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君と見た花火  作者: 侑子
37/53

第37話

家に帰ると、学ランを持って急いで家を飛び出した。


「ったくさ、考え無しだよな。お前って」


確かに、今考えたらそうだった気がする。


制服に名前が書いてあったわけではないから、

蓮の制服とは限らなかった。


それに、メモを残した人物と

学ランを残した人物が一緒だったかも確かではない。


両方とも蓮のやったことだったからよかったけれど、

急いで蓮の家に行ったって居たかどうかも分からなかった。


まだ帰っていないかもしれなかったし、

塾とかで出かけていたかもしれない。


そう考えると、全部成り行き任せ立った気がして

だんだん恥ずかしくなってきた。


「とりあえず、これありがとう。あと、あのメモも。

 でも、なんで教室に行ったの?」


私が聞くと、蓮は順を追って説明してくれた。


部活の休憩時間に、顔を洗うために水道のところへ行くと、

ちょうど帰るところだった野球部の軍団と遭遇した。


そこには裕太もいて、裕太に頼まれたらしい。


先生を探しているから、よかったら教室を

探してきてくれないか、と。


暇だった蓮が教室を見に行くと、

私が寝ていて雨が吹き込みそうだったから、窓を閉めた。


風邪を引かないように何かをかけようとしたけれど、

そこらへんにちょうど良い毛布などがなくて、

自分の学ランをかけたらしい。


そのあと水道のところに戻ると、

先生は職員室に居た、と裕太が言うので、

そのまま部活に戻って、帰宅したらしい。


「でもさ、そん時はなんも思わなかったけど、

 今思えば知っていたのかもな。

 お前が教室で昼寝してたこと」


だったらなんで自分でやらなかったんだろう、

と蓮は不思議そうな顔で付け足した。


もし私が寝ているのを知っていたとしたら、

選択肢はその場で何かするか、無視をして帰る。


無視をして帰るほうを選んだとしたら、

どうして蓮にわざわざ伝えたんだろう。


裕太は、誰かに何かを頼むことが少ない。


そこは、私ともよく似ているから分かる。


校内で誰かを探すときに、誰かに聞く事はあっても、

どこかを探してきてくれなんて絶対に言わない人だ。


それをふまえて考えてみると、

やっぱり知っていて蓮を教室へ行かせた、

と考えた方が辻褄が一番合いやすい。


でも、どうしてそんな面倒なことを?


自分でなんとかしたくないんだったら、

蓮に言わないでも無視すればいいだけなのに。


放課後の教室で誰が寝ていたって、

そのせいで風邪を引いたって裕太のせいにはならないのに。


「あ~もう、わっかんね!!

 俺ややこしいの苦手なんだよね~」


しばらく考えていたけど、蓮がギブアップした。


こればっかりは私にも分かんないや。


まあ、裕太が本当に私が寝ているのを

知っていたかどうかもハッキリしたことじゃないし。


もしかしたら全部私の考えすぎで、

珍しく蓮に頼んだら、たまたま私が寝ていた、なんて

偶然に偶然が重なって起こった出来事かも知れないし。


必然だったとは限らないもんね。


「ま、いいや。とにかく制服ありがとう」


制服の入った紙袋を渡すと、

私は来た道を今度はゆっくり歩いて帰った。


本当はあの時言わなかったけれど、

もうひとつの考えが私の頭の中にあった。


私のことが嫌いで何かするのは嫌だったけど、

それで風邪を引かれたんじゃ、仕事を押し付けた責任で

後味が悪いから蓮を教室へ行かせたって説。


まあ、そんなことはないと願いたいけど、

昨日のやりとりで本気で嫌いになったなら、

一番説得力のある説かもしれない。


委員会の仕事やクラスの雑用を

ほとんど私がやっているのは、クラスのほとんどが知っている。


それに、毎日部活に出ないで残っているのも、

昨日徹夜しているのも女子ならみんな知っているはず。


今朝みんなで話していて、その話になったとき、

クラスの大体の女子は私の机の周りに居たから。


だから、可能性は0じゃないはず。


・・・でも、そうじゃないといいな。


私の中で、これ以上裕太を悪者にしたくないから・・・。

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