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Beyond of Cosmos =星巡りの物語=リゲル・ラナ編  作者: 詩紡まりん
『淀む光と影』=Holy Mageの闘い方= リゲル歴4045年

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掃討作戦後に残る課題

 帝国軍による「黒い害虫掃討作戦」は、ほとんどの帝国民に気づかれることなく、帝国全土で一斉に迅速かつ的確に実施された。

 夜明けと同時に各領土で実施された作戦は、領地により作戦終了までに所要時間差はあったものの殆ど場合一時間程度で任務完了していた。

 また、掃討作戦のターゲットであった『大黒主神教』関連施設は、ほとんどの場合街中の裏通りの目立たない場所や、街はずれの郊外や村外れの静かな地域にあったので、付近の住民ですら気づいていない事が多かった。


「これで、帝国内の大黒主神教、我が帝国を内部からの侵略を企てていた黒魔術師達を全て捕縛できたな」

 と、ウィリアム皇太子が安堵したように言った。


「はい、まずは第一段階完了です」

 と、シオン参謀も作戦が無事に完了したことを報告できた事に少しだけ肩の荷を降ろすことができたようだった。


 ロス・トロア宮殿内にある帝国軍本部の総司令官室で、ウィリアム統括元帥、アラン総司令官、シオン参謀長の三人は、今回の掃討作戦についての各基地からの報告を受けていた。


「やはり、西部と帝都周辺の関連施設での捕縛者が多いようです」

 シオンが続々と届く報告に目を通しながら言った。

「シルバー・ベイリー大佐のルイスガードナー基地が収容した逮捕者が一番多いようですね」

「それとは対照的にブルーフォレスト辺境伯領地内の逮捕者がゼロというのが少々引っ掛りますが…」


 シオンの参謀長の報告を聞いていたアランが口を開いた。

「ベイリー大佐には、しばらく苦労をかけることになるな。一番の住民の逮捕者の解呪法や対応についてのマニアルは送ってあるな?」


「はい。閣下と練りましたマニアルを各基地に宛に送ってあります」

 と、シオンが答えた。


「私も辺境伯地のゼロが気になる」

「確かに御前会議直前に辺境伯領内の大黒主神教関連施設を摘発して関係者を逮捕したと聞いてはいる」

「しかし、それから期間を経ているし『魔の森』事件の犯人を逃しているだけに気になるところだ」

 と、アランはこの害虫駆除作戦の成功を手放しでは喜べなかった。

「これで終わりではない。これが始まりかもしれない」

 と、つぶやいた。


 すると、ウィリアム殿下も続いて

「そうだな。正念場はここからだろう」

 と、言うとシオンも静かに

「はい」

 と、答えた。


 帝国軍による「黒い害虫掃討作戦」が施されたその日は、平日だった。

 帝国神聖力術士養成大学では通常通り授業が行われていた。


 Holy(ホーリー) Mage( マギ )養成の任を与えられて帝国軍から教師とし出向しているHoly(ホーリー) Mage( マギ )のトゥルリー大佐もマリア少佐も、ここではトゥルリー先生、マリア先生として生徒たちを教えている。

 この日、ふたりはいつも通り生徒たちの指導の任に当たる準備をしながらも、やはり少々落ち着けない気分でいた。


 帝都内はアランの管轄であり、優秀なHoly MageまたはWhite Mage騎士を有する近衛小隊が、各地区に派遣されるので全く心配は無い。

 シオンの作戦に抜かりが無いのもよく理解している。


 それでもやはり、本来は軍部幹部としての血が騒ぐというか、自分も力になりたいという気持ちが騒いでしまう。

 そこをぐっと堪えて、自分に与えられた任務をこなすのが彼らHoly Mage騎士である。


 そんなふたりだったが、夜明けと共に帝国全土で開始され、午前の授業が始まる頃には、帝都内での掃討作戦はほぼ完了との連絡が届いた。


 レイマーシャロル地区の宿アフィニティの主人、ティム・ランダーとの約束も無事に果たせて良かったとホッとする気持ちあった。

 これで安心して、週末にはノアをティムの元に帰省させることも出来るだろう。

 それにしても、あのピート・ループという元生徒は何者なのだろうか?


