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Beyond of Cosmos =星巡りの物語=リゲル・ラナ編  作者: 詩紡まりん
『淀む光と影』=新たな闘いの始まり= リゲル歴4045年

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レッドリオン総司令官、帝国神聖大学を巡視訪問する


 ノアは、いつものように午後から鋼竜の世話をしていた。

 そこにポリアンナが、慌ててた様子で駈け込んで来た。

「たいへん、たいへん、ノア君!」


「どうしたの?」

 ポリアンナの慌てた様子にノアも只ならぬ事態かと身構えた。


「アラン様が、レッドリオン公爵様が、来週、大学に巡視に見えるそうよ」


 アランが帝国陸軍総司令官兼執務大臣として鋼竜の飼育と訓練具合について大学の視察に来ることが決まり、その情報を祖父から聞かされたポリアンナが急いでノアに知らせに来た。

 空軍部隊には、ブルーフォレスト辺境伯領から提供されたの金鱗竜が配備されるが、将来的にはレッドリオン公国領の鋼竜による鋼竜空軍部隊を組織するのが目標である。

 その為には、鋼竜の子供たちの飼育管理と調教訓練が重要となって来るのだ。


 ブルーフォレスト辺境伯家の一員として、帝国神聖力術士養成大学で(ゴールド)(スケール)(ドラゴン)パイロット訓練と、(スティール)(ドラゴン)の飼育と調教訓練を任されているポリアンナとしては、その成果を見せるという一大事であった。


「鋼竜も一頭も欠けずにみんなスクスク育っているし、Holy(ホーリー) Mage( マギ )クラスの先輩たちのパイロット訓練の方も順調みたいだから心配ないんじゃない?」

 と、ノアが言うと

「そうかな?順調かな?」

 と、いつになく不安そうに言うポリアンナだった。


 そんなポリアンナを勇気づけるようにノアが言った。

「ポリアンナは凄くよくやってるよ。トラブルというトラブルは全くないじゃない?俺たちみたいに竜を見るのすら初めての者が、こうして世話をできているのは、全部君の指導のおかげだよ。もっと自信持っていいと思うよ」

 と、ノア励ましながら、なぜポリアンナが不安に思うのか不思議でならなかった。


「ねえ?ポリアンナ。なにがそんなに不安なの?」

 と、ノアが尋ねた。


 ノアの質問にドキリとしながらポリアンナが答えた。

「お祖父様が、私にプロジェクトを任せ下さったのは、私の力を見る為だとも思うの。私が辺境伯家の娘としての力が試されているというか…。そのためにミラ・ローズ寮に入寮させて貰えたしね」


