表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Beyond of Cosmos =星巡りの物語=リゲル・ラナ編  作者: 詩紡まりん
『淀む光と影』=忍び寄る影= リゲル歴4045年

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/73

スチュアートリア帝国御前会議

 

 アランとウィリアムからの報告を受け、平素は各地の離宮を回っているアレクサンドル皇帝陛下も急遽、帝都のルデ・トロア宮殿に戻った。


 そして、大臣、軍幹部、貴族たちが集められて緊急の御前会議が開かれた。


 大臣や軍幹部の要職にある貴族も多く、それぞれが自分の職務を優先して着席した。

 執務大臣兼帝国陸海軍総司令官であるアランは、アレクサンドル皇帝、ウィリアム皇太子に次ぐ地位にある。


 帝国神聖力術士養成大学の校長でもあるカジミール・ランジューク・ヴァイオレット・フィールド宰相が開会の宣言をする。

 久しぶりの御前会議で参加者すべてが緊張していた。


 開会宣言の後、御前会議はアレクサンドル皇帝からの言葉で始まった。


「皆の者、多忙の中、集まってくれた事に感謝する。遠方から集ってくれた者も多いだろうが、今回は皇帝として直接、忠臣である皆の者と言葉を交わしたかったのだ」

 と、この緊急の御前会議の重要性を語り続けて言った。


「各領主の皆には事前に私の勅命として、不穏分子の確認と洗い出しの通達を出しが、確認は進んでいるだろうか?過去にないほど帝都内の各エリアで黒魔術と思われる者の怪しい動きが報告されている。今はまだ大きな実被害は無いが、小さな芽のうちに摘むことが大切だと考えておる」

 皇帝の言葉に一同皆が賛同した。


「私はこの広い帝国各地を回って、帝都から離れた者の声を直接聞く機会を設けているが、やはり、領主である諸氏の方が情報を掴むのは早かろう。帝都の状況についてはウィリウム説明を頼む」


 父アレクサンドル皇帝が地方での公務の際に帝都を預かっているウィリアム皇太子が、皇太子の元に上がって懸念事案の報告内容や帝都内での事件やについての説明をした。

 その後にウィリアム皇太子は、自分のHoly Powerによる予知について語った後にこう言った。

「ここにお集まりの方は、帝国の機密情報を共有する方々なので、さらに付け加えて報告しておきたいことがあります」

「皆様もご存じの通り、父と同様に私にも予知能力があります。少し前に私が、西方の森に不穏な動きを予知し、アラン総司令官に偵察に行って貰いました。やはり、その森には伝説の『赤い荒野の魔物』のように、何者かの呪術により魔物にされた狼がいたそうです。アラン総司令が全て退治してくれましたが、これはやはり黙認出来ない動きです」


 その時、プルース・カイザー・ブルーフォレスト辺境爵が手を挙げた。

「陛下、殿下、そのことについて追加の報告が御座います」


「ブルーフォレスト辺境伯、発言を許す」

 と、皇帝が言った。


「恐れ入ります」

 皇帝からの発言許可を貰ったブルーフォレスト辺境伯が言った。


「その魔物がいた森は私の治める領内でしたので、アラン様が帝都に帰還後、我々ブルーフォレスト家の者を総動員して呪術者を捜し出しました。その者は、パドラルからこの帝国に数年前に侵入した者のようで、『大黒主神教』という宗教を隠れ蓑にして活動していることを突き止めました。当領内の『大黒主神教』の教団施設に居た者たちを捕縛して尋問したのですが、彼ら自身にはたいした魔力もなく、魔導士レベルにも満たない者たちでした。どうやら主なるBlack(ブラック) Mage( マギ )は別にいて、その者が魔物を生み出したようでした」


 アランは、事前にブルーフォレスト辺境伯から報告を受けていたが、辺境伯の話を聞きながら、自分がインディゴ村やホワイトブランチ村で見見聞きした事や「インディゴ村事件」とも併せて考えていた。


