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Beyond of Cosmos =星巡りの物語=リゲル・ラナ編  作者: 詩紡まりん
『淀む光と影』=若きMage達の誓い= リゲル歴4045年

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ノア、ついにカミングアウトする


 ポリアンナの誘拐に、二度も失敗しているスティビーとピート。

 彼らは、しおしおとレイマーシャロル地区の『大黒主神教』の隠れ家に戻り作戦失敗の報告をした。

 レイマーシャロル地区の彼らの隠れ家兼教会は、町はずれの裏通りの人目につかない所にあった。


 スチュアートリア帝国にも様々な宗教がある。

 国家側としては個々の信条を尊重し、基本的に信教の自由は認められていた。

 それを利用して、Black(ブラック) Mage( マギ )達が宗教活動という名目で様々な裏工作をしている。

 しかし、金銭を得るための魔法を使用することは禁止されており、特に帝都内では厳しく取り締まられていた。

 特に、今年に入って『大黒主神教』という名前が徐々に知られて来たことにより、帝国軍側のマークされだしていた。



「やっぱりブルーフォレス辺境伯家の娘を誘拐するのは無理なんじゃないですかい?」

 と、ピートが言うと、ここの教会を仕切っているらしい男が声を荒げて言った。


「あんな小娘ひとり、さらえないのか?前回は、兄の近衛騎士が平民のふりをして付き添っていたから仕方がなかったが、今回は小娘ひとりで行動していたじゃないか!」


「いやいや、ダボシムの旦那。今回は辺境伯家の騎士が6人、大学寮の騎士が3人、合計9人もの護衛が付いてたんですぜ。ありゃ、手も足も出ませんわ」

 ダボシムと呼ばれた男が、ここの教会の責任者らしい。



「しかも、なかには魔導士いや、White (ホワイト)Mage( マギ )レベルの騎士も交じってました」

 と、ピートがいかにも自分は魔導士を知っているようなそぶりで言った。


「全く、ガニバランさんになんて言えば良いんだ」

 レイマーシャロル地区の『大黒主神教』教会を任されているらしいダボシムは、頭を抱えていた。


「旦那も黒魔術師なんですから、魔導士レベルならなんとかなりませんかね?」

 と、スティビーが言うとダボシムは、

「そりゃ、一対一なら闘えなくは無いが、街中で黒魔術を使えばすぐに捕まっちまう。ただでさえ、今は目をつけられているからな。仲間を呼びたくても帝国に入国することすら難しくなっている」

 と、言って再び頭を抱えた。


「今は、やはり帝国民の信者を増やして、洗脳してそいつらを使うのが得策ですかね?」

 と、のんきの顔で言うピートにカチンと来たのかイライラした調子でスティビーが言った。


「お前が、もうちっと真面目に勉強してしっかり魔導士になってりゃ良かったのになんで帝国神聖大学から逃げ出すんだよ!」


「そうだぞ!そこでしっかりノアをこちらの仲間に引き戻してれば今回の計画だって上手く行ったのに」

 と、黒魔術師のダボシムが言った。


 すると、ピートが閃いたというように言った。

「そうですよ!ノアを利用しましょう!ノアは、すっかり辺境伯の娘と親しくなってましたから!ふたり一緒にさらっちまえば良くないですか?」

 ピートは我ながら良い作戦を思いついた!とばかりに満足げだった。


 しかし、スティビーは、お前は浅はかだなと言う顔でピートを見ながら

「で?どうやってだ?どちらにしても護衛の騎士はいるだろ?」

 と、言った。するとダボシムが、

「が、待てよ?それは名案かもしれん。街中で黒魔術は使えないが街から離れた場所でなら使える。時間をかけて罠を張れば不可能な話ではないかもしれん。ガニバランさんと相談して作戦を立ててみよう」