「そんな心配しなくていいと思うくらい、ポリアンナは良くやっていると俺は思うけどな」

 と、ノアは本当に心からそう思ってお世辞なく言った。


「ありがとう、ノア君」

「でも、祖父もアラン様も、このプロジェクトには帝国の未来がかかっていると思っていて、相当気合が入っているのよ」

「祖父や兄からも、学生のクラブ活動じゃないんだぞ?と言い聞かされているし…、もし、私では不十分だと思われたら、このプロジェクトから外されちゃうかも?」

 と、ポリアンナは本当に不安そうに言った。


 ノアも、このプロジェクトの大切は充分理解しているつもりだった。

 もちろん、ポリアンナは充分に頑張って役目を果てしていると思っていたが、どう慰めて良いのかわからなかった。

 するとポリアンナが力なく言った。

「やっと、自分が役に立てると思ったし、アイラちゃんやリリアちゃん、ノア君と一緒に居られると思ったのに…」


 ポリアンナは、やっと出来た友達と一緒に居られる時間が奪われるのを恐れているのだった。

 辺境伯という、帝国の外れの辺境地で同年代の友達もいない日々に戻るのは絶対に嫌だった。


 その気持ちは、ノアにもなんとなく理解できた。

 地球から突然この星に転移して来たが、今では地球に居る時よりも信頼できる人、守りたい人たちが出来た。

 少し前までは、できることなら地球に戻りたい気持ちがあったが、今はそんな気持ちは微塵も無いくらい日々が充実していた。


 そこに、授業を終えたアイラとリリアーナもやって来た。

 肩には、それぞれ使徒(しと)候補のふくろうのライナスとロザリーを乗せていた。

 アイラとリリアーナは、自分たちのふくろうに竜を慣らせたいと思っていた。


「あら、ふたりとも、ふくろちゃん達を連れて来たの?」

 アイラとリリアーナを見つけてポリアンナが声をかけた。


「うん。ライナスとロザリーにも竜を見せてみたいと思ったんだけれど、大丈夫かな?」

 と、アイラが言った。


「う~ん、まだ使徒ではない普通のふくろうに、竜を合わせるのは無理だと思うわ。まずは私の使徒のクロエからの方がいいと思うわよ」

 と、ポリアンナが答えた。


「そっか~」

 と、がっかりするふたりにポリアンナが言った。

「来週、レッドリオン公爵様が巡視に来られるそうよ」


「えっ!」

 と、リリアーナの表情がパッと明るくなった。

 リリアーナが、アランに会うのはレイマーシャロル事件以来、実に半年ぶりである。


「ほんとう?」

 リリアーナは突然のことでドキドキしていた。


「ええ、お祖父様からそう聞いて言いるわ」


「ブルーフォレスト先生がおっしゃるなら間違いないわね。オスカー様も見えるの?」

 と、アイラもワクワクしながら尋ねた。


「ええ、オスカーお兄様も同行されるはずよ」

 それぞれの憧れの人がやって来るようである。


 そんなふたりに対してノアが言った。

「ポリアンナが、この竜のプロジェクトを任されていることに自信が無いみたいで、不安らしいんだよ。俺は、ポリアンナは十分良くやっていると思うんだけど、ふたりもそう思うだろ?」


「もちろんよ。ポリーちゃんは朝早くから大学に来て、竜の健康チェックをしてから授業に出ていて、自分の勉強も頑張っているってアンナ先輩が感心していたわ」

 と、アイラが言った。


 それは、ノアも知らなかった事実だった。

「そうなんだ。それは俺も知らなかったよ。ポリアンナは、自分がこのプロジェクトから外されて寮から自邸に戻されるのを恐れているみたいなんだ」


「そうなのポリーちゃん?」

「そんなこと心配しなくていいのに。もう私たちは親友でしょ?例え、住む場所が離れても学校では会えるし、心はいつも一緒よ?」

 と、アイラとリリアーナは、ポリアンナに抱きついて言った。


 その3人の様子を、ノアは微笑みながら眺めて言った。

「だいじょうぶだよ、ポリアンナ。どんな形でも困ったことがあれば、俺たちはお互いに助け合う仲間じゃん!少なくとも俺はポリアンナを助けたいと思ってるよ。まぁ、君の方が能力も上だから何ができるかわからないけど、気持ちだけはね…あるからさ」

 と、ノアはポリアンナを励ましたくて、精一杯の気持ちを伝えた。


 その言葉を聞いて、ポリアンナは本当に嬉しいと思っていたが、気持ちが溢れるだけで出て来た言葉は、

「うん」の一言だけだった。


 するとアイラとリリアーナが

「あら、ノア君が助けるのはポリーちゃんだけ?」

「私たちは?」

 と、おどけるように言ったのでノアは慌てて

「もちろん、君たちふたりとは同じWhite Mageクラスメイト同士、お互いに助け合おう!」

 と、言ったのを見て3人娘は笑った。

 ノアは、女子に笑われて恥ずかしかったが、ポリアンナが笑顔になってくれたので良かったと思っていた。


 その翌日、帝国神聖力術士養成大学の生徒全員に、一週間後の帝国陸海軍総司令官レッドリオン公爵の訪問が告知された。

 帝国神聖力術士養成大学のHoly Mageクラス、White Mageクラスの生徒は、卒業後、騎士の称号が授与されて帝国軍所属騎士となる。

 ゆえに、帝国陸海軍総司令官であるレッドリオン公爵閣下は、未来の最上官になるわけだ。

 そんな、レッドリオン総司令官閣下は、常に帝国中を飛び回っているので、実際に彼の顔を見ることはなかなか出来ない。

 帝国神聖力術士養成大学の生徒の多くは、実際にアラン総司令官を見るのは初めてという者も多かった。


 帝国神聖力術士養成大学のキャンパスは、第三代皇帝ラリーアダムス帝の時に使われていた宮殿を改装したもので、広大敷地面積の中に大小含めて20棟以上の建物が点在している。