 一方、レイマーシャロル地区のマルシェでのブルーフォレスト辺境伯の娘ポリアンナが狙われた事件の報告を受けているウィリアム殿下は、その事件との関係も疑っていた。


 その後、各地の領主や陸海軍基地の司令官が順番に報告をしていった。

 やはり、地域差はあるが、ちらほら『大黒主神教』教団という名前が出て来た。


 最後にアランが、父のレッドリオン大公に代わりレッドリオン公爵として、レッドリオン領内で視察した事も含めて報告した。


 レッドリオン公国は、ラファエル大公がまだ皇帝だった頃に『インディゴ村事件』としてBlack(ブラック) Mage( マギ )に狙われた過去がある。

 しかし、今回アランが視察した結果、今は一切そうした動きが無い。

 それは、Black(ブラック) Mage( マギ )達が一度失敗して懲りて避けている上に、現在のラファエル大公の対策が功を奏している結果であると思われる。

 そのラファエル大公から、各港の警戒を強めることと、その地域の軍事拠点の強化を提案されたことを伝えた。

 貴族と軍幹部の中にはラファエルが皇帝時代の忠臣だった者も多く、ラファエル皇帝の意見には重きを置いていた。


 一通り、各領主と軍部各責任者の報告を受けてアレクサンドル皇帝が言った。

「私が兄のラファエル大公と共に闘った『赤い荒野の闘』 でも、2回の『エド・プロ戦争』でも、裏で暗躍していたのはBlack(ブラック) Mage( マギ )だった。奴らは、獣に呪術をかけて魔物とし自分たちの手先としようとしていたが、それを人間にも使おうとしていた。それだけは絶対に阻止しなければならん!』

 と、言う皇帝の力強い言葉に、そこに居合わせた全員が頷いた。


 続けて皇帝は語った。

「皆の報告からわかった事は、やはり帝国外からの侵入者が各地に拠点を作り、帝国内で不穏な活動を繰り広げているらしいということだ」

「その活動拠点の代表的なものが『大黒主神教』という宗教教団と、その関連施設。彼らの目的に関してはまだ断言できないが、おそらく帝国を内から崩すことなのだろう」

「さきほどアラン執務大臣兼総司令官からの報告があったように、ラファエル大公からの提案に従って各港の警戒を強めて欲しい」


 すると『大黒主神教』教団の活動が顕著な地域の軍の司令官達から、いくつかの質問が出された。

 それは、

「教団の施設やその動きを監視するだけで良いのか?」

「その教団関係者を逮捕すべきなのか?」

「一般信者への対応をどうすれば良いのか?」

 と、いうことであった。


 するとアレクサンドル皇帝は、アランに意見を求めた。

「アラン帝国陸海軍総司令官としてどう対応すべきだと考えている?」


「私としては、黒幕のBlack(ブラック) Mage( マギ )の数は、それほど多くは無いと考えています。その者たちを各地で一斉に捕縛しないと逃げられてしまうと思うので、帝国内のBlack(ブラック) Mage( マギ )を一掃するタイミング計りたい思っています。ほとんどの信者は、Black(ブラック) Mage( マギ )とそれに連なる黒魔術師に惑わされているだけだと思うので、その後地域の方から批難されることが無いようにフォローも含めて対策を練りたいところです」

 アランは、続けて今回レッドリオン公国を回ってリサーチして知った『インティ後事件』後、事件に巻き込まれた村人のその後の悲劇についても語った。


 領民がその地に住めなくなることや、村人の分裂は領主にとって決して良い事ではない。

 ゆえに、領民のことも考えた事件の解決を目指さなければならないことを力説した。


 そのアランの力説に加勢するようにアレクサンドル皇帝が言った。

「アラン公爵の考えに私も同意する」

「私が450年前に体験した『赤い荒野の闘い』でも背後に居たのはBlack(ブラック) Mage( マギ )だったが、実際に動いていたのは、その配下のものでしかなく,すんでのところで逃がしてまった」

「その215年後の『エド・ブロ戦争』ではブロッサン国の軍部にまで入り込んだBlack(ブラック) Mage( マギ )が隣のエド・ロア王国への侵攻を指導していた。その間、200年以上の年月が経っているが、Black Mageでも300年以上生きる者もいる。あの時、シャバラリオのBlack Mageを捕まえていたら『エド・ブロ戦争』を防げたのか?と、思わなくもない。それだけに、今回は逃さず必ず捉えるべきと考えている」