 と、言いながらにやりとした。


 黒魔術たちは、Holy(ホーリー) Mage( マギ )のような使徒を使うことは無いが、「使い魔」が使える者がいる。

 彼らは、魔物を黒魔術で調教して「使い魔」としている。

 ダボシムは、自分の「使い魔」を呼び出した。

 それは、おそらく元は鳥のような動物だったのだろうが、体は鳥、顔と手足は鬼のような魔物だった。


 ダボシムは、自分の魔術で声を記録した手紙をその使い魔に渡して言った。

「ブロッサン国内の教会におられるガニバランさんに届けろ」

 魔物は、言葉は発せずただ、奇妙な鳴き声を発して闇夜に飛び立って行った。


 その頃、ノアは宿に戻ってバーの手伝いをしていた。

 今晩一晩宿に泊まって、明日の早朝にそのまま大学に登校するつもりだった。

 そこへ、招かれざる客がバーに訪れた。

 それは、あのピートとスティビーだった。


 ノアは、ふたりに気づかれないよう店の裏に下がって宿の主人であるティム・ランダーに言った。

「親父さん。バーに顔を合したく無い客が来ているんです。俺、もう部屋に下がってもいいですか?」


 ティムは、ノアが地球から転移して来た者であること以外は、ある程度ノアの事情は理解していた。

「例のおかしな宗教のヤツか?なんだったか…大なんとかという」


「そうです。大黒主神教のヤツらです。裏で黒魔術師が動いてて、人を自分たちの都合の良いように洗脳しようとしているんです。親父さんたちも気をつけて下さい」


「わかった。お前も気をつけろよ」


 ティムは、何ごともなかったように仕事を続けながら、奴らの話に耳をませていた。

 やつらは、ちびちびと酒を飲みながらボソボソと話しているので会話の内容は聞き取れなかった、

 ただ、確かに「ノア」という名前を何度か口にしていたので、ノアの話をしているのだろうと思った。


 彼らは、ノアがここで働いていたことも、寝泊りしている事も知らないのだろうか?


 ティムは、愛想よく彼らのテーブルの酒の空き瓶を回収しながら、ふたりに話しけかけた。

「何か追加の注文はございますか?」


「んや、もうだいじょうぶだ」


「ところで、ここにノアって男は泊ってるかい?」

 やはり、彼らはノアを捜しているらしい。


 ティムは、どうしたものか考えて

「ええ、泊まってました」

 と、答えた。


「泊ってた、って事は、今は居ないってことか?」


「ええ、もう出て行きました」


「そうか」

 ティムの言葉に年上の方の男がボソリと答えた。

 そして、何ごともなく、ほろ酔いの二人は夜更けの街に帰って行った。


 ティムは、バーを閉めると、ノアの部屋に行きドアをノックして声を掛けた。

「ノア、起きているか?」

 部屋の中からノアの声がした。


「ああ、親父さん?起きてるよ」

 と、言いながら部屋のドアを開けた。


「どうしたの?親父さん」


「ノアの会いたく無いふたり組。やっぱりノアのことを聞いて来たぞ」


「え?やっぱり?」

 と、ノアは少し驚いたような、しかし予想通りだともいうように答えた。


 ティムは続けて言った。

「ここに泊まっているか?と聞かれたから、もう宿を出たと言っておいた」


「ありがとうございます」

 と、ノアは少しホッとしたように言った。


「明日は、早めに寮に戻った方がいいな。なんなら馬を使っていいぞ?」


「それでは、宿の仕入れに困るでしょう?」


「俺が後で学校まで引き取りに行く」


「いえ、そんな無駄骨を折らせては申し訳ないです。気をつけて帰りますから」


「そうか?なんだか嫌な予感がするんだ。気をつけろよ」


「わかりました。親父さんいつも有難う」

 ノアは、ティムの心遣い心から感謝した。


 翌早朝、ノアは朝霧の中、宿を出てレイマーシャロル地区の外れの辻馬車乗り場で馬車を拾っい、ひとまず学校寮のリ・ジェルス館へ戻った。


 ノアはスチュアートリア帝国へ来て以来、今ほど危機感を感じたことはなかった。

 Black(ブラック) Mage( マギ )がこの帝国を本気で侵略しようとしていること、その方法としてゲリラ的に『大黒主神教』という宗教を立ち上げて利用していることの恐ろしさをひしひしと感じていた。