 その中でも一番大きな宮殿内にある大広間にHoly Mage・White Mageクラスの全生徒が集められ、アラン・クレオ・ハイデルベルト・レッドリオン帝国陸海軍総司令官の訓示が語られた。


 生徒たちは、235歳を超えると言うレッドリオン帝国陸海軍総司令官の若さと醸し出すオーラに圧倒されつつ、アランの訓示に真摯に耳を傾けていた。


「諸君は、我がスチュアートリア帝国の未来に必要不可欠な大切な人材である。君たちの日々のたゆまぬ努力を最大限評価している。引き続き帝国の為に尽力できる人材となり、帝国軍のHoly Mag騎士、White Mage騎士として活躍してくれることを期待する」


 リリアーナとノアは、久しぶりに見るアランの姿だったが、こうして公式な場で見る姿は、一層凛々しく頼もしい事に感動していた。


 アランの訓示続き、校長であるカジミール・デューク・ヴァイオレット・フィールド先生の言葉が続いた。 

「君たちも気づいている通り、この国は歴史的にBlack(ブラック) Mage( マギ )の侵略の脅威にさらされている。そして、昨今、黒魔術師によると思われる事件が増えて来ている。背後にはBlack Mageが率いる組織が居ると思われ、その脅威が帝国国民の脅威になりつつあるので、君たちも気を引き締めて生活して欲しい」


「はい!!」


 校長先生の言葉に生徒たちも力強く返事した。

 Holy Mageクラスの生徒の多くは、領地を治める貴族の子息子女がほとんどなので、その差し迫りつつある現在の脅威をよく理解していた。


 続いてブルーフォレスト先生が語られる番となった。

 ポリアンナは、祖父の厳しい顔を見て何が語られるのか、ドキドキしていた。


 祖父のイーサン・バルナバーシュ・ブルーフォレスト元辺境伯は、ラファエル先帝と現アレクサンドル皇帝と共に何度もBlack Mageの侵略から帝国を守って来た兵である。

 その祖父が、ここのとろ、大学の教師としてではなく、元帝国軍少将としての顔になり気持ちが張り詰めていることを、孫であるポリアンナは感じとっていた。


 ブルーフォレスト先生は生徒たち全員を見まわしてから言った。

「今、ヴァイオレット・フィールド校長からの話があったように、現在この帝国は、近年には見られないほどの不穏な状況にある。君たちも知っての通り、私は前皇帝、現皇帝と共にBlack Mage達との闘いを経験しておる。今、またその時と同じ脅威を感じてるのだ。これは、脅してもなんでもない」

「学生である君たちに、なぜこのような話をするのかと言うと、君たちはHoly Mageだからだ。魔力を持たない者同士の闘いであるなら、大勢の帝国軍の優秀な騎士たちが任せておいてなんら心配は無い。だが、相手が黒魔術師、またはBlack Mageとなると一般の騎士だけでは不十分だ」

「特に、貴族として領地を統治する家の者は、戦闘が始まった際には自領を守るために力を尽くして欲しい」


 広大なスチュアートリア帝国には、帝国の直轄地以外に数十もの貴族が統治する領地が有る。

 いわば、日本の江戸時代の藩のようなもので、それぞれの領地を治めの貴族には一部を除き自治権が認められてる。

 また、防衛に関しても各領地に帝国軍の軍事基地が設置されており、ほとんどの場合は、その基地のある領地主が基地司令官を任されている。

 それゆえに、こうたした外敵から脅威が具体化した際には、個々の貴族の皇帝への忠誠心と領地の自治管理能力が問われる。

 万が一、領主共々帝国軍基地を私物化されれば内乱、革命となる恐れがある。しかし、ほとんどの領主がHoly Mageであるこの帝国ではその心配がほとんど無いのがこの国の強みなのである。

 Holy Mageとは魂が美しいものにしか与えられない称号とも言えるからだ。


 さて、ノアはポリアンナが心配していた事は、このことなのか?と思っていた。

 ノアや、リリアーナ、アイラのような庶民出身の生徒には関係ないが、貴族出身者は自分の領地を守る為という仕事を優先しなければならない。

 もしBlack Mageとの闘いへの準備が始まったなら、ポリアンナも辺境伯領地に戻らなくてはならなくなるのだろうか?


