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Beyond of Cosmos =星巡りの物語=リゲル・ラナ編  作者: 詩紡まりん
『淀む光と影』 =Mageと呼ばれる者たちの苦悩= リゲル歴4045年

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スチュアートリア帝国の宝 = Holy Mage=


 オスカー達は、怪我を手当してやった男が自分の店まで、無事に送り届かれたのを確認し、アンナとクリスとはそこで別れた。


 リリアーナとアイラは、休みの日にも一緒に居るなんて、あの先輩たち本当に仲が良いなぁと思っていた。


 そして、ポリアンナ、リリアーナ、アイラの三人娘は、気を取り直して買いたかったものを買いながら来た道を戻った。

 リリアーナは、金と銀の刺繡糸を買った。

 アランの使徒のルークから借りたハンカチにアランの名前を刺繍して返したいと思ったからだった。


 オスカーや警備の騎士たちの監視の目が厳しくなる中、三人娘は、レイマーシャロル地区のマルシェを出た。

 レイマーシャロル地区をぐるりと囲む城壁の外には、ブルーフォレスト家からの迎えの馬車が待っていた。

 ポリアンナに続いてアイラが馬車に乗り込み、その後に続いて馬車に乗ろうとそのステップに足をかけたリリアーナの耳に、聞き覚えのある声が聞こえた。


「えっ?」

 と、リリアーナが振り返ると、そこにはアランの姿があった。


「アラン様!!」


 リリアーナは、あまりの衝撃に時が止まったかと思った。

 そして、乗りかけていた馬車から慌てて降りようと、前のめりなった体を後ろにねじって方向変換しようとして、足を掛けていたステップから足を滑らせた。

 そのままよろけて落ちる!と思った瞬間

「おっと!」

 と、言う声と共にアランの腕が、がっしりとリリアーナを受け止めてくれた。


「あんなに距離があったのに?」

 と、驚くリリアーナに

「相変わらずおっちょこちょいだなぁ、リリアーナ」

 と、笑いながらアランが言った。

 あんなに聞きたかったアランの優しい声が、リリアーナの頭の上に降って来た。


「アラン様…」


 リリアーナは、アランに抱きかかえられたまま地面にそっと立たされた。

 まだ、夢心のリリアーナは泣きそうになりながらアランを見つめた。


「なんだ、そんなに怖かったのか?」

 アランは、リリアーナが今日の出来事で怖がっているのか、馬車から落ちかけて怯えているのか、その両方かと思っているようだった。


 リリアーナは、怖いとかそんな気持ちはこれっぽっちも無く、ただ、ただ、しばらく会えないと思っていたアランに会えたことが嬉しくて、涙が溢れそうになっていた。

「違います!! しばらくアラン様に会えないと思っていたので…びっくりして…」

 リリアーナは、真っ赤になりながら、必死で答えた。

「そうか、驚かせてしまったか!」

 と、アランはリリアーナの頭に優しく手を置いて言った。


「私も、またしばらくリリアーナの顔を見られないと思っていたから、元気そうで安心したよ」

 リリアーナは、「驚いたとか、そんなのだけじゃないのに…」と、思いながらも自分の複雑な感情を表現することは出来なかった。

 200歳以上年上のアランに14歳の乙女心を伝えるのはなかなか難しい。

 アランにも、そんな乙女心を察する器用さは持ち合わせてなかった。

 トゥルリ―が居たなら、これだからアランはと言われているところだ。


 あんなに夢見ていたリリアーナのアランとの再会だったが、文字通り一瞬の出来事だった。

 アランはすぐに仕事モードになり

「それではオスカー!あちらで報告してくれ!」

 と、自分の馬の手綱を従者に任せて、オスカーと共に建物の奥に消えて行ってしまった。

 オスカーの連絡を受けたアランが、レッドリオン公国へ向かう前に状況確認に立ち寄ったのだった。


 リリアーナは、アランに話したいことがたくさんあった。

 しかし、忙しそうなアランの姿を見て、それは叶わないということを悟っていた。


 リリアーナは、しょんぼりしながら馬車に乗った。

 先に馬車に乗っていたポリアンナとアイラが、リリアーナを迎えて言った。

