後編
―――――――――――――――――――――
⑨ 202Ⅹ+1/03
喉元過ぎれば熱さを忘れる、ということなのだろうか。微妙にぶり返すことがあった。けれど、次の日はそうではなかったりして、判断に困った。それでも最初に比べればマシではある。ただ、日中から深夜にかけてはうるさいのだけれど。
日中アパートにいることが増えた。
というか無職(正確には有給消化中だけれど)になったので、用事がない時はだいたいアパートにいるようになった。そうすると、やはり精神がやられていくのを感じる。爆音にプラスして無職になったせいもあるかもしれない。だけれど大部分は爆音のせいだと思う。いや、もしかしたら違うのかもしれないけれど。
二つは矛盾するかもしれないけれど、無気力と怒りのようなものが段々と体に蓄積されていくような気がする。私の中にある感情というのは、本当にろくなものがないとは思う。
愛用していた3段ロケットのような耳栓(3段耳栓と呼ぶことにする)の、1段目がちぎれてしまった。この1年ちかく、ほとんど毎日使っていたから、寿命だろうか。同じものを買いなおしたかったのだけれど、見つからなかった。その代わりにドラッグストアで銃弾のような形状の耳栓を買ってみた。潰して、耳の穴に詰めるタイプのものだ。ただ、これは私の耳に合わず、簡単に抜けてしまい上手く使えなかった。あと、注意書きを読まずに水洗いをしたら、1周り大きくなってしまって何事? と驚愕した。これは完全に私の不注意です。
結局通販で3段耳栓を購入した。同じものではないけれど、形状は同じだから大丈夫だろうと思ったのだけれど、前使っていたのよりも少し硬い素材だからなのか、もしくはバリの処理が甘いのか、たまに耳が痛くなる時がある。皆さんも耳栓を購入するときは注意してください。
―――――――――――――――――――――
⑩ 202Ⅹ+1/04
原型の⑧の部分までを、2月中に、爆音の中書いていて、それがずっとデスクトップ上に残っていた。(結局書き直したのだけれど)片づけたいな、とは思っていたが、こんなの世に出してもな……と思っていたりした。最後に進展があった。これをつけ足して終わりにすることにする。
#
ゴールデンウィークはgolden weak(虚弱)だな、とか考えて暮らしていた。
朝、爆音で目覚める。
カーテンを開ける。空は青く晴れている。
太陽を見ても、夜勤明けとは思わない。
無職だな、と思う。
掃き出し窓を開ける。
ベランダに出る。
これで爆音と自分を隔てるものは隣室の窓ガラスだけになる。
騒音とこの空って合わないな、と思う。これが好きな音楽なら、抱く感想も違うだろうか、どうだろう。
昔エレキギターを練習していたことがあったけれど、流石にこのアパートでは駄目だ、と気づき、すぐに練習しなくなり、オブジェになり、例によって金に困って、リサイクルショップに売った。ギター初心者によくある話だろうか。いや、初心者ともいえないレベルなのだけれど。
この爆音の中なら、いくらでも練習できるだろうか。どうだろう。
――結局、あんたは誰なんだよ――
ベランダの柵から身を乗り出し、隣の部屋を覗き込むように顔を出し、声をかけてみる。(※危ないので絶対やらないでください)
「うるさいですよー」と言ってみる。反応はない。
「全部聞こえてますよー」反応なし。
チャイム押しても出てきてくれないなら、と、『緊急時はここを破って逃げてください』と色あせて薄くなり、かろうじて読める壁を破って、ベランダから侵入する想像をする。駄目に決まっている。犯罪だし、やるなら出待ちでいい。まさか隣の人もずっと部屋にこもっているわけではないだろうし、もう暖かくなってきたし。無職で時間もある。
足の裏が痛くなって(裸足だった)、何を言っても無視されるのが嫌になって部屋に戻る。虚しい、惨めだ。
対抗して爆音で音楽や動画を流してみたりしたけれど、すぐにやめた。案の定、それで静かにしてくれるわけでもないし、音楽も動画もそんなことのために作られたわけではない。
#
次の日、爆音で目が覚める。
カーテンを開ける。雨だった。
窓を開ける。部屋に入ってくるほど雨脚は強くない。
アパートにいてもイライラするだけだし、少し離れた公園に、立派に生きて、そして亡くなられた方々の石碑がある。お参りに行ってなにか、自分に喝を入れようと思った。傘は持って行かず、安物の撥水のコートを着て(中は結構蒸れる)鍵だけ持って、出かけることにした。
隣の玄関の前で立ち止まる。うるさいなあ、と思った。通り過ぎて階段を下りたのだけれど、そこで踵を返した。
出待ちするか、と考えたのだけれど、結局チャイムを押した。出てこない。
まあ、出てこないよなあ。今までもそうだったし。
もう一回押す。
ふと、気が変わった。
なぜ出待ちしないといけないのだろうか。なぜ自分が合わせないといけないのだろうか。そう思って出てくるまでチャイムを押し続けることに決めた。ちゃんとドアのレンズから見える位置に立ち、連打ではなく、一回押すたびに間を開ける。嫌がらせをしたいわけではないからだ。