 すると、ここでアランが再び口を開いた。

「今、帝国軍としてはBlack Mageとの直接的戦闘に入ることを防ぐために、彼らの活動拠点である組織を叩こうとしている。だから、生徒の君たちが、この大学を離れ自領に戻り、勉学を途切れさせる事態にならぬように我々も努力している」

「そのためにも機動力として、空軍部隊の設立を急いでいる。そのために今、この大学でも騎竜パイロット訓練と鋼竜の飼育を担って貰っている。今日は、私が視察に来た目的のひとつは、そこにもある」

「君たちは、それぞれ自分の個性と能力に合った方法で、帝国の平和な未来の為に力を尽せる人材となって欲しい」


「はい!!」


 生徒たちは再び大きな声で、アランの言葉に力強く返事をした。


 アンナとクリストファーのふたりもアランの言葉を聞きながら

「いよいよか」と思っていた。


 レイマーシャロル地区のマルシェで遭遇した事件、ルートドリアナ地区で耳にした怪しい噂、それまで守られていた帝都の平和が少しずつ侵害されてきているのを感じていたふたり。

 その不安が具体的な脅威となって迫って来ていることを感じて少し身震いすらしていた。


 アンナがクリストファーに言った。

「レッドリオン公爵閣下が直々に出向かれるなんて、よほどなのよね?」

「ああ、それだけ俺たちも期待されているということだろう」

「当然、パイロット訓練も見て行かれるのよね?」

「だろうな…。なんだか手に汗が…」

 と、クリスファーが言うとアンナも

「クリスも?私もドキドキして来ちゃったわ」

 と、胸に手を当てていた。


 ふたりとも、動物と会話する能力がありそれぞれ担当する竜との意思の疎通が出来るようになってから操縦能力も格段に上がっていたが、やはり軍の総司令官に見られるとなると緊張が止まらなかった。


 大広間での全校生徒への訓示を終えると、レッドリオン総司令官による現場視察が行われた。

 まずは、ポリアンナが担当する| (スティール)(ドラゴン)たちの飼育・訓練場からだった。

 卵から羽化した9頭の鋼竜は、元気に成長していた。

 ポリアンナの使徒のクロエが母親代わりになっていたが、1頭ずつ飼育を担当する生徒が付いて世話をしていた。


 アランは、トゥルリー先生とマリア先生を伴って、それぞれの鋼竜を1頭ずつ観察し、その担当の生徒に声をかけて言った。

 ノアは、ドキドキしながら自分の番になるのを鋼竜のエディと待っていた。

 ノアの番となりアランは、ノアとエディコンビを見ると

「おや、久しぶりだね。White Mageクラスでの勉強はどうだい?」

 と、ノアに声をかけた。


 ノアは、アランが自分を覚えていてくれた事を嬉しく思った。

「はい。お陰様で毎日楽しく勉強させて頂います。僕みたいな者に竜の飼育まで任せて貰えて光栄に思っております」

 と、ノアはアランに感謝の言葉を述べた。


「それは良かった。この鋼竜の子供も君に懐いているようだね」

 アランも動物の言葉を聞き取れるHoly Mageなのでエディのノアへの感情を読み取って言った。


「はい。竜がこんなに人に懐く生き物だとは思いませんでした」


「そうだな。でも、同じ種族でも個々に性格があるし、主人との相性もある。きっと、この子は君が神聖力(Holy Power)を身に付けた暁には使徒になってくれるんじゃないかな?」