「だいじょうぶリリアちゃん?」

「うん、だいじょうぶよ!」

 リリアーナは、ふたりに気持ちを悟られたくないので元気に答えた。

 本当は、アランに会う前よりもアランが恋しくなっていた。


 アランは、オスカーから報告を受ける、オスカーに指示を与えて、そのまま帰ろうとしていた。

 ただ、リリアーナの怯えたような顔を思い出し、馬に乗ってからブルーフォレスト家の馬車に近づいて言った。

「リリアーナ、何かあったらいつでも連絡しなさい。大学の寮の棘竜《スパインドラゴン》便でも私の元には届く!」


 リリアーナは急いで窓を開けて顔を出した。

「アラン様、今度はいつ帝都にお戻りですか?」

「それは、まだわからん。これからこのままレッドリオン公国へ向かうんだ」

「あの、わたし、今、使徒候補のふくろを飼いだしたんです。早くわたしもHoly(ホーリー) Mage( マギ )になって、使徒になって貰えるようにがんばります」


 アランは、馬車の窓から顔を出したリリアーナの頭をそっと撫でながら言った。

「そうか!それは楽しみだな」

 リリアーナは、アランの笑顔に本当に泣きそうになっていた。


「では、行って来る!!みんなも気をつけて帰りなさい」

 馬の踵を返しながらアランが言うと、リリアーナはいつになく大きな声で言った。

「アラン様こそ、お気をつけていらして、元気に早く帝都にお戻りください!!」


 オスカーや他の騎士たちもアランに敬礼をして見送っていた。

 アランは、そんな皆に軽く手を振り、ひとり愛馬に乗って走り去って行った。

 リリアーナは号泣したいところだったが、目の前に居るアイラとポリアンナの視線を感じてぐっと感情を抑えていた。


 するとポリアンナが、そっとリリアーナの手を握って言った。

「良かったね、リリアちゃん。一目でもアラン様に会えて」

「うん…。アラン様は、私の恩人だし、わたしの親代わりのような方だから」

「わかるわ。アラン様は包容力ありますものね」

 ポリアンナは、アランの「黒い森の遠征」の際に、プルーフォレスト城で数日間共に過ごしたので、アランのHoly(ホーリー) Mage( マギ )としての人柄に魅了されたひとりだった。


 そこに、アランへの報告を終え、配下の騎士たちに指示を出し終えたオスカーが馬車に乗り込んで来た。

「今日は、みんな驚かせてしまったね。せっかくの休日なのに怖い目に合わせてしまってすまない」

 と、オスカーが言った。

「いえ、オスカー様こそ、休日なのにわたしたちお付き合い下さったばかりに、お仕事になってしまってすみませんでした」

 と、アイラが言った。


 リリアーナも一緒に頭を下げたが、アランに会えたことが嬉しくて、頭の中がそれだけでいっぱいで、オスカーになんといえば良いかわからなくなっていた。


「いやいや、君たちはポリアンナと一緒だったがために巻き込まれたのかもしれない」

「そうなのよ、ごめんね」

 と、ポリアンナが言った。


「えっ?そうなの?」

 と、アイラが驚いて言うと

「うん、私がプルーフォレスト辺境伯家の娘だから…」

「我が家は、恨みを買いやすい家なんだよ。この馬車で来たのかまずかったかもだな。屋敷からつけられていたのかもしれない。今度は辻馬車で来ような?」

 と、オスカーが言うと、すっかり落ち込んでいたポリアンナが

「えっ?また連れてきて下さるの?お兄様!」

 と、驚いて聞き直した。


「もちろんさ、こんなことで諦めてたら、ポリーは一生街中に出られないぞ?」

「そうだわ!そんなの嫌よ!剣さえあれば、あんな奴ら叩きのめす自信があるわ!!今度は剣を持って来ることにする!!」

 ポリアンナは、拳を握り締めて勢い込んでいた。


 すると、どう応じて良いか困っていたリリアーナとアイラも

「わたしたちも、自分身は自分で守れるくらいにはならないとね」

「うん!うん!」

 と、ポリアンナの勢いに合わせて気合いを入れた。


「それにしても、ポリアンナちゃんのヒーリングの魔法はすごかったわ!」

「あれはね。完全に治してしまうわけにもいないし、でも、放置していたら出血多量で死んでしまうところだったし、周りの人に気づかれないようにやらないとだったから、加減が難しかったのよ」

