「邪悪な魔導士」と「インディゴ村事件」
ミラ・ローズに戻ったクリスとアンナは、寮の談話室に居た。
談話室には、他にも数グループが居たのでザワザワしている中、ふたりは、ルートドリアナ地区で籠一杯に買ってきた果物を寮生たちに分けて残った分を食べようとしていた。
食堂は、まだオープン前なので、ここでマエルとノエルの為に買った干し肉を食べさせてあげるためである。
ちなみに、談話室での飲食は自由である。
アンナは、干し肉を細かく切って入れたお皿と、お水の入れたお皿を1つずつ二匹の前に置きながら、
「今度は鮮魚や新鮮なお肉が並ぶマルシェに行こうね」
と、言った。
「それは、いいねぇ。僕らも美味しい焼き魚とステーキを食べよう」
と、クリスも言った。
ノエルとマエルは、干し肉を食べながら嬉しそうに尻尾をピンと立てた。
「もちろん、マエルも一緒だよ」
と、クリスが言うと
「ノエルもよ!」
と、アンナも重ねるように言った。
二匹の尻尾が、嬉しそうにゆらゆらと揺れた。
そこに、ふたりの女子生徒が談話室に入って来る気配がして、クリスとアンナが振り返った。
そこには、リリアーナとアイラの姿があった。
「クリストファー先輩!」
「アンナ先輩!」
「キース寮長から、ふたりが談話室に居るから行ってみるように言われたんですが…」
リリアーナとアイラは、何か大事な用事かと真剣な顔でふたりの先輩を見た。
「さっきね。ふたりを捜したんだけれど見つからなかったのよ」
「だから、キースにも聞いてみたんだ。伝わったようで良かった」
リリアーナとアイラが、ふたりに何を言われるのかとドキドキしていると
「間に合ったわね。はい。どうぞ」
と、アンナがふたりの両手に果物を乗せてくれた。
「ふたりが見つからなかったら、私達で食べちゃうところだったのよ」
甘いフルーツの香りがふたりを包んだ。
幸せの香りだった。
「今日、街で新鮮なフルーツジュースを飲んでね。あまりにも美味しかったから、フルーツを買ってきたんだよ」
「あなた達にも食べさせてあげたかったの」
クリスとアンナは、にこにこしながら言った。
リリアーナとアイラは、ふたりの先輩の気遣いに感動していた。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます。嬉しいです」
「先輩たちは、今回の休日もマルシェに出かけられたんですか?」
アイラは、あんな怖い事があった後なのにと思って聞いてみた。
「今回はレイマーシャロル地区ではなく、寮から近いルートドリアナ地区へ行ったのよ」
「あそこは、レイマーシャル地区と違って小さな固定店が多いし、治安も良いからね」
と、アンナとクリスが言うとアイラもホッとしていた。
リリアーナは、三人の会話を聞きながら、マエルとノエルが干し肉を食べる様子を見ていた。
「今回はね。マエルとノエルの経験値を上げるためでもあったのよ」
アンナは、使徒を見つめているリリアーナを見て言った。
「えっ、そうなんですか?」
リリアーナは、三人の話を聞かずにマエルとノエルにみとれていたのがバレたかと焦っていた。
しかし、アンナはそんなことを気にも留めずに言った。
「使徒の能力は、主人であるHoly Mageの能力と同期されるんだけれど、その力は、その力を必要とする環境や状況にならないと発動されないみたいなの」
「俺たちは、Holy Mageとしての能力はある程度身に付けたとは思うんだが、実際の生活、実戦でどう使えるのか、どう使うべきかまで理解できていないと思うんだ。だから、使徒と共に経験を積む為に街に出ることにしたんだよ」
と、クリスが言うと
「そうなのよ。それで早速、今日、収穫があって喜んでいるところなの」
と、アンナが嬉しそうに言った。
ノエルとマエルも、誇らしげであった。
まだ、White Mage見習いのリリアーナとアイラではあったが、先輩たちの話は非常に勉強になる。
White Mageの白魔術は、知識と鍛錬で向上することは出来るが、Holy Mageは自らの魂に宿る神聖力を引き出さなければならない。
それには、知識や鍛錬だけでなく、己の魂を磨き経験を積む必要があると聞いている。
それを実践している先輩をリリアーナは尊敬のまなざしで見つめた。
アイラも好奇心満々でアンナのいう収穫がなんなのかを知りたいと思った。