 帝国神聖力術士養成大学のHoly Mageクラスの生徒の半数以上が貴族の子息子女なので実家の領地で実施される帝国軍の掃討作戦について知っていた。

 もちろん、ブルーフォレスト辺境伯家のポリアンナは、父も兄もその前線に立っているので他人事ではいられなかった。

「先生、掃討作戦は終わったんですか?」

 と、ポリアンナはソワソワしながらトゥルリー先生に尋ねた。


「ああ、どうやら完了したみたいだな」

 トゥルリーは、アランからの連絡で全て滞りなく完了した事を知っていた。

「レイマーシャロル地区の担当は、君の兄のオスカーの部隊だったらしい。君を誘拐しようとしていたヤツラも逮捕したそうだ」


「そうなんですね。よかったぁ~。それならもうノア君も安心ですね」

 と、ポリアンナは嬉しそうに言った。


「一番安堵すべきは君の方だけれどね。ブルーフォレスト先生とお父上も安堵されていることだろう」

 と、トゥルリー先生が言うと、ポリアンナはちょっと気が抜けたように

「そうですねぇ~」

 と、答えた。

 どうやら、ポリアンナは自分が『大黒主神教』から狙われていた自覚が無かった、というか忘れていたようである。


「あの、例の私に絡んで来たあの元生徒はどうなったんですか?」

 と、思い出したようにポリアンナが聴くと

「まだ、それは軍本部に戻ってみないとわからないが、間違いなく連行されているはずだ」

 と、トゥルリー先生は答えた。


 ポリアンナは、自分のことよりノアの事が気がかりだった。

 なぜなら、ノアにはポリアンナに言えない秘密があるようであり、それが大黒主神教に関わりがあるように感じていたからだ。

 また、ポリアンナは、ノアが地球と言う別の星から来た異星人とは知らないはずなのに、ノアが異世界から来て異世界へ消えて行ってしまうような、全く根拠のない不安を抱いていた。


 翌日には、クラスの半数以上が領主の子息令嬢のHoly(ホーリー) Mage( マギ )クラスでは、自分の領地での様子を耳にしている者も多く、先生たちを通して自領の正確な情報を知らされていた。

 そして、その日の夜のミラ・ローズ宮の学生食堂は、その話題でもちきりだったので、ノアやリリアーナ達White Mageクラスの者たちにも「黒い害虫掃討作戦」の実施と成功の情報を耳にしていた。


「Holy Mageの闘いは、最小限の被害になるよう、可能な限り周囲に知られぬように短期決戦で終わらせるって歴史でも習ったけれど、本当なのねぇ~」

 と、リリアーナが言うと、アイラも

「本当、私達が学校で普通に勉強している間に終わっていたんだものね。ビックリだわ」

 と、興奮気味に答えて言った。


「ポリーちゃんが言っていたけれど、レイマーシャロル地区の掃討作戦の指揮を執ったのはオスカー様らしいわ」

 アイラは「さすがオスカー様」と推しの活躍に感動中であった。


「ということは、もうレイマーシャロル地区のマルシェにも安心して行けるってこと?」

 と、リリアーナがアイラに聞くと

「たぶん、そうだと思う」

 と、答えたので

「じゃあ、ポリーちゃんと三人でマルシェに行けるね」

 と、嬉しそうに言うリリアーナであった。


 はっきり言って、ここ数ヶ月は、得体のしれないBlack(ブラック) Mage( マギ )と黒魔術師の恐怖に晒されて、生徒たちは特別な用事が無い限りは、学校と寮から出ることが出来ずにいた。

 元皇帝の宮殿である広大な大学と、元離宮であるミラ・ローズ寮での生活は、特にストレスが溜まることもなかったが、やはり不安要素が取り除かれ、生徒たちは皆気持ちが軽くなりウキウキしているようだった。


