第33話 強襲、幽霊船
僕たちは、武装船で海賊のいるポイントまで進む。
「ディータよ、長いこと城を開けとが、大丈夫かのう?」
「多分ね。とにかく、対策は練っている」
僕たちは、目の前にある障害を処理すればいいと、リユたちを説得した。
「対策じゃと?」
「ちょっと、バリナンに貸しを作った」
「またディータは、一人で面白いことしおる。アタシもおるんじゃから、ちょっと協力させておくれ」
仲間はずれにされたと思ったのか、リユがため息をつく。
「こればっかりは、バリナンの協力がなければ成り立たなかったんだ。みんなを巻き込むわけにはいかない。それに、成功率も低かったし」
「具体的には?」
「情報収集さ」
レフィーメからの質問に、僕はぼんやりとした回答をした。
今回の作戦に一ヶ月もかけたのは、「バリナンによる裏付け」が必要だったからだ。僕たちのような少数精鋭に、そんな大規模な計画は立てられない。
「見えてきました!」
向こうから、海賊船が姿を表す。
海賊を率いているのは、幽霊船だ。巨大なドクロのイラストを描いた、旗をはためかせている。
「あんなのに邪魔されとったのか」
船を襲っていたのも、乗客たちの生気を吸うためだったのかもしれない。
あの船の大きさだ。それだけ、大量の人を殺しているに違いない。
「やっつけよう。あの幽霊船に襲われた人たちを、成仏させてあげるんだ」
「おっしゃ」
リユが、拳を固める。
「我こそはピドーの王、スケルトンキング! シンクレーグのガキよ、直接対決に参った!」
幽霊船の上から、ガイコツの船長が現れた。全身を、白いヨロイで覆っている。あれがピドーの正装か。
「今までこそこそ逃げ回ってきた割には、堂々としたご登場ではないか!」
「海に逃げたら、魔王軍の魔物に食われたのだ。見よ!」
船が盛り上がり、大陸が浮上してくる。
「なんだ、島が浮き上がってきたぞ!」
「違います、ディータさま! これはクジラです!」
「クジラ!?」
幽霊船だと思っていたのは、クジラの化け物だった。現れたのは、マッコウクジラである。頭頂に、イカの頭のようなツノが生えていた。
下アゴに生えている触手が、こちらの船団に絡みつく。
我が隊の船が、一隻沈んでしまった。海に落ちた乗組員を、僕たちの船で全員回収する。
「触手が生えているぞ!」
「マッコウクジラは、ダイオウイカを捕食する。あの怪物は、それがキメラ化したもの」
こんなデカいキメラまで作れるのか、魔王軍は。
「まいったな。こりゃあ」
「グハハ! 手も足も出まい!」
「いや。対策しておいた甲斐が、あったってもんだ」
僕は、発煙筒を空へと発射した。あとは、港にいるトラマルが気づいてくれたら。
クジラの触手をかわしつつ、海上戦となる。
幸い、クジラは不意打ちでなければ動きが鈍い。大きいだけで、対策は可能だ。とはいえ、その上にピドー王がいるため、近づけないが。
「海賊は、ものの数ではありません! 船団だけで対処できます!」
「ヘニーは、そっちに回ってくれ。カガシ、レフィーメも」
カガシやレフィーメ、ヘニーを、海賊船の撃退に回す。
「リユ、僕たちはクジラキメラのヒゲから船を防御しながら、海賊船の処理班をサポートするぞ」
「おし!」
攻撃特化なリユに、防御を任せるのは気が引ける。だが、まだ攻めどきではない。
「ワタシも戦える!」
カガシが、先行しようとした。
「お前たちを失うのが、こちらにとって一番ヤバい。対策はしてあるから待っていろ」
「やむを得ない。あなたに従います、ディータ!」
どうにか、カガシも聞き分けてくれたようだ。血の気が多いから、できれば派手に暴れられる前線に回してあげたいが。今はこらえてほしい。なぜなら。
「よし、来たか!」
ドドド、と、僕たちの後ろから、高速で巨大な物体が接近してくる。
「なあ、ディータ、あれは、アタシらがさっきまで過ごしていた港町ではないか!」
そう。あの街は、移動要塞にもなるのだ。




