「シャバラリオ」と「赤い荒野」と「使徒」
引き続き、
帝国神聖力術士養成大学の
ガブリエラ・サーシャ・ラング先生よる講義。
「赤い荒野の闘い」のお話です。
ラファエル殿下一行は、それなりの収穫を得て帝国軍アムンゼン基地へ戻られました。
そして、マントバナで収集した情報を元に今後の作戦会議に入られました。
会議室の椅子にどっかりと座りながらラファエル殿下がおっしゃいました。
「アレックス、おまえは一緒に来なくて良かったよ!」
「来ていたら、きっと、おまえが一番ひどい目にあっていたぞ?」
たふなラファエル殿下が、ぐったりした様子でおっしゃいました。
「えっ?! 兄上、そんなに冷遇されたのですか?」
アレクサンドル殿下は、見たことも無い兄の疲弊ぶりに驚いて尋ねられました。
「いやいや、その逆だよ。歓待されたうえに、舞踏会なんて座る暇もなく踊りっぱなしだ」
「もう何人とダンスしたかもわからないよ。そして、ほれ!!」
と、懐からラブレターの山を出して机に置かれました。
その様子を見ていた姉君のステイシア准将閣下は、大笑いされながらおっしゃいました。
「あら、大量の素敵な手土産を待たされたものね。まあ、次期皇帝候補だもの当然よね」
「そういえば、ラファエルは正式に皇太子に指名されてなかったのだったかしら?」
その姉の質問に対してアレクサンドル殿下が間髪入れずに答えられました。
「いえ!兄上が皇位第一位継承者で皇太子です!!」
「ただ兄上がそう名乗らないだけで、正式に皇帝陛下から指名されています」
姉と弟に対してラファエル殿下は、その話題は面倒だというようにおっしゃいました。
「まぁ、いいじゃないか!」
「Holy Mageは長寿だから父上もまだまだご存命だし、アレックスと私は歳も近い」
「私の方が先に逝くかもしれんないのだから」
殿下は、後継者争いで派閥が出来ることを懸念されておれました。
Holy Mageである貴族の方々のほとんどは、そうした派閥にご関心はありません。
しかし、HolyMageでない方々の一部で、そうした派閥争いが無いわけではありません。
殿下方は、そうした派閥に利用されぬように細心の注意を払われておられました。
殿下のお気持ちを察されたステイシア閣下は、弟殿下の返答を軽く受け流されて言いました。
「まぁ、それならラファエル殿下がモテモテなのも仕方ないわね」
「姉としては、慌てずにゆっくり伴侶を捜して欲しいと思っているわ」
「そんな姉上は、嫁がれても変わりませんね?」
と、ラファエル殿下は、話題を姉君へと変えられました。
「まあ、旦那はHolyMageでもHoly Mageじゃなかったので、もう亡くなってしまったわ」
「次は、Holy Mageか、うんと年下の婿を捜さないと!!」
ステイシア閣下は、冗談交じりに笑われました。
皇室のHolyMageの方の恋愛事情やご結婚は、一般の方とは異なり難しいのでございます。
さて、ラファエル皇太子殿下たちが姫君やマントバナのお嬢様方から聞き出した内容をまとめると以下のようなものでした。
一、まず、アムンゼンの港町同様にマントバナ国内でも以前より異国人が目立つようになって来たこと。
二、マントバナ国では、昨年、一昨年と小麦の不作が続いたこと。
三、お隣のシャバラリオ国も同じく作物の不作のようであったこと。
四、その影響か、二国間の漁師たちの間で小競り合いが頻発していること。
五、ここ一年の間に、海の向こうの大陸からの難民船の漂流が目立つこと。
六、シャバラリオ国では、「赤い荒野の魔物」に子供や若い娘がさらわれるという噂があること。
七、他諸々…
以上のような内容でした。
一番気になるのは、六番目の案件でした。
初代皇帝の頃から「赤い荒野」は存在しており、そこに獣が住んでおりました。
しかし、長年、周囲の住民とのいざこざはなく、上手く住み分けられていたようでした。
