表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血鬼とその恋人達の仲良しな話  作者: 黒本聖南
バッキンガムとその奥方の話
1/6

前説

 昔々のそのまた昔の話である。


 始祖の吸血鬼の中に、バッキンガムという男がいた。

 彼は世界を孤独に渡り歩き、神のように崇められることもあれば、悪魔だと罵られて石を投げられることもあった。

 そんな彼がある時、五人の娘を娶ることになる。

 もはや名前も忘れ去られた、旧き神の血を引く王の娘達。彼女らは、王の側室である母達の家名をそれぞれ名乗っていた。


 深紅の髪のスタフォード

 黄金の髪のヴィリアーズ

 純白の髪のシェフィールド

 漆黒の髪のグレンヴィル

 白銀の髪のホバート


 娶ってしばらくすると、スタフォードから順に子供が生まれていく。バッキンガムはどの子の誕生も喜んでいたが、特に、ホバートの子を楽しみにしていた。

 娘達の中で、バッキンガムは特にホバートを気に掛けていた。年若くおぼこい彼女の一挙手一投足が、バッキンガムには可愛くて堪らなかった。

 四人の娘は四体の子供を生んだ。ホバートもそうなると思っていたが──出産に身体が耐えられず、子供をこの世に生み出せぬまま、息を引き取る。

 腹の子と共に埋められてしまったホバートの墓に、バッキンガムは近寄ることなく、誰にも何も告げず、その姿を消した。


 バッキンガムの行方を知る者はいない。


 残された子供達は、始祖たるバッキンガムの特性か、神の血を引く母達の特性か、不思議な力をその身に宿していた。

 どの子も一様に瞳が赤く、その瞳から溢れる涙は、雫の形をした赤い結晶。それには濃密な魔力が込められており、人間がそれを口に含むと、魔法を使えるようになる。


 ──バッキンガムの子供達。


 特別な力を宿した吸血鬼は、そのように呼ばれるようになった。


◆◆◆


 さて。


 誰しもがホバートは死んだと思っている。確かに、ホバートは死んだ。──だが、その子供は生きていた。

 土の下で生まれ落ち、産声を上げて生存を知らせ、墓守によって救い出されると、密かに生き延びる。

 バッキンガムも、他の子供達も、その生存を知らぬまま──時は流れていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