「先輩!!収穫って何ですか?このフルーツだけじゃないですよね?」
アンナは、笑いながら
「まさか!収穫はこの子たちよ」
と、ノエルとマエルを見つめて言った。
二匹は、干し肉をたいらげて水を飲み満足げに主人を見上げていた。
「マエルと俺は、精神感応で会話ができるようになったんだ」
「ノエルも精神感応と、思考操作術の合わせ技を使って、自分の存在を消してみせたのよ」
と、クリスともアンナは自分たちの使徒の成長を自慢げに話した。
主人に自慢された使徒たちもとても得意げそうな顔を見ながら、リリアーナとアイラは羨ましくなった。
「私たちも、自分の使徒とそんな関係になりたいです」
リリアーナが言うと、アンナが
「使徒の力は、主人次第だから、あなた達も頑張ってね」
談話室から楽しそうに話している四人の声に引かれたように、キースが談話室に入って来た。
「やあ、みんな楽しそうだね」
「あ、キースありがとう」
「ふたりに無事にお土産を渡せたわ」
「うん。僕も混ぜて貰えるかな?」
「もちろんよ」
キースも四人の輪に加わって座った。
「楽しそうな声が聞こえて来たから、僕も参加したくなっちゃったよ。なんの話をしていたの?」
クリスとアンナは、自分たちの使徒の成長を感じたことをキースにも話した。
「ノエルが今日発揮した力も、私が今練習していてマスターしたばかりの術だったので、びっくりしたのよ。それだけに嬉しかったわ」
「そうか、使徒の成長は自分の成長でもあるからね。使徒は自分の写し鏡でもあるから二重に嬉しいよね?」
と、キースも共感した。
まだ、使徒を使えないリリアーナとアイラはそんなにすぐに使徒に反映されるんだなと少し驚いた。
それと同時にリリアーナが、使徒が新しい能力を発動するような事件があったのかと、ふと不安になって聞いた。
「今日も何か事件があったんですか?」
アンナがリリアーナの不安そうな顔を見て言った。
「今回は、事件というか事故かな?」
アンナとクリスは、自分たちの使徒が看板の落下を知らせて大事故になるのを防いだのと、産気づいた妊婦を運んだこと、妊婦の迷子になった子供たちをノエルとマエルが連れて来たことを話した。
リリアーナとアンナは、改めてノエルとマエルの頭を撫でながら
「凄いね~」
「活躍したね~」
と、褒めたたえた。
使徒たちも得意そうだったが、彼らの主人の方が得意げだった。
「でもね。ちょっと心配なことも小耳に挟んだのよ」
アンナがキースに向かって真剣な顔で語りだした。
「帰りの馬車の中で、White Mageの護衛騎士の方にも報告したので、もう軍の方にも届いてると思うんだけど…」
と、食事に立ち寄った店の窓辺で、横を歩く人たちの会話から耳にした気になる事をキースにも話した。
「そうか…。帝都にまで」
キースは、少し考え込んでからおもむろに口を開いた。
「先日、実家に長期帰省した際に、父ともゆっくり話をすることが出来たんだ。その時に、ラファエル皇帝時代のラングレー家について改めて聞いたんだ」
キースの話にアイラが少しだけビクンと反応した事をアンナとクリスは見逃さなかった。
「レッドリオン領での話は、僕の生まれるずっと昔、今から230年もの前の話だからね。でも、それが第二回エド・ブロ戦争の四年前の出来事で、それがエド・ブロ戦争への予兆だったみたいなんだよ。あそこで父が、食い止めていなかったら西はブロッサンから東はレッドリオン領からBlack Mage達が侵略して来たかもしれないらしい」
「ラングレー子爵は、素晴らしい活躍をされたのね」
アンナがキースの父を褒めたたえた。
「それが、今回の事に関係ありそうなのかい?」
クリスがキースに聞いた。
「今の状況が、父の話と似ている気がしてね」
「キース、私達が『インディゴ村事件』について聞いても良いのかしら?」
「うん、僕は話しても構わないけれど、君たちは聞きたい?」
キースも、アイラの反応を気にしていた。
リリアーナは、興味津々に
「聞きたいです!!!」と答えた。
アイラも小さく
「はい」と、答えた。
インディゴ村の出身で、帝都へ家族で移住しているアイラは、何か話せない事情があるのではないかと先輩たち三人は思っていた。
それでも、アイラは意を決したようにその場を離れずに、話を聞くことを選択したので、キースも話すことにした。