 471歳のアレクサンドル皇帝の後悔は若い臣下たちの心にも刺った。


 そして、御前会議は、各領主の意見交換、軍部からの提案等、様々な議題が上がり昼休憩を挟んで、日が暮れるまで、各議題についての建設的な議論が繰り広げられた。


 最後にヴァイオレット・フィールド宰相による

「では、これで今回の御前会議を閉会致します。広大なスチュアートリア帝国の平和を維持する為に、今こそ皆のさらなる結束を!!!」

 と、言う掛け声に対する参加者全員の

「おー!!」

 と、言う掛け声で閉会となった。


 御前会議の翌日、アランは、軍の幹部と自分の信頼する臣下を集めて軍務会議を開いた。


「昨日に引き続き、集まって貰って済まない」

Black(ブラック) Mage( マギ )対策に関しては、概ねは昨日の御前会議で決まった内容を大枠にして、その地域に応じた対応をして欲しい。今回は、とにかく相手の動きへの対応が大切なので、各騎士に細かい事でも上に報告をあげさせ、それをまとめたものを速やかに軍本部参謀室のヴァイオレット・フィールド参謀長にあげてくれ」


Yes, sir(イエッサー)!」

そこに集った軍関係者全員が声を合わせて返事をした。


続けてアランは、皆に向かって言った。

「それと、これはまだ構想状態なのだが、スチュアートリア帝国空軍を作りたいと思っている」


初めて「空軍を作る」という言葉を聞いた者たちは、一様に驚き混乱していた。

なぜなら、この世界に飛行機というものは存在していなかったからである。

皆が騒めく中、アランは続けて言った。

「今回、私は、レッドリオン公国領内で鋼竜(スティールドラゴン)の繁殖地を見つけた。そして、色々調べた結果、鋼竜(スティールドラゴン)は馬と同じく、人間を乗せて飛ぶことが出来、調教も可能だと言うだった。使徒に向くかはまだわからないが、馬のように調教が可能なら空飛ぶ馬として活用し、ゆくゆくは、帝国空軍としてドラゴン部隊を作りたいと考えている」


アランの説明を聞いた軍関係者たちは、驚くと共に非常にワクワクもしていた。

空からの移動や偵察が可能になればむ、非常に便利になるからだ。

(ドラゴン)を使徒にしているブルーフォレス辺境伯が、遠く離れた領地から短期間で帝都に移動可能なのも(ドラゴン)のおかげだといことを皆も周知していた。


「そのプロジェクトリーダーとして、ブルーフォレスト辺境伯とその息子のオスカー・エンドリケ・ブルーフォレスト近衛騎士団長を任命した」

「ついては、このプロジェクトに参加してゆくゆくは帝国空軍ドラゴン部隊所属騎士となる者を募りたい。現在、陸海軍のどちらに所属している者でもかまわないので、適した人材を推薦して欲しい」

「もちろん、立候補でも良いぞ。但し、これは軍の極秘プロジェクトとして進めたいのでよろしく頼む」

 と、言うアラン総司令官からの話を聞いて驚く者もいたが、誰もが、これからのBlack(ブラック) Mage( マギ )との闘いを考えると、広いスチュアートリア帝国にとって必要なことだと感じていた。

また、Holy(ホーリー) Mage( マギ )White (ホワイト)Mage( マギ )の者の多くは、竜を乗りこなしてみたいと思っていた。


 ここにアランの空軍プロジェクトと、Black(ブラック) Mage( マギ )掃討作戦が始まった。


 空軍プロジェクトに関しては、鋼竜(スティールドラゴン)の繁殖地がレッドリオン領であることでアラン主導で進めることが出来た。

 また、代々、(ゴールド)(スケール)(ドラゴン)を使徒として来たブルーフォレスト辺境伯の父、現在、帝国神聖力術士養成大学で教鞭を執っているイーサン・バルナバーシュ・ブルーフォレスト先生は、『赤い荒野の闘い』や2回の『エド・ブロ戦争』で現皇帝と前皇帝であるレッドリオ大公と共に闘った旧知の仲であることは心強かった。