それが、近年「赤い荒野には魔物が住んでいる」と近隣住民から恐れられるようになっていたのです。
マントバナ国とシャバラリオは地図の上では国境を接しているように見えますが、実は「赤い荒野」と深い峡谷と高い岩山が壁となっており、直接接しはおりません。
ゆえに、シャバラリオの情報は。マントバナ以上に伝わりにくく、現状を把握するのは困難でした。
しかし、やはりシャバラリオの内情を知る必要があります。
当時のシャバリオは、いくつかの部族や民族に分裂しており、それぞれの部族に長がいます。
他国から見ると、国の形態を為していると言えませんでした。
帝国とシャバラリオ間に交易があるにはありましたが、民間レベルのささやかな交易でした。
「やはり、シャバラリオを直接見てくるしか無いな」
と、ラファエル殿下がおっしゃいました。
「殿下自ら、国ともいえない蛮国へ乗り込まれるおつもりですか?」
と、ブルーフォレスト少佐がおっしゃると、
「そんな国だからこそ、当代最強と言われているHoly Mageの私が行くべきだろう」
「国を守るための神聖力なのだから」
と、ラファエル殿下は毅然とした口調でお答えになられました。
「それでは、私もお供致します!!」
ブルーフォレスト少佐がおっしゃると、
「私も連れて行って下さい!!! 」
と、アレクサンドル殿下がおっしゃいました。
マントバナ国へ同行できなかったので、今度こそは兄の役に立ちたいと思われてのお言葉でした。
「うーむ。お前は目立つからなぁ」
と、ラファエル殿下がしぶると、
「私も兄上が市中を見回られる時のように変身できます」
と、食い下がられました。
「そうか、そこまで言うなら一緒に来い!」
アレクサンドル殿下は満足そうに
「はい!兄上」
と、お答えになりました。
「まずは、使徒たちに『赤い荒野』を天空から偵察へ行かせよう」
「そういえば、少佐。ブルーフォレスト家の使徒は竜だったな?」
「はい。平素はこのサイズですが、いざとなれば人も運べる大きさになります」
と、ポケットから手乗りサイズの竜のを出して、殿下にお見せになりました。
使徒によっては、他の獣や人間の姿に化身できるものもおります。
ブルーフォレスト少佐の竜は、自在に体の大きさを変えることができました。
「このサイズだと、えらく可愛いな」
と、笑いながら、
「いざとなったら、頼りになりそうだ」
と、殿下がおっしゃられました。
「はい。こいつらは、我がブルーフォレスト家の守り神たちです」
「辺境伯領地の守りもこの者たちが大いに役立っております」
「今回もクロヴィスが、必ずや大きな助けとなりましょう」
と、誇らしげに胸を張る少佐でした。
辺境領を守るブルーフォレスト領の使徒は、代々、竜でした。
竜は、悠久を生きる生き物と言われている通り、Holy Mageよりも長く生きるものもおりました。
また、ブルーフォレスト少佐の使徒のクロヴィスは竜の中でも有能でした。
ラファエル殿下は頭の中で作戦を展開させておっしゃいました。
「まずは、皇帝家自慢の使徒の鷲を偵察に遣わそう」
「トリスタン、アーサー!! 『赤い荒野』上空を飛んで見て来い!!」
「特にライオンの群れの動きと巣穴の位置の確認。変わった様子があれば、それもだ!」
「但し、深追いはするな!危険だと感じたら、すぐに戻れ、いいな!!」
人間の青年の姿で待機していた、両殿下の使徒、トリスタンとアーサーは、二羽の鷲の姿となって東に向かって飛んで行きました。
「では、我々は馬で出発するとしよう」
「姉上、なにかあれば使徒を遣わしますので、援軍をお願い致します」
「有事には、皇帝陛下より全権を預かって参りましたので、私が総司令官として陸海軍へ指示を出しますが、現地での指揮は姉上にお任せ致します」
ラファエル総司令官の言葉にステイシア准将がお答えになりました。
「了解しました!!ラファエル閣下。私にお任せ下さい」
