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綴屋 蜜凛の場合:前編01「恋焦がれ狂い狂う」

本作品を閲覧ありがとうございます!

こちらの作品は世界帰還録とは違い不定期更新になります。

現在は4人の話を並行して執筆、各ヒロインの

前編が出そろってから次章投稿予定

全ヒロイン前、中、後編の予定です

「あ、綴屋先輩!お疲れ様です!」

俺はバイト先の先輩、綴屋 蜜凛さんに挨拶をした

先輩は振り向き俺に手振る。

「お疲れ」

無表情だが声色はそうではない。

綴屋先輩は単純に表情を作るのが苦手と言っていた。


裏口から店を後にする。

原付に跨り、ヘルメットを被るキーを差して回す

スイッチ操作するとエンジンが掛かると振動が伝わる

俺は周囲を確認してから車道に出て帰路に着く。

原付を走らせて数分で家であるマンションに到着

いつも通りの場所に止めて自室へ


「ただいまー」

ドアノブを回し誰もいない暗く静かな部屋に言葉を投げかける。

玄関の鍵をしっかりと施錠して壁のスイッチを押すと部屋が灯りに包まれた。

ワンルームの我が家、俺の自由の城。

まずは冷蔵庫から事前に作った晩飯をレンジに放り込み

俺は風呂へ向かい暖かいシャワーを浴びる。

そして風呂から上がり下着だけ履きご飯と飲み物を机の上に置く。


そしてTシャツとジャージを着用してからご飯にありつく。

食事をしながら適当に動画を流す。

この一連の流れが夕方のルーティンだ。

「あー…明日は綴屋先輩と遊びに行くのか

 服とかどうしようかな…」


綴屋先輩…バイトの先輩ってだけでは無い

通っている大学の2つ上の先輩でもある。

クールビューティーで男を寄せ付けないその態度に何人もの奴が玉砕

飲み会で潰そうする所謂、お持ち帰り狙いのやつを逆に潰して

飲み会の金を全額支払わせたなんて逸話もある。

そんな高嶺の花の先輩と遊びに行く…


「楽しみだけど緊張するなぁ…」

チラリと先輩から"()()()()"と貰った

おしゃれなデジタルカレンダー。

明日の日付には予定マークが入っている。

充電して動かすタイプで電力切れの前に音が鳴るので今は切らした事はない。

あれこれ考えて不安に駆られているといつのまにかご飯を食べ終える。

立ち上がり台所へ向かう

一人暮らしの鉄則として食べ終わったらすぐに洗い物をする。


── あー…明日は綴屋先輩と遊びに行くのか─ザザッ──しようかな…

イヤホンから聞こえてくる彼の声。

電波が悪くノイズが混じり言葉が飛ぶ

位置を調整してから再度、耳を凝らす。

明日…私と出かけるのが嫌なのかしら?

少しチクリと胸が痛む。しかし次の言葉は─

──楽しみだけど緊張するなぁ

その言葉に顔が綻んでしまう。

彼は嫌なわけじゃない…異性である私と外出する事に照れているだけ。


その後しばらく彼の生活音を聞き何か独り言を呟く事を期待する。

鼻歌が聞こえてくる、私はそれを聞くだけでも楽しい…

ずっと聴いていたいがそろそろ私も家に帰らないといけない。

私は帰り支度をして彼のマンション近くにある喫茶店から退店する。


…自分でも異常な行動なのは自覚をしている。

でも…いや言い訳になるけど彼が好きでたまらない

彼のことになると歯止めが効かない。

きっと…私が人を好きになったのが初めてだからだろう。

正直、私は男が嫌いだ。

下卑た欲を発散したいが為に私に集ってくる。

まるで誘蛾灯に群がる羽虫だ…永遠にその光に

触れる事はできないのに必死に哀れに飛び続ける


別に性欲が悪いわけじゃない、私にだってある

それの向け方が下品で下卑ている。

ただ…私を支配して慰み者にしたいだけ、それが透けて見える。

だから嫌いだった…最初1年前、彼に…賽我(さいが) 弥勒(みろく)に出会った時も同じだ。

しかし私は彼の教育担当になった。

面倒だと思ったが仕事なのだから普通に教えた

彼は普通だった、驚くほど普通に私に接してくる…

万人が私に興味があるわけじゃないのは理解している

だが経験から多いのは確か。


決定的だった事件は大学内で起こった。

以前…私が振った男が一方的な恨みつらみの

問答の末に凶器で襲われそうになった。

不思議なもの…いや必然かもしれない

こういう時に限って誰も助けに来ない。

あれだけ私に群がろうとした羽虫が

ピタリと1匹たりとも近寄ろうとしなかった。


いよいよ私に凶器を振りかざす哀れな男。

狙ってくるのは私の顔。

痛みを覚悟した、死を覚悟した、しかしそれは訪れる事はなかった…

彼が、弥勒が男を制圧していた、駆けつけた警備員に男が連行される。

「綴屋先輩!大丈夫ですか?」

「え、えぇ…って賽我くん!腕!」

「え?」

彼は左腕を見ると切り傷が刻まれ血を流していた

私はすぐにハンカチを取り出して止血を試みる


「あ!先輩!俺の血が付いちゃうからあとは

 自分で抑えますよ!ありがとうございます!」

痛いだろうに、辛いだろうに、彼は私に笑顔を向ける

外からパトカーと救急車のサイレンが鳴る

もうそのあとは色々と大変だった。

警察から事情聴取をされるわ、男の親が騒ぐわでバタバタした。

結果は男は実刑&退学、私への接触禁止。


本格的に彼をに惹かれたのはその後だった。

あれだけの事があったのに彼はなにも要求しなかった

いつも通りの先輩後輩の関係。

糸目の彼から向けられる明るい笑顔、私は心から彼に惚れた

どうしても、なにがなんでも彼を私の手中に収めたい

狂いそうなほどの独占欲、そうなればもう止まらない

初めて身を焦がすほどの狂い恋慕に私はどうにかなってしまう


彼に思いを馳せているといつのまにか自宅に到着した

両親に帰ってきた事を告げて寝支度を済ませてベッドに入る。

私は恋人に…いいえ伴侶になる為にこの1年彼と良い関係になる。

だが決定的な一線を越えさせてくれない。

理由はおそらく二つある。

一つは私を高嶺の花だと思って恋愛対象から外れている…

これは簡単にどうにかできる。

問題はもう一つ、彼は私との関係を罪滅ぼしだと思っている。


あの大学の一件から本格的に仲良くなった。

だから彼は私がそれを気にして

自分に付き合ってくれていると思っている。

以前盗聴した時に上記を仄めかす発言を聞いた

だからすぐに彼に告白しなかった。

この問題をどうにかしないことには恋仲になることは叶わない。


もどかしい…早く恋人になりたい。

だが焦りは禁物、焦って今までの全てが

ご破産になる事は避けたい。

確実に彼は私のことが気にはなっている

後もうひと押し決定力がいる。


…フィクションの様になし崩し的に

ラブホテルに入ってしまう

なんて展開なら押し倒せば…

ベッド中、叶わぬ妄想が頭を支配する。

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