「使徒ですか?そうだと嬉しいです」

 と、ノアがエディの頭を撫でるとエディもその長い首をノアに擦り付けた。


「ノア君だったな?今度またゆっくり君とふたりで話したいことがある」

 と、アランが耳打ちした。

 ノアはちょっと驚いてオーラ―に目がつぶれそうだと思いつつアランをまじまじと見た。

 アランはニコリとほほ笑みながら

「その件について、トゥルリーかマリアから伝えさせる」

 と、言って次の鋼竜と飼育係の元へ移って行った。


 その様子を遠くから、見つめるリリアーナとアイラ。

 リリアーナは、大広間で大勢の生徒のひとりとしてアランを見つめていたが、一瞬、アランと目が合ったような気がしていた。

 が、ゆっくり話すチャンスが無くがっかりしていた。

 そこで、アイラを伴い、話しかけるチャンスを狙っていた。

 まるで推しのアイドルの出待ち状態である。


 そんなアイラの方もアランの警備で同行しているオスカー狙いだった。


 アランは、鋼竜とその飼育係の生徒ペア9組を一通り回るとポリアンナを呼んで言った。

「ポリアンナ嬢、1頭も落とすことなく良くここまで育ててくれましたね。素晴らしいです」

 と、褒めたたえた。


「アラン様に褒められせるなんて、光栄でございます」

 と、胸に手を当ててスカートの裾を持って挨拶をしようとして、制服のミニスカートだった事を思い出し、スカートを持ち上げるのを寸でのところで止めて礼をした。


 それを見たマリア先生がとなりのトゥルリー先生に

「アランを前にすると、やんちゃなポリアンナ嬢もちゃんと貴族の令嬢に戻るのね」

 と、こっそり笑いながら囁いた。

 それを受けたトゥルリー先生も

「ブルーフォレスト辺境伯家のじゃじゃ馬も女の子ですからね」

 と、言ったことをポリアンナは聞き逃さなかった。


「先生方、今なんかおっしゃいませんでした?」

 と、おかんむりのポリアンナに先生方は

「いやいや、ポリアンナ嬢は早朝から登校して竜たちの体調チェックをしたり、帰り際まで様子を見に来てたりしていて本当に良くやっていんだと…な?マリア先生?」

「ええ、ポリアンナ嬢は本当に頑張ってるのよ。アラン」

 と、言ってお茶を濁した。


 アランも笑いながら

「ポリアンナ嬢とブルーフォレスト城でお会いしたのは、つい先日のように思い出されるのに、あっという間に成長されましたね。ヒーリーング術と剣術には長けておられても、他はさっぱりとオスカーに揶揄されてた頃とは、もう格段の差ですね」

 と、言うとポリアンナは謙虚に

「いえ、他はまだまだです。Holy Mageとは名乗るにはほど遠いと自覚しております。でも、ブルーフォレスト辺境伯家の名を汚さぬような立派なHoly Mageになれるよう日々精進致します」

 と、言った。


 それを物陰で待機していた兄のオスカーが

「父上と母上が効いたら泣いて喜ぶぞ、ポリアンナ」

 とも言った。

「やだ、お兄様もいらしたの?」

 と、真っ赤になるポリアンナの様子をエディと見ていたノアは、これなら大丈夫そうだなと、ホッとしていた。


 次にクリストファー、アンナ、キース達、Holy Mageクラスの生徒による(ゴールド)(スケール)(ドラゴン)部隊の飛行訓練披露だった。

 アラン自身、帝国空軍設置予定地で、何度か金鱗竜のテスト飛行を経験しているので、その操縦の難度は理解していた。

 使徒と主人の関係とは違い、普通の竜との意思疎通も大切であり、人間には空を飛ぶという機能は備わっていないので、あらゆる状況に対応する為の経験値が必要になって来る。


 まずは、順番に1頭ずつ飛行を披露した。

 それからブルーフォレスト先生の合図で6頭の金鱗竜が一斉に空に舞い上がった。

 不安定な飛行をする者はなく、何種類か編隊の組み直しを披露しながら上空を飛行して戻って来た。

「普通に飛行する事は問題なくできそうだな」

 と、アランはブルーフォレスト先生に言った。


「はい、飛行に関して不安のある者はいません」

「では、今後は戦闘訓練を組み入れてくれ。相手が竜に乗って対抗して来ることは無いと思うが、呪術で操った飛行動物を使って襲って来る可能性は否定できない。まだBlack Mage達に、我々が空軍を組織しようとしている事までは伝わっていないだろうから、今のうちにあらゆる事態を想定して実戦訓練を組み入れて欲しい」

 と、アランがブルーフォレスト先生に言った。


 するとブルーフォレスト先生が、

「エド・ブロ戦のような邸内奇襲攻撃の練習も必要ですかな?」

 と、笑って見せた。


「ああ、先生の腕の見せどろです。いずれ、『レッドリオン公国内にも空軍部隊を置け』と父が言いそうです。その説は、そちらもよろしくお願いします」

 と、アランも笑いながら答えて言った。


 和やかなムードではあったが、アランもブルーフォレスト先生もこのプロジェクト遂行に一刻の猶予も無いことを理解していた。


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