と、凛々しい女性准将閣下は、上官であるラファエル総司令官に敬礼されました。
そして、
「こんな時だけれど、姉弟三人で力を合わせて国を守れる経験は貴重だわね」
「アレクサンドル、十二分に気をつけて己を守りなさい。その点で兄に迷惑をかけてはだめよ? 」
「万が一闘うことになったら、私の教えた剣さばきを思い出して頑張るのよ」
と、弟君の背中を愛こめて押されました。
「はい、姉上、ご期待に応えられるよう頑張ります!」
アレクサンドル殿下は、ここに来る時の船上で姉に怯えていたことを後悔されました。
姉の愛のムチを理解できていなかった自分を恥じておられました。
そして、
「無事に今回のことが片付きましたら、また剣のお手合わせお願い致します」
と、深々と姉上のステイシア准将閣下に礼をなさいました。
その様子を好ましく嬉しそうに見守るのは、兄のラファエル殿下でございました。
さて、赤い荒野へ偵察に飛び立った使徒たちが最初に見たものは、草木が一本も生えていない広大な平原でした。
砂漠のように砂地ではないにも関わらず、大地は枯れてひび割れ、命あるものが存在しない、まるで死の世界のようでした。
さらに飛んで行くと、数本の枯れた木々が大地に刺さっており、大きなごつごつとした赤い岩山がシャバラリオの国境近くまで広がっていました。
その岩山のふもとの一部にだけ、わずかながら緑色の草木が生えているように見えました。
そこに大きな獣のようなものが何かを加えて戻って来るのが見えました。
獣は赤い毛で覆われており目は、金色に燃える炎のようで、四本の手足の爪は鋼のように長く鋭く、耳まで避けた口からのぞく大きな牙で獲物を、がっしりと咥えていました。
一般的なライオンと呼ばれる獣に似通ってはいましたが、それよりも遥かに大きい生き物でした。
そのものが発する邪悪な匂いが、あたり一面に漂っていました。
その魔物が咥えている獲物は、動物ではなく人間のようにも見えました。
人間のようなものは、ぐったりと動かず生気もなく既に屍のようでした。
よく見ると、その岩山の周囲には。白い骨のようなものがたくさん散らばっているようでした。
トリスタンとアーサーは、しばらくその岩山の上を旋回していました。
しばらくすると、魔物は岩山の巣の中に入ってしまったらしく姿が見えなくなりました。
使徒達は、さらに飛んでシャバラリオ内に入りました。
そこは、使徒たちが知るスチュアートリア帝国のような豊かで平和な国ではありませんでした。
方々から怒鳴り声や、叫び声が聞こえ、あちらこちらで盗みや喧嘩をする様子が見られました。
裏通りには、女、子供の姿はほとんど見られません。
路地には人が転がって寝ており、昼間から薄暗い路地も多くありました。
明らかに治安が悪いと思える街でした。
使徒たちは、人間のトリスタンとアーサーの姿になり、シャバラリオの繁華街の酒場に立ち寄ってみることにしました。
そこには、日雇いの仕事を終えた労働者や、仕事にあぶれた者たちが溢れていました。
酒に酔って手当たり次第に女性を口説く者、泣きながら愚痴を言う者、くだを巻いて近くの人に喧嘩を売る者…
ねじろもなさそうな者が行き交う街では、見知らぬ若者達を警戒する者はいませんでした。
トリスタンとアーサーは、そんな酒場のテーブルのひとつに座りました。
ふたりは、料理と酒を注文し、同じテーブルで酔いながら泣いている男に話しかけました。
「旦那、いやなことでもあったんですか?」
男は、誰かに話しを聞いて貰いたかったらしく、
「聞いてくれよ~兄ちゃんたち」
と、泣きながら使徒たち迫って来ました。
「何があったんです?」
「いや~、俺が全部悪いんだけどよぉ…娘がさ、娘が…生贄にされちゃったんだよぉ」
と、言いうと、男は、おいおいと泣きだしました。
しばらく男は泣き続け、ふたりはしばらそれを見守っていました。