キースの父が皇帝の命を受けてレッドリオン領のインディゴ村に派遣されたのは、3815年。
今から230年前のことだった。
当時、帝国陸軍の少佐でWhite Mageだったクライ・ラス・インディゴ・ラングレーは、まだ独身で、血気盛な勇気ある騎士であった。
White Mageとしても優秀で帝都の護衛騎士の任務に就いていた。
そんな時、皇帝であったラファエル陛下に呼び出された。
弟のアレクサンドル殿下が、レッドリオン領のインディゴ村で不穏な動きがあることを予知したので、偵察に行って欲しいとのことだった。
ラファエル皇帝として即位して以来、帝国指導の公共事業としてレッドリオン領の灌漑工事、開墾・開拓が行われた。
その帝国が推進する公共工事携わった者の中には、家族を呼び寄せ、そのまま移住する者も多かった。
皇帝もレッドリオン領に入植希望する者を帝国内から募り、計画な町づくり、村づくりが行われていた。
レッドリオン領は長年、『赤い荒野』と呼ばれるほどの不毛の土地であり、「赤い魔物」と呼ばれる魔物が住む魔の『赤い魔の荒野』と恐れられるようになってからは、さらに人が寄り付くことはなかった。
その赤い荒野の周辺の森には多くの魔物が住んでいた。
魔物といっても、人間を脅かすような凶暴なものはおらず、わずかに捕食のための魔力を使うことで、普通の動物とは一線を画している程度のものだった。
さらに、レッドリオン領が『赤い荒野』と恐れられてい時代には、周囲の森にも近寄る者がおらず、その周辺の土地にも住む者がいな時は何の問題にもならなかった。
だが、レッドリオン領が荒野から人の住める場所となり入植者も増えた頃から、禁忌の場所だった土地にも人が立ち入るようになった。
当初は、魔物と言われていても人害が無いので村人も恐れずに暮らしていた。
しかし、そこに魔導士が住みついて魔物たちを利用しようした事で状況が一変した。
その魔導士たちの魔力により、邪悪化した魔物たちがじわじわとレッドリオン領を侵害するようになったのだ。
アレクサンドル殿下が予知した時には、ちょうど魔導士が魔物たちで実験をしていたのである。
= レッドリオン公国グランドリオンパレス
マリオン城内 大公専用晩餐室 =
キースが『インディゴ村事件』についてリリアーナに語っていた頃、時同じくして、レッドリオン公国のマリオン城では、ちょうど、ラファエル大公が息子のアラン公爵に『インディゴ村事件』について語っていた。
「確かにあの魔物たちの凶悪化は、インディゴ村の外れに住み着いていた魔導士たちの仕業なんだが、彼らの目的がなんであったかまでは、わからない」
と、ラファエル大公が言った。
「父上、それは魔導士であってBlack Mageではなかったのですか?」
「そうだな。確かにBlack Mageとは言えないのは、Black Mageならもっと派手な魔術を使っているはずだと思ったからなんだ。」
「と言いますと…」
「魔術で人を惑わすことから始まり、徐々に村人の心に入り込んで行く。おそらく、魔物を凶悪させたのは、魔物に村人を襲わせるとか、帝国を脅かすためというよりは、その魔物に怯えている村人を自分たちが救うことで、村人に自分たちの力を見せつけ、信じ込ませることだったのでは無いかと思っている」
ラファエル大公は、当時を思い返していた。
「当時は、私も皇帝として帝都に居て政務を行っていたので、東の果てのレッドリオン領に直接様子を見に行けず、歯がゆかった」
「お気持ちお察しいたします。その頃、私がいれば・・・」
と、アランが言うと、父ラファエル大公は笑いながら言った。
「そうだな、お前はまだ5歳だ。さすがに無理だったな」
「そうですねぇ。その頃は、私も鼻たれ小僧でしたかね」
と、アランも笑い返した。
「だから、当時、帝国護衛騎士団の中で、信頼できるWhite Mageのラングレー少佐に偵察遠征を頼んだんだ。彼は本当にWhite Mageだったが非常に優秀で、実直で真面目で、最も信頼できる騎士のひとりだったんだ。当時はまだ独身で身軽だったしな」
「危険が予測される任務には一般の騎士や幼いお子さんの居る者を派遣するのは嫌なんですよね?」
と、マリエッタ大公妃が言った。
「そうだな。実際に戦争になった時は、そうは言っていられない事態もあるだろうが、私の代わりに派遣するのだから、そこは人選を考慮するな」