「あれ?ノア君は?」

 と、リリアーナが教室を見回してノアの姿が無いことに気づいた。


「今日は、午前中の授業はみんな一緒のはずだよね?」

 アイラも教室を見回してから

「そういえば、見当たらないね?朝からみかけないけれど…」

「担当の(ドラゴン)の調子が悪いとか?」

「どうだろ?先生に聞いてみる?」

 と、リリアーナとアイラが心配している頃、ノアはアランに呼び出されていた。


 前回同様、トゥルリー先生ことトゥルリー大佐に付き添われ、宮殿内にあるスチュアートリア帝国の中枢部である帝国陸海軍総本部に向かっていた。

 ノアとトゥルリー大佐が総本部に到着すると、近衛騎士の案内で帝国陸海軍総司令官室に通された。

 前回は室内に通されてから待たされたが、今回はアラン総司令官とシオン参謀長が待っていた。


「わざわざ来て貰ってすまないね、ノアくん。まぁ座ってくれ」

 と、言いながらアランは、ノアとトゥルリーを部屋の奥に招き入れた。

 そして、自分も座りながら、自分の前の席へノアも座るように促した。


「またお目にかかれて光栄です」

 ノアは、ドキドキしながらもまた憧れのレッドリオン公爵に会えることが嬉しかった。

 トゥルリー先生と共に入室したノアは、テーブルを挟んだアランの前向かいの席に座った。


 アランの隣には、紫の美しい長い髪をひとつに結んだ、ちょっと神経質そうな美しい男性が座っていたおり

「はじめましてノア・シラミネ君」

「私は、帝国軍参謀室参謀室長のシオン・ミッシェル・ヴァイオレット・フィールドです。よろしく」

 と、自己紹介をした。


「はじめてお目にかかります。ノア・シラミネです。帝国神聖大の…」

 と、ノアが自己紹介しかけたのを遮るように片手を上げると

「あ、全て聞いておりますので、自己紹介は大丈夫です」

 と、言うシオンの言葉に、ノアは言いかけた言葉を飲み込んで、一言返事だけを返した。

「あ、はい」

 この人は、ちょっと苦手だなぁと思ってノアは下を向いた。


 すると、ノアの隣のトゥルリー先生が言った。

「おいおい、うちの子をイジメないでくれよ、シオン」

「ノア、すまんな。こいつもいつこうなんだよ。ちょっと神経質でせっかちなだけで、悪気は無いんだ」

「これでも帝国の頭脳といわれるほどの知識と能力を持っている優秀なヤツなんだ」

 と、シオンの補足をしながらノアに謝るように言った。


「これでも、とはなんです?」

 トゥルリー―に褒められてちょっと嬉しいくせに無表情を貫くシオンは

「私はアラン様の参謀として、あらゆる資料やデータに精通していますので、ノア君の基本情報を把握しております」

 と、淡々とした口調で言った。


 その様子を黙って見ていたアランが、笑いながらノアに言った。

「ノア君、これがわれらの通常運転だ」

「このふたりとマリア先生と私は、幼馴染で学友なんだ」

「そして私が最も信頼する家臣であり、気の許せる親友でもある」

「なので安心して話してくれ、ノア君」


「はい」

 アランの言葉を聞いてノアは少し納得した。


 地球での学友なんていなかったし信じられなかったノアだったが、リゲル・ラナに来て、地球よりも人間関係が親密なことを肌で感じていた。

 そして、ノア自身も帝国神聖大に入学して、学友同士の助け合いや信頼を感じるようになっていたからだ。


「今日、君に来て貰ったのは、パドラルと地球という君の星の事を詳しく聞きたかったからだ」

 と、アランが言うと

「まぁ、地球について詳しく聞きたいのはシオンだけだがな」

 と、トゥルリーが言った言葉にシオンは静かに頷きながら

「そうです」

 と答えた。


「それと、君も耳にしていると思うのだが、帝国内で一斉に大黒主神教関連施設に突入して、関係者と洗脳された信者を一旦捕縛した」

 と、アランが言うとノアも驚くことなく

「はい。聞いております」

 と、答えた。


 だが、ノアは自分が関わっていた組織だけに他の人には聞けないことがあった。

「あの…俺のことを言っている人がいませんでしたか?」


 ノアには、気がかりな者がふたりいた。

 ひとりは、地球から共にこの星(リゲル・ラナ)に転移し、パドラルの大黒主神教教会で別れた黒洲田音緒ことネオ。

 もうひとりは、帝国神聖力術士養成大学の魔導士クラスの元クラスメイトで、レイマーシャロル地区で再会した大黒主神教の信者であろうピート・ループ。

 はっきり言ってピートの安否はどうでも良かったが、ネオは常にノアの頭の隅に居る気になる存在だった。


 ノアの質問に対し、アランに代わってシオンが答えた。

「レイマーシャル地区は、君の現在の身元引受人のティム・ランダー氏がお住まいですね?」

 と、シオンに聞かれノアが

「はい」

 と、答えるとシオンは報告書らしき書類を見ながら続けて言った。