 ある日突然、何も持たず何の知識も無くこの星に転移したのに、今までこの世界で生きて来れた。

 これまで、あまりにもトントン拍子に物事が進み不思議なくらい順調だった。

 ところが、ここに来て自分が大きな渦に巻き込まれていることに気づいた。


 赤の他人の自分が、この星で一番大きな国の運命を左右する事件に知らぬうち関わってしまっている。

 全くの外野だと思っていたのに、いつの間にか重要なポジションに立たされているのだ。


 最後に地球で体験した悪夢の「闇バイト」。

 自分が意図せぬところで物事が動き、自分の意志には関係なく犯罪に加担させられたあの出来事。

 あれは悪夢だと思って忘れようとしていたのに、この世界でもまた意図せず犯罪に巻き込まれてしまうのではないか?

 ノアは、同じ悪夢を二度と繰り返すのだけはご免だった。


 今、ピート達に捕まり、『大黒主神教』に引き戻されたとしたら、きっと、この帝国の侵略を狙っている黒魔術師やBlack(ブラック) Mage( マギ )の手先として利用されてしまうだろう。

 以前の自分は、何もできない小僧でしかなかったが、今は、ある程度魔法を学んでしまった為、『大黒主神教』に戻れば黒魔術師として利用されるに決まっている。


 それだけは絶対に避けたい。

「あ~、ここまで来て、なんでこうなるんだ!」


「闇バイトは、無知過ぎた自分が悪かったし、そんな上手い話があるわけ無いのに、それに乗っかろうとした自分が悪かったって思ってる」


「でも、今回は最初から『大黒主神教』と遭遇してしまったんだ」


「つーか、地球からこっちに来ても状況は変わらず延長線上にいる気がする」

「なんなんだよ、もう!」

 ノアは、寮の自室で制服に着替えながら頭を掻きむしった。


 そして、ふと昨日出会ったポリアンナの顔が脳裏に浮かんできた。


 帝国を侵略するには、陸路だと東か西からになる。

 東はラファエル元皇帝が守るレッドリオン公国の鉄壁の防衛が敷かれており、過去に何度も失敗している。

 そうなると西からになるが、西も昔から辺境伯家が鉄壁の守りで敵の侵入を阻んでいる

 その辺境伯の弱点を突く為に娘のポリアンナが狙われたのに違いない。


「いや、あの子を巻き込んだら駄目だ。なんとしても阻止しなければ」

 と、ノアは強く思った。


 辺境伯家には、有能な騎士が居るようだからおそらく大丈夫だろうが、やはり心配はある。

 むしろノアがポリアンナと親しくすることで、ピート達がノアを利用する可能性が高くなるかもしれない。


「俺は、彼女に近づかない方が良いんだ」

 そう思いながら、ノアは大学に登校した。


 今日の授業は、マリア先生の「黒魔術に対する防衛術」だった。

 ノアは、白魔術で人を助けたいと思って魔法を学んでいたので、黒魔術に対する防衛術などは、自分には必要ないと思っていたが、ここに来てその大切さを実感していた。


 いつになく熱心に学ぶノアの姿を見て、マリア先生は不思議に思って声をノアにかけた。

「ノア君、今日は随分熱心に取り組んでいるわね」


「はい、昨日、レイマーシャロル地区の実家に戻った時に、ちょっと感じるところがあったもので」


「感じるもの?」

 マリア先生は、直感的に何かを感じていた。


 ノアは、これ以上詳しく話すと、自分が『大黒主神教』に関わっていたことを話さないとならなくなるので焦っていた。


「まぁ、勉強熱心になることは良いとこよ、頑張りなさい」

 と、言ってマリア先生は他の生徒に呼ばれてその生徒の元へ行ってしまった。


 ノアは、ホッとしたのと同時に、打ち明けた方が良かったのか?とも思った。


 防衛するには、相手の攻撃について知らなければならず、先生たちは次々と黒魔術師達の魔法を披露し、その対処法について説明しくれた。

 ノアは、先生たちがGrate(Mage)か、White(ホワイト)Mage( マギ )のはずなのに黒魔術も使えるのに驚いていた。

 しかし、実は先生たちはHoly(ホーリー) Mage( マギ )なので、実際にやって見せたのは神聖力(Holy Power)を使用したもので、黒魔術のようにダークエネルギーを利用したものではなかった。

