第52話
「だから、1人で背負い込むなよ。
男性恐怖症とか、自傷癖だとか、
1人で抱え込んだら重過ぎるだろ。
俺は、別にお前が男性恐怖症でも自傷癖あっても
嫌いになったりしないし、構わない。
そのままでも、俺は・・・好きだから」
相変わらず、恥ずかしげもなくそんな事を
サラッと言ってしまって、ホントバカ正直。
でも、心のどこかで求めていた。
許してくれる、温かい人。
優しく傷をなでてくれる、温かい言葉。
そんなこと、誰も言ってくれないって、
ずっと諦めながらも、心のどこかでは。
でも、蓮はこんな私でもいいって言ってくれた。
触れることすら、出来ないかもしれない恋愛。
そんなの、相手を傷つけるだけの、
自己満足の恋愛だって、思っていたのに。
神様、最後の勇気と、それからチャンスを下さい。
これで無理ならば、一生誰も愛さないと、誓いますから。
そう、心の中で強く強く願って、
自分の手をゆっくりと蓮の手に近づける。
長いすに置かれた蓮の手まで、残り数mmの距離で、
体中に電流のようなものが走り、あの記憶がよみがえる。
忘れたいのに消えてくれない、忌々しい記憶。
まだ怖いけれど、きっと大丈夫。
きっといつかは、青春だったって、
思い出して笑える日が来るって信じてる。
だから、きっともう私は大丈夫。
私は、ありったけの勇気を振り絞って、
蓮の手の上に、そっと自分の手を置いた。
ほら大丈夫、もう怖くなんかないから。
「あの、ね。らっ・・・来年も、一緒に花火、見よ。
よかったら、だけど」
それが、精一杯の言葉だった。
「もちろん、よろこんで」
蓮は優しく笑って、
重ねた手の指をそっと絡めた。
今まであれだけ怖かった男の人の手が、
とても温かく、優しく感じた。
――END――
最後まで読んでいただきありがとうございました。
物語はここで終わりを迎えるわけですが、
これから書くあとがきのほうまで、
もう少しお付き合いいただければと願います。