「レイマーシャロル地区の大黒主神教関連施設には、Holy Mage騎士のオスカー卿を隊長とする帝国軍近衛騎士団第3部隊が、早朝未明、日の出と共に突入」

「事前の調査報告通り、施設内で黒魔術師1名とその部下らしき者3名を確認」

「他に黒魔術により脳されたと思われる就寝中の信者43名と共に、全員を拘束、連行致しました」

「ちなみに、この突入による帝国軍側、大黒主神教側共に死者は無し」

「魔術で抵抗した黒魔術師の一名が、自分の発した火炎魔法で熱性損傷を受けましたが、その場でオスカー隊長によるヒーリング魔法の応急処置により軽症で連行されました」


 シオンの報告を受け、ノアの身元引受人のティム・ランダーが営む宿で出会った大黒主神教の関係者だと思われる者たちの顔を思い出しながらトゥルリーが言った。

「洗脳された信者の数の割には、黒魔術師が一人だけとは少ないものだな」

「残りの三人は、魔導士にも満たない者だったんだろうか?」


 トゥルリーの疑問にシオンが答えて言った。

「トゥルリーとマリアには非常に残念なお知らせなんだが、そのうち二人は君の元教え子だ」


「やはりそうか…」

 薄々そうでは無いかと思っていた トゥルリーが言った。

「そのうちのひとりはピートだな?」


 ノアは、ふたりの会話を聞きながら「やはりそうか」と思っていた。

 と、同時にピートの他にも魔導士クラスの者がいたのかと驚いていた。


「やはり、魔導士クラスの問題は熟慮しないとならないな」

 と、シオンの報告とふたりの会話をじっと聞いていたアランが言った。

Holy(ホーリー) Mage( マギ )クラスの者と神聖力(Holy Power)の秘密を守るためにも、魔導士クラスの入学、管理は、考え直さないとならないかもしれない」


 アランの言葉に対してシオンが言った。

「閣下は、なぜ魔導士クラスに拘られるのですか?いっそ魔導士クラスを閉鎖してしまえば良いかと」

 と、クールに言うシオンの言葉に、アランは(うなず)いてから言った。


「確かに、シオンの言う通り魔導士クラスを閉鎖してしまえば、Holy Mageクラスと機密は守られる」

「だが、もし完全に魔導士の養成から国が手を引いてしまえばどうなる?」

 と、アランが逆に疑問を呈すると、すぐさまトゥルリーが答えた。


「おそらく、Holy Mageの真実を知らずにただ長命な魔術師だと思う国民が我々Holy Mageを羨み、魔導士になりたいと思う者が黒魔術に走る可能性が高まるだろう」

 というトゥルリー先生の言葉を聞いて、ノアも心の中で同意しつつ大きく頷いていた。


 その様子を見てアランがノアに聞いた。

「ノア君は、魔導士クラスからWhite Mageクラスに編入した人だったね。君はどう思う?」


 アランに尋ねられてノアは少し考えてから答えた。

「あの、以前住んでいた星の教育制度について少し、お話してもよろしいでしょうか?」


「ああ、それは興味深いな」

「それが君の意見の根拠にもなるのだろうから、是非聞かせてくれ」

「ふたりとも良いな?」

 と、アランが言うと、シオンもトゥルリーも黙って頷いた。


 その三人の反応を見てノアは、自分の過去を懐かしく思い出しながら話し出した。

 ほんの二年にも満たない前の事なのに、ノアにとっては大昔の事のように思えた。


「僕が住んでいた地球の日本という国では、義務教育制度が有り、だいたい6歳から15歳まで全員が無料で教育を受ける権利があります。だから、僕の知ら限り文字の読み書きが出来ないという者はいませんでした」

「さらに16歳以上は本人の意思で高校へ進学するのですが、ほとんどの者が進学を希望します。さらに高校三年を卒業すると大学に進学することが出来るという制度になっていました」

「僕は、前の世界で高校に入学したばかりでした。でも、受験勉強を頑張ってレベルの高い学校へ入ったのに、自分が思っていた学校とは違っていて、勉学への意欲が失せて悩んでいた時にこちらの世界に転移しました」

「この世界に来て、以前、気の進まないまま学んだ事が非常に役に立って驚きました。魔法の上達に必要とされる物の(ことわり)についても、以前の星で学んだことが役立ち、他の人より早く身に付けられたと思っています」

「なので、学ぶ機会は必要だと思います」


 ここまで一気に自分のことを語ったノアは、ここで一息ついてから続けて言った。

「もし、魔導士クラスを無くして、Holy MageとWhite Mageクラスという神聖力(Holy Power)を持つ者だけが優遇されるだけの学校となったら、それを羨む国民が反感を抱くのではないかと思います。入学・合格条件を明らかにしなくてはならなくなって、神聖力(Holy Power)やHoly Mageの秘密が守れなくなる原因にもなると思います」