 その孫であるオスカーも、アランを慕う近衛騎士団長である。

 この三人に任せてあけば、このプレジェクトは上手くいくように思えた。

 アランも学んだ帝国神聖大の生徒で、使徒を使っていない者に鋼竜(スティールドラゴン)の幼獣を育てさせてみる試みも良いと考えていた。

 どちらにしも、長期プロジェクトになることは否めないだろう。

 それと並行して、港町の整備と新たな海軍基地配備を指示した。

 現在、スチュアートリア帝国内の陸軍基地と駐屯地は、帝国直轄地はもちろん、ほぼ全貴族の領地内にある。

 貴族の領地内の基地の司令官はその領主が担う為、貴族が反乱を企てたら大変なことになるが、彼らはHoly(ホーリー) Mage( マギ )White (ホワイト)Mage( マギ )なので、その心配はほぼ無い。


 スチュアートリア帝国がこれほど広大な国であり長年平和を維持できている秘密はここにある。


 まず、皇帝はHoly(ホーリー) Mage( マギ )しか即位できないこと。

 Holy(ホーリー) Mage( マギ )の大半が1000年近く生きるので、世継ぎ問題がおきにくい。

 国家プロジェクトを長期スパンで計画しても己の統治期間中にその結果を見ることができる。

無責任な政策をすると、その結果は数十年後に己に返って来るので、慎重にならさせるを得ない。

 次に領地を任せている貴族もHoly(ホーリー) Mage( マギ )であるという事も大きい。

神聖力(ホーリーパワー)は、魂に宿るもので、前星までに魂を磨いて生まれて来たからこそのHoly(ホーリー) Mage( マギ )でなれるので、今さら悪へ傾く心配が非常に少ない。

Holy Mageは、さらなる魂の向上を目指している者だからである。

 White (ホワイト)Mage( マギ )も歴史上、Black(ブラック) Mage( マギ )に対峙する者としており、その多くは少なからず神聖力(ホーリーパワー)を宿している者が多く、次星でのHoly(ホーリー) Mage( マギ )を目指している。

 そうした臣下に対して皇帝も常に感謝とリスペクトを持って接しており、ラファエルのように皇帝という権力にしがみつかない皇帝一族に対して、臣下の者たちも信頼し尊敬の念を持っていた。


 しかし、神聖力(ホーリーパワー)も魔術の力を持たない一般の国民の中には、不老不死のように見える皇帝や貴族に対して不公平感や不満を持つ者も居ない話ではない。

 そのような一般の国民に少しでも楽しく安心し、満足の出来る生活ができる環境を整えてあげることが貴族の役割である。

 そのために、アランもウィリアム皇太子も200歳を超えても尚、独身で日々国民の事を考えており、ウィリウムは執務に追われアランは日夜東奔西走していた。


 彼らの努力がどれだけの国民に伝わっているか、彼らの願いがどれだけ届いているかはわからない。

 恋にしろ、仕事にしろ、相手のことを想い必死に努力していても、その気持ちが伝わらないことほど悲しく空しいことは無い。

 それは、皇帝や王のような支配者でも、一政治家でもあっても同じである。

 現代でいうアイド(偶像)ルという存在も同じかもしれない。

 どんなに努力し、どんなに犠牲を払っていても伝わらない虚しさはみな同じである。


 しかし、彼らには彼らを尊敬し信頼してくれている臣下の者がいる。

 直接感謝を伝えてくれる国民もいる。

 だからこそ彼らも頑張れるのである。


 上に立つ者に文句を言うよりも感謝を述べる方が、自分たちを命がけで守ってくれることもある。

 何も持たない国民こそ、それを忘れない事である。

 少なくともスチュアートリア帝国はそんな国であった。




挿絵(By みてみん)


スチュアートリア帝国の紋章

元々は、皇帝の使徒である鷹のみをあしらった紋章だったが

『赤い荒野の闘い』を機に

西を守る竜、東を守るライオンを加えて

新たに作り直された。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