料理と酒が届くと、
「まぁまぁ、一杯飲んで落ち着いて下さい」
と、その男に酒を勧めながら慰めました。
「あんがとぅよぉ」
と、男は鼻水をすすりながら、再び話し始めました。
「まさか、奉公に行くんだとばかり思っていたんだよ…おれは…。」
「金が無くて仕方なくて…家族を食わすには、娘に働きに行って貰うしかないと思ってよぉ…。」
「でも、なんとか金を作って返して貰おうとしたら、もう生贄にされちまったって…」
と、再びおいおいと泣きだしてしまいました。
すると、横のテーブルに居た男が、ボソボソと話し始めました。
「最近、多いんだよ」
「数年前から、海の向こうの国から来たやつらがさ、若い娘っ子を買って、他の国に売り飛ばしているって話」
「なんでも、魔術を使うやつららしくて、金を作って持って行って娘を買い戻そうとした時には、もう海の向こうに売られていたり、魔術の生贄にされていたり…って」
「こんな国もう嫌だ」
「隣のマントバナに出稼ぎに行きたいが、あっちも今は不景気で職が無いと聞くし…」
「スチュアートリアへの入国は厳しいから何かツテを見つけるか、密入国するしかないんだよ」
と、ぼやきながら男は、酔いつぶれてしまいました。
それから、使徒たちは、酒場を数軒周り同じように話を聞いて回りました。
また、裏路地のよっぱらいや、男たちに「施し」という名の小遣いを与えて、話を聞いてまわりました。
そして、再び赤い荒野を飛んで偵察して回ってから、ご主人様の元に戻りました。
「まさか、そんなことになっているとは!!!」
「シャバラリオは、まだまとまった国ではなく、治安も良くは無いと聞いてはいたが、それほどとは!」
使徒からの報告を受けてラファエル殿下たちは驚愕なさいました。
「治安の悪さもですが、『赤い荒野』の魔物が人を襲っているらしいのも気になります」
「それと、人買いの魔法使いの噂も!」
と、アレクサンドル殿下が憤慨気味におっしゃいました。
「魔物の巣は判明したようだが、どれくらいの数がいるかはわかったか?」
と、ラファエル殿下がお尋ねになるとトリスタンが答えました。
「おそらく、10数頭の群れではないかと思われます」
「赤い荒野」は、スチュアートリア帝国の領土内になります。
自国の領土内での不穏な動きがあり、周辺の人間の命を脅かしているとなっては、統治者として放置しておくわけはいかない事態です。
そのままシャバリオ国内に乗り込むつもりでいたラファエル殿下でしたが、使徒からの報告を受けて、一旦、アムンゼン基地に戻られました。
そして、ステイシア閣下にも使徒たちからの報告を伝えられてから、お尋ねになられました。
「姉上、スチュアートリア帝国内でそのような事件が起こっていれば、報告が上がって来ないはずは無いですよね。そのような噂を耳にしたことはございますか?」
弟のラファエル総司令官に尋ねられたステイシア准将は、首を捻りながらお答えになりました。
「うーん、そのような話は聞いた事はありません!」
「『赤い荒野の魔物』の噂は耳にしてはいます。それも、荒野に踏み入れたりしなければ害をなさないものと聞いてます」
「実際、帝国民への被害が出れば、すぐに報告が上がって来るはずですから!」
ステイシア准将も、自分のお膝元同然の地域の近くでの異常な状況に憤慨されておいででした。
「魔物の仕業はまだしも、人身売買が横行しているとは!」
「他国の奴隷制度に口出しすることは出来ないが、その裏に魔術師の存在があるとするなら、これはHolyMageである我々が出る必要があるのだろうな」
ラファエル殿下は、作戦の変更を余儀なくされました。
帝国陸海軍アムンゼン基地の所属部隊には、数名のHolyMageとWhite Mageがいました。
そして、今そこには史上最強との呼び名も高い神聖力の持ち主であらせられるラファエル総司令官、その姉君のステイシア准将、西の辺境伯家のご長男のブルーフォレスト少佐、そしてアレクサンドル王子殿下という四人のHolyMageがおられました。