「すみません。偉そうに…」

「でも、僕は異星人だからこそ、この国の人とは違う視線で語れると思うので参考にして頂ければと思います」

 と、語るノアのしっかりした意見を聞き三人は密かに感心していた。


 スチュアートリア帝国の教育は、他のリゲル・ラナの国々の中では進んでおり、基本的には誰でも基礎的な教育を受けられるようになっていた。

 ゆえに、他国よりは識字率も高い。


 アランは、ノアの意見を聞いてから言った。

「ノア君。君は良く考えているんだね。君の国の教育制度も興味深い」

「私も君と同様に、神聖力やHoly Mageについて今まで通り機密事項とするなら、一般国民に貴族の子息子女を優遇する学校と思われることを懸念している」

「入学・合格条件を明らかにすれば、神聖力やHoly Mageについて他国やBlack Mageに知られることとなり、帝国の強さが揺らぐ原因ともなり得る」

「だが、私が魔導士クラスを維持したい理由はそれだけではない」

 と、アランは少し声を大きくして言った。


「君や、リリアーナのような優秀な人材を埋もれさせることにもなり、ひいてはその人材がBlack Mage側に取り込まれる状況を生むかもしれない。それだけは絶対に阻止したいのだ」

「純粋に学びたい者に、たとえ神聖力(Holy Power)を持たないとしても、その熱意を正しい方向に、国と人を助ける方向に向けさせてやりたい」

「それが帝国、この星の為にもなり、本人の魂を磨くことにも繋がると思うのだ」

 と、いうアランの言葉を聞いてシオンは、自分の見識の甘さを反省していた。


「閣下、申し訳ございません」

「私の認識が甘く、軽々しく魔導士クラスの閉鎖などと口にしてしまいました」

 と、アランに深々と頭を下げてシオンが言った。


「いやいや、シオンは軍部のことで忙しいから、教育や帝国神聖力術士養成大学についての現状は知らぬなくて当然だ。君の意見は当然でもあるので気にするな」

 と、アランが言うとシオンは

「いえ、仮にも私は、帝国神聖力術士養成大学の校長であるカジミール・デューク・ヴァイオレット・フィールド侯爵の息子です。知らぬではすみません。お恥ずかしい限りです」

 と、本当に恥ずかしそうに言った。


 すると、いつもシオンと意見が対立しがちなトゥルリーが言った。

「それは、我々、帝国神聖力術士養成大学の教員中でも意見が分かれるところだ」

「外部のしかも軍の参謀室の仕事にかかりきりのお前の意見は、多数派の意見でもある」

「それをしっかり吟味するのが我々の役目だ。一緒に最善策を考えよう、シオン」

 と、言いながらトゥルリーはシオンの目を見つめ、目でも何かを語っているように見えた。


 アランもトゥルリーに続いて言った。

「トゥルリーの言う通り、私の意見は少数派だ」

「帝国を回って現場を見ている私にしかわからない事もある」

「また、異星人のノアだからこそ見えていることもある」

「そんな少数派の意見も聞いてくれるのは、シオンとトゥルリー、君たちだからだ」

 と、言ってアランが嬉しそうにふたりを見ると、いつもクールなふたりの頬が少し緩んだのをノアは見逃さなかった。


 そして、この三人の信頼関係を羨ましいと思うノアだった。




◆ ◆ ◆ ◆ 

用 語 整 理

◆ ◆ ◆ ◆

リゲル・ラナ星は、魔法が生きている星である。

魔法とは、異なる神聖力(ホーリーパワー)(Holy Power)が存在する。


神聖力(ホーリーパワー)

神聖力は、宇宙全ても司る力で宇宙全体に存在する。


Holy(ホーリー) Mage( マギ )

神聖力を活用できる者をHoly(ホーリー) Mage( マギ )と呼ぶ。

神聖力は、その者の魂に宿る者で、能力差がある。


White (ホワイト)Mage(マギ)

白魔術を使う者を白魔術師と呼び、その力を極めた者をWhite (ホワイト)Mage(マギ)と呼ぶ。

白魔術は、魔法の中でもライトエナジーを活用するものメインである。

特に人を治癒したり、自己治癒力を高めたり、癒したりする力がある。


Black(ブラック) Mage( マギ )

黒魔術を使える黒魔術師と呼び、その力を極めた者をBlack(ブラック) Mage( マギ )と呼ぶ。

黒魔術は、魔法の中でもダークエナジーを活用するものメインで、攻撃性が高く、呪術と呼ばれる呪いを用いて人を殺めたり、魔物を強化させることが出来る。


【魔導士】

魔法を使える者の総称で、この中に白魔術師も黒魔術師も含まれる。


Grate(グレート) Mage(マギ)

神聖力を使いこなせるHoly(ホーリー) Mage( マギ )は、それほど数は多くなく、スチュアートリア帝国内にしかいない。

それゆえにHoly Mageの存在は、一般人には知らせておられず、優れた魔法使いという認識でGrate(グレート) Mage(マギ)と呼ばれている。

つまり、Grate Mage =Holy Mage として使われている。


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