の体験学習のことも、
何をやったのかあまり記憶にない。
途中で雨が降ってきたみたいだけど、
服が濡れているのにあまり覚えていない。
傘、持ってたのにささなかったんだっけ?
「お、やっと鈴木はお目覚めかぁ~。
そろそろホテル着くから準備しろよ~」
担任が前の席から身を乗り出してそう言ってくる。
そして、ケータイを差し出してニカっと笑う。
「ちょっ!なに撮ってるんですか!!
消してくださいよ、ホラ」
ケータイの画面に映し出されたのは
バスの前の方に座っている生徒の寝顔。
先生の席の後ろの席に座っている私も、
勿論ドアップで撮られていた。
「玲奈、何やってんの!
もうホテル着いたよ~」
とっくにバスを降りた七海が
重い荷物を持ちながらぶんぶんと手を振っている。
ホテルでは2人1部屋で、私は七海と一緒。
部屋に着くと七海は大はしゃぎ。
それはもう、下の部屋に怒られないか心配なほど。
「ジャージ、着替えた方がいいよ。
ジャージのしたビショヌレじゃない!
まったく、無理するよね」
七海から聞いた話だと、体験学習のとき、
雨が降っても自分に傘はささずに、
男子の方に傘をさしてあげていたらしい。
急いで着替えて夕食に行かないと。
「あ、そうそう知ってる?
ウチのクラスの女子、2人今日告るらしいよ~」
「あ、へぇ。そうなんだ」
まあ、宿泊学習だもん。
告白の1つや2つ・・・普通なんじゃないかな。
そう思っていたけど、大変なことになるとは、
全然思っても見なかった。