「そうだったの?」

「お兄様の判断で、出血量と刺された位置から、内臓の損傷具合を予測してくれたので、内臓と太い血管の傷だけを塞いで、表面の毛細血管の傷は残す程度に治したの」

「そんな難しいことを!」

「私ひとりだったら、もっと時間もかかっていたし体力負けしたかもだったけれど、アンナ先輩が協力してくれたので、ギリギリセーフって感じだったわ」

「そうだったのね!だとしてもポリーちゃん凄いわ!!」

 リリアーナもアイラも、初めて見た本格的なヒーリング魔法に感動していた。


「あと、周囲に気づかれないように魔法を使うテクニック、オスカー様の魔法も素晴らしかったです」

 と、アイラがオスカーに言った。

「いや、今回の俺は全て後手後手に回ってしまってカッコ悪かったよ。反省している。今度は細心の注意を払って、奴らを捕獲するつもりで臨むぞ!」

 と、兄妹ふたりしてリベンジに燃えていた。

 やはり、先祖代々、隣国との国境である辺境領を守って来た騎士の血が燃える兄妹のようであった。


 なんだかんだあったけれど、三人ともそれはそれで楽しい一日だと思っていた。

 しかも、事件があったおかげでアランに会えた。


 アランにしても、オスカー、アンナ、クリスにしても、やはりHoly(ホーリー) Mage( マギ )という人たちは温かくて頼もしい。

 リリアーナもアイラもWhite (ホワイト)Mage( マギ )で留まらず、Holy(ホーリー) Mage( マギ )になりたいと心から思っていた。


 プルーフォレスト邸に戻ると、ライナスとロザリーが待っていた。

 Holy(ホーリー) Mage( マギ )になれば、この子たちが使徒になってくれる。


「ねぇ、ライナス?」

 リリアーナは、ライナスに聞いてみた。

「ライナスは、このままペットでいるのと、使徒になって私との為に働くのとではどっちが良い?」

 ライナスは、小首を傾げながら考えていた。


 ふくろうは、森の賢者と呼ばれるほど賢い鳥である。

 しかし、ライナスは、まだ経験値も少ない雛同然の幼鳥である。

 リリアーナの言葉は理解できたが、その意味まではよくわかっていないようだった。


「ごめんね、ライナス。ライナスにとっては、どちらが幸せなんだろう?」

 リリアーナは、難しい質問をしちゃったかな?と思っていたが、ライナスは少し考えてから

「一緒がいい!ずっとリリアと一緒!!」

 と、答えた。


 同じ部屋で、リリアーナとライナスのやりとりを見ていたアイラも、ロザリーにそっと聞いてみた。

「ロザリーは?」

 すると、ロザリーは考える間もなく

「ずっと一緒がいい。一緒が幸せ!」と、答えた。


 リリアーナも、アイラも、この子の達と一日でも長くいるには、やはりHoly(ホーリー) Mage( マギ )になるしかないと思った。


 さて、クリスとアンナのふたりの方であるが、ふたりも今日の出来事に少し驚いていた。

 ただ、ふたりで古くなった日用品を替えかえるつもりで、久しぶりにレイマーシャロル地区のマルシェへ繰り出したのに、こんな事になるとは思ってもみなかったからである。

 ミラ・ローズ宮の護衛を巻いて群衆の中で、ふたりきりになったと思ったらスリに遭遇してしまった。

 そして、偶然にも後輩を見つけて手を振っていたら、プルーフォレスト先生の孫のオスカー先輩も一緒だった。

 しかも、あれだけの群衆中で、神聖力(ホーリーパワー)を使ったとバレないように瀕死の男性を助けるという、かなり至難技の手助けまですることとなった。


 もちろん、帰りの馬車の中では、ふたりが巻いたミラ・ローズ宮の護衛騎士から小言を言われた。

 寮に戻ったら、またしっかり叱られるのだろうと思っていた。


 しかし、そんなお小言を言われ、帰ったらお説教が待つだろう馬車の中でも、クリスは上機嫌だった。