ラファエル大公は、自ら危険を顧みず率先して挑む皇帝であったが、家臣に対しての配慮は細やかであった。
そこはアランも父に似ていた。
「ラングレー少佐は本当によく活躍してくれた。一ヶ月以上ひとり村に住み込み村人に馴染んで情報収集し、魔物の凶悪化が魔導士の仕業だと断定したんだ。そして、魔導士たちが村人を取り込むために教祖としておかしな宗教も広めていたのも突き止めた」
「それは、どんな宗教だったんですか?」
「魔導士になって生活を便利にし、力を手に入れて、我々Holy Mageのように長生きしようというものだった」
「一般の人々にはWhite MageやBlack Mageの知識はあってもHoly Mageについては知られてないですよね?これは帝国の最高気密ですから」
「そうなんだが、White Mageでも、一般の人の5倍は長生きする者も多いし、我々がそのWhite MageらりGradeが高いから、さらに長生きしているという認識なのだ。そこでWhite MageよりGradeが高いというで、Grate Mageと呼んでいるらしい。まぁ、呼び名はどうでも遠からず近からずだがな」
「Grate Mageですか!奴らの中では、そう呼ばれていることは覚えておきます。それで、その後はどうなったのですか?」
アランは、今、自分が直面している問題と似ているような気がしていた。
「魔術を覚えて魔術師になることそのものは決して悪ではないし、その力を使って占いをすることも悪ではないが、それによって金子を得ることは違法だからな」
「むしろ、魔導士がWhite Mageになって国に貢献して欲しいくらいですからね」
「だが、やつらは、その力を利用して、人を惑わし害を及ぼすから取り締まざるを得ないのだ。しかも、やつらは、依存性のある魔法の薬草を使った巻きたばこを使って、村人を自分たちの思うとおりに動くように洗脳しようとしていた」
「時期的に第二回のエド・ブロ戦争の数年前ですね」
と、マリエッタが言った。
「そうだ。第二回のエド・ブロ戦争の時もブロッサン国で暗躍していたのは、Black Mage達だった。もしかしたら、その仲間だったのかもしれん」
「インディゴ村から帝国にダメージを与えようとしていたのかもしれないですね」
「そうだ。だが、ラングレー少佐がそれにいち早く気付いてくれたおかげで、魔導士たちを一網打尽にし、魔物たちの解呪もできて難を逃れことができた」
「ラングレー少佐には感謝ですね」
「彼は、インディゴ村に住み込んで、村人の信任も得ていたからその後の村の立て直しの中心としても活躍してくれた。当時は、一騎士でしかなかったが、その貢献に感謝の意を込めて、子爵の爵位を与えインディゴ村を含むその一帯を領地として与えたのだ」
アランは、ここでふと疑問に思って父に尋ねた。
「でも、今はあの辺りは、ラングレー家の所領では無いですよね?」
息子の言葉を受けて父は、当時のラングレー少佐の顔を思い出しながら言った。
「あいつは、本当に欲の無い男でな。私がレッドリオン領を公国として建国することを計画していた時に自分の領地を帝国に返還すると申し出て来たのだよ」
「確かに、あの一帯だけレッドリオン領から外れると管理上は、帝国領になるので飛び地になってしまいますね」
「だから私はラングレー子爵の好意を受け、その代わりに今のラングレー領地を与えることにしたのだ」
「そうだったんですか、知りませんでした。子爵は、今は軍に籍を置いてないようなので残念です」
「そうなんだ。一般の女性と結婚をしたらしいんだが、その女性の産後の肥立ちが悪くてな。それを期に、軍を退職して自領の領主としての仕事に専念しているのだ。今、その時の息子が帝国神聖大に在籍しているらしい」
=ミラ・ローズ寮、談話室=
「父がインディゴ村周辺の領地に居たのは、50年間くらいらしい」
「キースのお父様は、インディゴ村に住み込んで村人からの信頼も得ていたからこそよね?」
と、アンナが言うと、クリスは今日自分たちが耳にしたことを思い出して言った。
「でも、なんだかその当時の出来事を聞いていると、今日、ルートドリアナ地区で耳にした事にも似ている点があって怖いな」
と、クリスが言うとキースもアンナも頷いた。