また、帝都からおふたりの殿下が伴われた騎士もWhite Mageの方々でした。
「まずは、我々HolyMageと我々の使徒だけで、『赤い荒野』へ行こう!そしてその魔物とやらを退治せねばならん!」
いつも穏やかなラファエル殿下が、いつになく語気を強めて愛剣を握り締めておっしゃられました。
「はい、私もお供します!!」
と、アレクサンドル殿下も兄君に続かれました。
「では、まずは『赤い荒野』の地域の見取り図を作成し、どこからどう攻略するか作戦を立てよう」
ステイシア准将は、手慣れた様子で地図を広げ、使徒たちの情報を元に地図を作製されました。
そして、HolyMageの皆様が、『赤い荒野』へ魔物討伐に向かわれたのは、その数日後の良く晴れた日の早朝でした。
リゲル歴4045年
帝国神聖力術士養成大学
「はい、今日の、スチュアートリア帝国の歴史の講義は一旦ここまでです」
「続きは、また次回の授業の時に致します」
White Mageクラスを担当するガブリエラ・サーシャ・ラング先生の声が、静かに教室に響いた。
それまで、肩に力を入れて、息をのむようにしてガブリエラ先生の講義を聞いていた生徒たちは我に戻った。
「では、次の授業は魔法の実技授業となりますので、各自自分のレベル級のクラスに移動して下さい」
「新入生で、レベル級判定がまだのホワイトブランチさんは、アレキサンダー先生の面接を受けて下さい」
そう言って、ガブリエラ先生は、教室から出て行った。
アイラが、すぐにリリアーナ元に駆け寄って来て、
「リリアちゃん!!私たちの住むレッドリオン公国の歴史わくわくしたね。ガブリエラ先生の魔法で私もその場にいて、目の前で起こっているように思えたわ」
と、興奮気味で話しかけて来た。
「うん!レッドリオン公国が、昔は赤い荒野と呼ばれていたのは知っていたけれど…まるでその場に居るように思えたのは、ガブリエラ先生の魔法のせいだったのね」
「ガブリエラ先生は、HolyMageではないので、神聖力ではなく魔法だと思うの。魔法でもそんな力があるのだから私たちも頑張ろうって思えるよね?」
リリアーナは、アイラの言葉に「本当だわ」と思った。
「あ、教室移動しなくっちゃ!」
「リリアちゃんは、やっぱりアレキサンダー先生との面接からだったね。アレキサンダー先生の部屋まで一緒に行ってあげる!!」
と、アイラがリリアーナの腕に自分の腕を滑り込ませながら言った。
未だ、ひとみしりの残るリリアーナは不安そうにアイラに尋ねた。
「アレキサンダー先生って、どんな先生なのかしら?怖い先生?」
「初対面で一対一はちょっと怖いな」
不安そうなリリアーナを勇気づけるように、アイラは組んだ腕とは反対の手で彼女の肩に触れながら
「だいじょうぶ!」
「アレキサンダー先生は、1000歳を超えられているGreat Holy Mageで、と~っても優しいお方なのよ」
「優秀なHolyMageほど人格者なので、なんの心配もないわよ」
「知らないことは無いのではないかと思うほどに知識が豊富な方で、皇室の相談役もなさっておられるの。アレクサンドル皇帝陛下の名付け親だって話よ」
「我々平民が滅多に話せる方では無いので、聞きたいことがあれば、聞いて来ると良いわよ」
そう話しているうちに、大きな木の扉のある部屋の前に到着した。
大学の建物は、大学の寮である「ミラ・ローズ宮」と同じく、古い宮殿を改築したものなので、厳かな雰囲気と共に伝統を感じる。
アレキサンダー先生の部屋は二階で、各先生たちの専用の部屋の奥の校長先生の隣にあった。
窓からは、庭園を改装した演習場 「剣や魔法の実践練習場」 が見渡せた。
「じゃ、私はここまで。頑張ってね、リリアちゃん!」
と、言って、アイラは去って行った。