 なぜなら、噂の帝国防衛近衛騎士オスカー・エンドリケ・ブルーフォレス団長に

「近衛騎士団に来い!」と、誘われた事が嬉しくて仕方なかった。


 アンナもブルーフォレスト先生の孫兄妹のHoly(ホーリー) Mage( マギ )としての力を見せつけられて感動していた。

 神聖力(ホーリーパワー)は経験値で磨かれるものなので、今日一日だけ、かなり成長できた気がしていた。


 そんなふたりなので、寮に戻ってミラ・ローズ宮の護衛騎士団長室に呼ばれた時には、しっかり覚悟が出来ていた。

 言い訳する気など全くなかった。


 が、意外にもミラ・ローズ宮の護衛騎士団長グレン・ライズ・アードラント卿に叱られることはなかった。

 むしろ、「ふたりとも、機転を利かせてよくやったな」と、褒められた。


 ミラ・ローズ宮の護衛騎士は、帝国軍近衛騎士団から派遣されている。

 彼らもオスカーの部下や同僚なのである。

 既に、今日の出来事はオスカーからの連絡が届いるようで、ふたりの活躍は、ミラ・ローズ宮の護衛騎士たちにも伝わっていた。

 唯一、叱られたのは、群衆を楯にして護衛騎士を巻いたことだけであった。


「そりゃあな、若いふたりだから、監視されずに、いちゃつきたい気持ちは分かるがな。ルールを守ってくれないと外出許可も出せなくなるぞ」

 と、アードラント護衛騎士団長に言われた。


 クリスとアンナし、単に監視を巻くという子供じみたいたずらを楽しんでいたつもりだった。

 なのに、「ふたりきりで、いちゃつきたかった」と言われ、改めて恥ずかしくなっていた。

 そんなつもりはサラサラなかったのだが、傍から見るとそう思われてしまうのだと知って、酷く反省していた。


「君たちは、将来Holy(ホーリー) Mage( マギ )としてこの国と国民を守るための国の宝だ」

「その為に、国もこの学校を作り、こんな立派な寮まで用意して素晴らしい先生たちを配してくれている」

「君たちは国の宝なんだぞ?」

「俺たちは、その宝が一人前になって巣立つまでを守る義務があるんだ」

「もしかしたら、お前たちが我々の上司になることもあり得る」

「自分たちを大切にしてくれよ?」

 寮のアードラント護衛騎士団長の切実な言葉に、ふたりは身につまされる思いだった。


「すみません!!」

「皆さんがそんな思いで警護して下さっているのに…軽率でした」

「今後は、皆さんのお気持ちを裏切るようなことは絶対に致しません」

 ふたりは、安易に面白半分で巻いてしまった、今日警備してくれた騎士にも改めて謝ろうと思った。


 護衛騎士団長室から出たふたりは、顔を見合わせて

「本当に俺たち軽率だったな」

「ええ、警護騎士の方々がそんな思いで警護して下さっているなんて思いもしなかったわ」

「俺たち、自覚が足らなかったのかな?」

「そうね、足らなかったわ」

 ふたりは、心から深く反省すると同時に、自分たちが国から守られ大切されている事を有難く思った。


「国から大切にされているってことは、それだけ期待されているってことでもあるのよね?」

「ああ、そうだな。期待に応えられるようにより一層頑張ろう」

「ええ」

 ふたりは、いつも一緒に頑張ろうと思った時に自然とお互いの手を出して握手をするのだが、今日はちょっとその手を出すのを躊躇してしまった。

「なんか、俺たちさ。ふつうに友達、親友のつもりでいたのに…」

「あんなこと言われちゃうとね」

 と、二人は互いが男女であること改めて意識してしまった。


 ふたりの間にしばらく沈黙が流れた。

 そこに、寮の食堂からの夕食の匂いが漂い、ふたりの鼻を刺激した。


「あ、今日の夕食、頼んでおいたよね?」

「ええ、夕食までには戻るつもりで頼んであるわ」

「俺もだ」