「僕もそう思ったよ。今度、父にも相談してみようと思う。父は、僕が生まれてすぐに、病弱な母のために軍人を辞めてしまったから直接は動けないだろうけれど」
「経験に勝るものは無いから、キースのお父様の経験はきっと役に立つわよ」
「そうだな」
「父は、レッドリオン公国内の領地から離れても、インディゴ村やその周囲の村人のことは気にかけていたらしい。特に、魔導士たちに洗脳されていた人たちは、他の村の者たちから魔導士の仲間扱いされて迫害されていたらしいから」
「そんな事が…。その人たちも被害者なのにね」
アンナがそう言うと、アイラは目に涙をいっぱい溜めて言った。
「あのう…私の祖父母もそれで、村の人に非難されていたみたいなんです」
アイラがインディゴ村の過去について怯えていた理由が明かされた。
「祖父母が、その魔導士たちの宗教みたいなものに入信して、父を魔導士にしようとしてたみたいなんです。でも、父は、嫌だったみたいで…」
アイラは、半べそをかきながら話し出した。
「それで、別の村に逃げ出した時に母と出会ったみたいなんです。母が私も身ごもった時にインディゴ村に戻ったんですが、やはり肩身が狭かったようで祖父母が無くなったタイミングで帝都に出てきました」
「そうだったんだね。つらい事を思い出させてしまって悪かったね」
キースが優しくアイラに言った。
アイラは、泣きながら言った。
「ううん、キース先輩は全く悪くないです。私も、みんなに話したかったけど話せなくて…やっと…心のが…楽になり…まし…た」
泣きじゃくるアイラの肩を抱いてリリアーナが言った。
「私も『インディゴ村事件』を耳にしたことはあったけど、私達の生まれるずいぶん前のことだから…気づいてあけられなくてごめんね」
アイラは、リリアーナに抱き着いて泣きじゃくった。
「いいの、誰も悪くないから。私がひとりでうしろめたさを持っていただけだから」
と、しゃくりあげるアイラの頭に優しく手を置いてアンナが言った。
「きっと、インディゴ村でつらい思いをしたのね。でも、その経験は決して無駄にはならないわ。人は、痛みを知って他人の痛みも理解できるようになるものよ。神聖大学の人たちは、皆優しいから、ここではそんな経験をする機会も無いでしょう?」
「はい、ここでは、本当にみなさん良くしてくれます。ここに来てからは、一度も嫌な思いをしたことが無くて、本当の自分になれた気がしています」
と、アイラが言うと
「私もです。以前は、学校へ行くのも怖くて、村の人と話すのも不安でしたが、ここに来てからは大学でも寮でもみなさんが良くして下さって本当に感謝しています。ありがとうございます」
と、リリアーナは先輩たちにお辞儀をした。
「帝国民みんなが、この大学の人のようならみなが幸せになれるのになぁ」
と、クリスがつぶやいた。
そこに居合わせた全員が、それに賛同した。
スチュア・トロア大陸地図
◆ ◆ ◆ ◆
用 語 整 理
◆ ◆ ◆ ◆
リゲル・ラナ星は、魔法が生きている星である。
魔法とは、異なる神聖力(Holy Power)が存在する。
【神聖力】
神聖力は、宇宙全ても司る力で宇宙全体に存在する。
【Holy Mage】
神聖力を活用できる者をHoly Mageと呼ぶ。
神聖力は、その者の魂に宿る者で、能力差がある。
【White Mage】
白魔術を使う者を白魔術師と呼び、その力を極めた者をWhite Mageと呼ぶ。
白魔術は、魔法の中でもライトエナジーを活用するものメインである。
特に人を治癒したり、自己治癒力を高めたり、癒したりする力がある。
【Black Mage】
黒魔術を使える黒魔術師と呼び、その力を極めた者をBlack Mageと呼ぶ。
黒魔術は、魔法の中でもダークエナジーを活用するものメインで、攻撃性が高く、呪術と呼ばれる呪いを用いて人を殺めたり、魔物を強化させることが出来る。
【魔導士】
魔法を使える者の総称で、この中に白魔術師も黒魔術師も含まれる。
【Grate Mage】
神聖力を使いこなせるHoly Mageは、それほど数は多くなく、スチュアートリア帝国内にしかいない。
それゆえにHoly Mageの存在は、一般人には知らせておられず、優れた魔法使いという認識でGrate Mageと呼ばれている。
つまり、Grate Mage =Holy Mage として使われている。