ただ、あなたはうるさくて、私をずっと苦しめている。もうやめてほしい。やめてくれないなら引っ越す金をください、と伝えたいだけだった。
合計10回鳴らした後(数えていた)、出てきてくれた。
私は今までの恨みを晴らすために、(実際そんなことをしてもどうにもならないけれど)酷いこととか、相手を傷つけるようなことを言ってやろうと思っていた。でも実際、その人を目にすると、ひどいことは何も言えなくなった。
重要な部分かもしれないけれど、詳細は省くことにする。個人情報だし、糾弾したいとかではないし、ちゃんと謝ってくれた。逆切れみたいな感じではなかった。私はそのころいろいろ(コンプラ違反の小説は創作だけれど、実際似たようなことがあった)あって謝ってくれるだけでも、偉い、みたいに思っていたのだ。ただ、見知らぬオッサン(見知らぬって、見ないようにしていただけじゃないかって感じなのだけれど)がいきなり、訪ねてきたら謝るしかないのかもしれないけれど。
(※基本的に知らない人が訪ねてきたら、自衛のため無視するべきだと思います)
どうしてそういうことをしていたのか、とか、私が壁を叩いたり叫んだり、チャイムを鳴らしたりしてもなんとも思わなかったのか、とかについてはっきりした答えは返って来なかったけれど、とにかく謝って気を付けると言ってくれた。
いろいろ納得いかないところはある。例えば、この声量で会話できているのなら、あの時叫んでいたのだって聞こえたはずだとか、壁を叩いたり、うるさいって言ってたのに、何とも思わなかったのかとか、自分が悪いと少しも思わなかったのか、とか。
何とも思わなかったなら、なんだと思っていたのか、とか。
でも言えなかった。もうそれでいいです。
#
ただ、気を付けるとは言ってくれたが、実際静かにしてくれるかは半信半疑だった。今までも、注意してもその時だけ、みたいなのを何度も見てきたからだ。
けれど、実際テレビ(もしくはラジオかなにか)の音量は許容できるところまで下げてくれるようになった。それで問題がないのなら、最初からそうしてほしかった。話し声も今までのような無遠慮ではなくて、(私が思う)通常の声量にしてくれるようになった。(それでも聞こえるがこれはアパートの壁の問題だ)だから、それができるのであれば、なんで、と思うのだけれど。もうこれ以上注意するのはやりすぎだし、私はすごく疲れた。本当に疲れた。
確かに静かになってよかった、けれど半年以上苦しんだのは何だったのだろうか。その怒りのやり場がどこにもない感があって、辛い。
誰かの参考にや、暇つぶしになれば少しは救われるかな、と思います。
読んでくださってありがとうございました。
(完)
―――――――――――――――――
まとめ
『役に立ったもの、こと』
・耳栓
・エアコン
・扇風機
・ホワイトノイズ音声
・ベッドの移動
『さっさとするべきだったこと』
⓪できるなら、録音する
①管理会社に注意してもらう
②警察に通報
③駄目なら引っ越す
私は大事にしたくないとか、多少はお互い様(お互い様のレベルではなかったのに)自分で解決すべきと思って、管理会社に頼るのが遅くなってしまいましたが、最初に(効果はないかもしれないけれど)連絡してみるのがいいと思います。それで駄目なら、警察に通報して注意してもらうのがいいと思います。(もちろん自分の名前は出さないようにしてもらって)それも駄目なら、やはり引っ越すしかないのかなと思います。
『やらないでほしいこと』
・自傷行為のような八つ当たり
私は気が付いたら手の甲が血だらけになっていて、まあまあの傷が残ってしまいました。皆さんは自分を傷つけないでください。柔らかい物を投げるとか、その程度にしておいてください。とにかく自分を傷つけることはないですよ。
・暴言を吐いたり、暴力をふるうこと
逆に加害者扱いされるかもしれません。
・怖そうな人に自分で注意すること
危険な目に合うかもしれません。
騒音問題というのは難しいですね。
被害者の方が精神を病んで事件を起こしてしまうということも聞きますし、これから高齢社会が進むと、こういうケースが増えるのかもしれません。私も一歩間違っていたら、被害者が加害者になっていたかもしれません。
もしも、知り合いが騒音で悩んでいたら、なんか相談に乗ってあげたりとかしてあげてください。お互いに気を付けて、快適に暮らせるのが一番いいですよね。
読んでくださってありがとうございました。
あと、可能であれば根本的に壁の薄いアパートはそもそも住まない方がいいと思います。
※ 体験を基にした創作です。最後まで読んでくださってありがとうございました。
他の小説にコメントなどしてくださってありがとうございます。感想に返信しないのは私が読む勇気のない卑怯者だからです。本当にすみません。