 それでも、目に見える事象は同じなので、生徒たちは白魔術を使って対応する術を学ぶことが出来るのである。


「黒魔術師は、ほとんどの場合、詠唱を唱えるか魔法の道具を使います」

「その瞬間を見逃さないようにしましょう」

 と、マリア先生が生徒たちに説明をしている。


 そういえば、パドラルでジェイコブ神父が使う魔法もほとんどが詠唱を唱えるものだった。


 ノアが最初に身に付けた炎の魔法も詠唱が必要だった。

 だが、今は帝国神聖大学に入って詠唱の簡略しライトエナジーを活用する白魔術を教わったので短時間で火をつける事ができる。

 黒魔術の場合は、炎を攻撃に使うためダークエナジーを集める詠唱の簡略が難しいらしい。

 ノアは、万が一『大黒主神教』の黒魔術師と闘うことになった時の為に、こうした術も身に付けておかねばと思い必死で学んだ。


 そんな日々が経過し季節は夏に近づいていた。

 トゥルリーがマリアとふたりで帝国神聖力術士養成大学の教務室でお茶を飲みながら話していた。


「今日は魔導士クラスの授業をして来たんだが、最近、ノアがやたら黒魔術に対応する勉強に熱心なんだ」


「そうね。彼は、入学した時から勉強熱心で優秀だったけれど、最近はさらに熱が入っているわね」


「う~ん、彼は、俺に人を助けられるようなWhite(ホワイト)Mage( マギ )になりたいと言ってたんだ。でも、あれは助けるというより、闘う気満々な気がする」

 と、トゥルリーは、ノアの急な変化に気づいていた。


「そういえば、以前、実家に戻った時にちょっと感じるものがあったと言っていたわ」

 と、マリアも思い出したように言った。


 ノアが、真面目で優秀な生徒だけに気になっていた。

 アランから、魔導士クラスを帝国神聖大学から切り離して、別の学校として作るべきかを見極めて欲しいと、言われているふたりにとってノアの成長と動向は、貴重な判断情報のひとつとなる。


 トゥルリーは、日頃はHoly(ホーリー) Mage( マギ )達の寮であるミラ・ローズに宿泊しているのだが、この日は魔導士クラス寮であるリ・ジェルス館に居た。

 そして、そこにある職員専用の部屋でお茶を飲んでいた。

 ノアが来るのを待っていたのである。


 しばらくすると、ノック音がしてドアの外でノアの声がした。

「はいりたまえ」

 と、トゥルリーが言うと、ドアが開いてノアが入って来た。


「トゥルリー先生がリ・ジェルス館に来られるなんて珍しいですね」

 と、言いながらノアがトゥルリーの前まで歩いて来た。


「君と話したかったんだよ。まぁ、掛けたまえ」

 と、反対側の椅子に座るように言った。


 ノアは、トゥルリー先生に言われた通りに椅子に着席した。

 そして、何か悪い事でもしたかな?とドキドキしていた。


「あの…俺なにか失態でもしでかしましたか?」

 と、ノアは恐る恐る尋ねた。


 トゥルリー先生は笑顔で

「そんなことは無いよ、君はよく頑張っている」

 と、言った。

 ノアは、ホッとしたのと同時になぜ?という疑問が頭の中に浮かんだ。


「むしろ、君が優秀で、頑張り過ぎてるいるのが気になるんだよ」


「えっ?頑張り過ぎですか?」

 と、驚くノアにトゥルリー先生は

「まぁ、まずはお茶を飲みなさい。ゆっくり話そうでは無いか」

 と、ポットのお湯を神聖力(Holy Power)で温め直しカップに注いでノアに勧めた。


 ノアは、戸惑いながらもそのお茶を飲んだ。

 なんだか、気持ちが落ち着くような気のする香りのまろやかな味のお茶だった。


 そして、トゥルリー先生はおもむろに口を開いて言った。

「ノア君。以前、君は私に人を助けられるHoly(ホーリー) Mage( マギ )になりたいと言ったね?」


「はい。言いました」


「今もそう思っている?」


「はい、もちろんです」


「そうか」

 トゥルリー先生は、もう一杯お茶を入れながら言った。

「でも、最近の君は、助ける術よりも、闘う、防衛の術の勉強に熱心だよね?それはなぜ?」


 ノアは、ギクリとした。

 トゥルリー先生はいつもと同じく優しいが、目の奥に光る鋭い眼差しがノアの心を見透かしているように思えた。


 ノアは、あれからずっと考えていた。


 地球での闇バイトの時、交番に盗んだ袋を置いて逃げて来てしまったが、あそこで警察に保護を求めていたらどうだったのだろう?

