第30話
「あの後、どうなった?」
いきなり切り出してきた話題だけど、
蓮が何のことを言いたいのかは分かる。
きっと、裕太とのことを心配してくれているんだ。
あの後は、もう何もない。
メールを返していないせいもあるけど、
話す機会はないし、メールする用事もない。
部活で忙しくて、好きとか嫌いとか、
考える余裕もあまりなかったから、
気持ちはあの時、蓮の家で蓮に話したまま。
「私さ、男って無神経で我がままで、
自己中心的で欲望しかない生き物だと思ってた」
離婚してから、一度も会いにこない父親。
今更会いにきたって何をするわけでもないけど、
家族という形式が無くなったら、
まるで何も関わりがなかったかのように
生きられるなんてありえないと思っている。
両親が離婚してから一度も会っていないから、
父親の事は何ひとつ覚えていない。
名前も顔も、性格も声も、何ひとつとして。
両親がどんな道筋をたどって結婚したのかは
あんまりよく分からないけれど、
一度でも愛した人と、愛した人との間に生まれた娘。
戸籍が別れたからといって、
そんなに無関心になれるものかと思った。
そう思い始めた頃から、
男は所詮そんなものだと思って生きてきた。
好きだの愛してるだの言っていたって、
恋人や家族という形式さえなくなれば、
女のことなんてどうでもいいんだって。
そして、男自体を否定する気持ちは、
女子中学生に手を出そうとする変態なおっさんのせいで、
より一層強くなった。
見ず知らずの通りすがりの女子中学生に手を出そうとして、
相手がどんなに怖がるか、嫌がるかも考えず、
女をただ自分の欲望を満たす道具としか思っていない。
そして最後は、裕太の態度。
自分の事を好きな人を作っておきたいのか、
ただモテているという満足感に浸りたいだけなのか、
本心はよく分からないけれど。
学校では冷たい態度をとっておいて、
メールでは利用した挙句に自分から告らせておいて振る。
私は同じ事を何度も言うことや、言い損が嫌い。
もう本当に、男という生き物がいやになっていた。
「でも、蓮は同じ男でも違ったよね」
本当にお人よしなくらい私に良くしてくれて、
蓮が居てくれて、本当に良かった。
蓮が居なかったら、私はどうなっていたか分からない。
秘密を打ち明けた日から1週間だけど、
手首、切らないように我慢してるんだ。
前までは3日が限界だったけど、
1週間も我慢できるようになったの、
きっと蓮のおかげだよ。
今こうやって笑ったり泣いたり、
いろんな感情表現できてるのは蓮のおかげ。
蓮が居てくれて、本当に良かったって、思ってる。
「んじゃ、そろそろ合流するか。
あと・・・浴衣、似合ってるんじゃん?
馬子にも衣装ってやつ?」
蓮は笑いながら先に立ち上がって、
肝だめしのときと同じように手を差し伸べた。