「今日は休日で自宅に戻ってる人も多いから、食堂を利用する人も少ないかも?」

「待たせたら悪いから急ごう」

 ふたりは、そう言って寮の食堂へ向った。


 ふたりの予想どおり、食堂のテーブルに付いている学生の姿はまばらだった。

 クリスとアンナは、テーブルに着くと給仕の者に食事を運んでくれるように頼んだ。


「こんなに至れる尽くせりで暮らせているのも、私達が国の宝と思われているからなんだわ」

「そうだな、改めて実感するけど凄いことだよ」


「ねぇクリス?」

「なんだい?」


「今日、私達なぜレイマーシャロル地区のマルシェを選んだのだった?別にマルシェは、他の地区でも良かったのよね?」

「そうだよな。前回は、別の地区のマルシェに行ったし…なぜだろう?」


「あそこで、リリアちゃんやアイラちゃん達と出会ったのも、私があの怪我した男性のヒーリングの手助けをすることになったのも、偶然なのかしら?」

 アンナは、改めて今日一日を思い出していた。


「私、なんだかとても勉強になった気がするの。クリスのかっこいいところも見れたしね」

 と、アンナは笑った。


「そういうアンナも、頑張ったよ。俺もオスカー先輩と話せたし、寮の護衛隊長の話も聞けて良かったし、良い勉強になる一日だったよ」

 クリスはうんうんと自分に言い聞かせるように何度も頷いてから言った。

「やっぱり、誰がなんと言おうとアンナは、俺の一番の友達、仲間、いや親友だよ!」

「一緒に居ると成長できる相手だなって思う」

 と、クリスは照れ気味に言った。


 アンナも、ちょっと頬を染めうつむき加減で

「なんか複雑な気分なんだけれど…、でも間違いなく、私もクリスと居ると成長できると思う」

 そして、少し小声になりながら

「お互いに能力も、得意な分野も違うから補い合えるし…尊敬もしているわ」

 と、言った。


「じゃ、これからも今まで通りってことで!」

 と、ふたりは固い握手を交わし、気持ちよく美味しい寮の食事を堪能していた。


 そこへ、寮長のキース・ウェスリー・インディゴ・ラングレーがやって来た。

「おふたりさん!ご一緒してもいいかな?」

「キース寮長!もちろん!!」


「今日は、いつもより遅いねぇ、外出していたのかい?」

 キースは、既に何やら聞いているらしく、ニヤニヤしていた。

 キースは、寮長なので、アンナとクリスの失態は耳に入っているのだろう。


「いや、ちょっと色々あってさ」

「寮の護衛騎士団長さんに叱られて来たところなの」

 と、アンナはぺろりと舌を出した。


 キースは、自分の食事をこちらへ運ぶようにと給仕に合図しながら言った。

「そうなのか?俺は、君たちの活躍しか聞いてないぞ?」

 と、言った。


 アンナとクリスは、キースに今日一日の出来事と寮の護衛騎士団長から言われたことを話した。

 キースは、ふたりの話を聞きながら食事をしていたが、話が終わると食事の手を止めて言った。

「そうだったのか。それは大変だったけれど、有意義な一日だったね」

「キースもそう思う?」

 クリスがキースに尋ねた。

「君たちが、そこから多くを学んだみたいだからね。同じ体験をしても、そこから考え学び取らなければ、単なる不運で終わってしまう。でも、君たちはそうではないだろ?」

「そうですね。反省もしたし、気づかなかったことに気づけたし、もっとこうしようと思えることも多かったです」

 アンナの言葉を聞くと、再び自分の食事に手をつけながらキースが言った。

「なら良い一日だったんじゃないか?」

「はい!」「はい!」


 アンナとクリスは、キースの言葉を噛み締めていた。






挿絵(By みてみん)

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