 今回も『大黒主神教』からひとりで逃げるだけではなく、誰かに助けを求めた方が良いのでは無いか?

 では、誰に?

 そんなことをずっと考えていた。

 今が、そのチャンスなのではないか?

 トゥルリー先生は、優秀なGrate(グレート) Mage( マギ ) で帝国軍の軍人でもあり人格者であることに間違いはない。


 ノアは、思い切って全てをトゥルリー先生に打ち明ける決意をした。


「先生聞いて貰えますか?信じて貰えないかもしれないんですが…本当のことなんです」

 と、ノアは小さい声でつぶやくように言った。


 すると、トゥルリーはお茶を飲みながら

「もちろん!君は嘘をつく生徒では無いと思っている」

 と、言ってカップを置いた。


「なんでも話してくれたまえ」


 ノアは、先生のその言葉に後押しされるように自分が地球から来た者であること、パドラルという国に突然放り出され、『大黒主神教』の教会に身を寄せていたことを話し始めた。


 そして、その『大黒主神教』の神父が黒魔術を使う者でBlack(ブラック) Mage( マギ )が来ていたこと、自分は信者になりたくなくて留守の間に逃げ出し、船でスチュアートリア帝国に来たこと、自分がこの大学に入学するまでのことを話した。


 初めは、平然とノアの話を聞いてたいたトゥルリーだったが、次々と語られる帝国の危機に繋がる情報を耳にして内心驚いていた。

 さらにノアが、自分が世話になり実家のようになっているレイマーシャロル地区にも『大黒主神教』の者が居て、ポリアンナの誘拐を図っていた話を聞くと心穏やかではいられなくなっていた。

 留めに、魔導士クラスに居たピート・ループがその手先であった事を知らされて流石のトゥルリーもショックを隠せなかった。


 トゥルリー先生は、片手を額に当て、その手の肘を机につきながら言った。

「なんてことだ」


 そして、一息つくと、今度は両手を汲んで机に肘をついき、その手に顔を乗せてノアに近づけて言った。

「ノア君、本当によく話してくれた。君の話はこの帝国にとって非常に重要な情報だよ。我々が知りたかったが、なかなか知り得なかった事が沢山含まれていた。本当にありがとう」

 ノアも、心の重荷を降ろせてホッとしていた。


「君の情報は、国家的最重要機密だ。君は、こんな重要な情報をひとりで抱えていたんだね。苦しかったろう?」

 ノアは、思わぬトゥルリー先生の優しい言葉に目頭が熱くなった。

「はい、誰にも言えず苦しかったです」


 トゥルリー先生は、立ち上がってノアの肩に手を置いて言った。

「これからは、心配しなくて良い。我々が君を守る。君の情報も守るから安心してくれ。軍の上層部だけには情報提供しないとならないけれどね」


「はい。よろしくお願いします」


「以前、君はレッドリオン公爵に会ったことがあると言ったね?」

 と、トゥルリーがノアに聞いた。


「はい。公爵閣下かがヒーリング術を使うところを拝見しました」


「そうか。レッドリオン公爵、アランは、私とマリアの学友なんだ。そして、今は軍の総司令官で執務大臣だ。彼が君の今、話してくれた情報を求めて東奔西走していたんだよ。是非、彼に会って私に話してくれたことを伝えてくれないか?」


 ノアは、あの素晴らしいオーラを持ったレッドリオン公爵にまた会えるのかと思ったら嬉しくなった。

「はい、もちろんです!」

 と、元気に答えた。


「おや、元気になったね。アランは人を魅了する男だからな。お前も惚れるぞ?」

 と、トゥルリー先生らしからぬ軽口を言ってノアを笑わせた。



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