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第七話 融合の誓い






クレイが汗をかいている。

それもたくさんだ。

ムッチムッチの柔肉には服が張り付き、スカートの中からしたたる大粒の汗が内腿を滑り落ちる。

彼女の上気した顔は普段より紅潮していた。

俺は何よりも今の彼女と給水がしたい。

しかし戦闘中である事が悔やまれる。


目の前の骸骨は声ならぬ叫び声……咆吼を上げながら6本の腕を地面に突き刺すようにして立ち上がった。

クレイの攻撃によってひび割れた頭部からは炎のように激しい瘴気が漏れ出している。

次の瞬間、小さくなっていた瘴気が爆発的に膨張した。

骸骨自らを内側から破壊するかのような圧倒的瘴気の渦。

頭部の右上半分が吹き飛び、その穴から絶えず瘴気を放出している。

そのまま骸骨は項垂うなだれた格好で停止して動かない。


『……これが第三段階か?』


『間違い無くそうだ……だが非常に厄介な事になった』


『厄介な事?』


『こいつは闇種やしゅの中でも特殊個体に入るのだ。

普通の第三段階は瘴気の色が深緑ふかみどりに変色する事で、より強く進化したと判断される。

こいつの変化は暴走状態、いわば時間制限付き圧倒的破壊者だ』


『随分とおっかないな……時間が経てばどうなる?』


『無論、自壊するぞ。力を制御せずに限界まで使い続けるのだから当然の帰結と言える』


あぁ、確か人間も普段は自分の体を守る為に無意識の力の抑制セーブが掛かっていると聞いた事があるな。

今の骸骨は火事場の馬鹿力を常時発動しているようなものか。

雰囲気的には人が狼男に変身するくらいの衝撃だけど。


『挟み撃ち作戦は通用するか?』


『うむぅ……』


『どっちだ?』


『恐らく不可能である。先程のようには戦えないぞ』


『……そうか』


『もう秘策を使うしか無い、我が判断を間違えてこちら側に飛んだのが失態だった』


『おぅ、そうだ秘策で打開出来るんじゃ無いのか?』


『その為には我がそちらに行ってそなたに近付く必要があるのだ』


『確かにこいつの横を通り過ぎるだけで、かなり危険な気がするな……なぁ、前やったみたいに光になって飛んで来れないのか?あれなら』


『危ういな。あの状態はあまり頑丈とはいえないのだ。吹き飛ばされたらそこで終わりという事になるぞ』


『じゃあ……どうするか……』


『恐らく機会は一度きりだ。骸骨が停止している今が最大にして最後の隙。

どちらが死んでも秘策はらぬのだ』


『何が出来るか、どうすれば良いかも俺には分からない。だけどクレイの決めた事なら従うぜ、それが死ぬ程危険でもな。クレイ、俺はどうすればいい?』


『……我らはこれから人とウェポンによる融合を行う。そなたが我と一つになるのだ』


『何だと?』


『融合は失敗をすると命を失う事になる魔法だ。

本来、人とウェポンが融合する場合その危険性を消す為に多くの準備を必要とする』


『……要は一か八かって訳か?』


『そうなる……が、もしそなたが我を完全に受け入れる事が出来たなら成功するはずだ』


『俺がクレイを受け入れる?その条件なら割と簡単な気がしてきたんだが』


『融合を受け入れる事は恐らく、そなたが想像するよりずっと深い意味になる。

また成功するには我もそなたを受け入れなければならぬ』


それを聞くと一気に難しくなった気がした。

何だ、信頼関係みたいなものが必要なのか?

お互いを受け入れる事なんて確かに俺には経験が無いかもしれない。

けど……


『難しい話は分からないが、ただ一つ言えるのは俺はクレイならやれるってそう思うぜ。

理屈何か関係無い。クレイがそうするって決めたなら俺は全力でそれに付き合う。

だからあんま考え過ぎんな。

俺の選択の責任は俺が持ってる。クレイはクレイで自分のやりたい事をしてくれ!

クレイなら……俺達ならやれる!』


『っく。そう……だな。

そなたの言う通りだ。既に他の道は無い、我も覚悟を決める。するぞ、融合を』


『おう』


『まずはありったけの氷魔法で奴の動きを止めてみる。

その後はそなたの提案通り、我は光の状態になってそちらに向かおう。互いが触れられる距離に近付いたら体に触れて欲しい。それで融合の魔法は開始する』


『それだけか?』


『うむ、アキリの中には水魔法を通して我の魔力が残っている。それとそなたの手に持つ剣、それがあれば融合に必要な条件は揃うのだ』


『分かった、とにかく体に触れればいいんだな』


『うむ、では行くぞ』


クレイの両手から青白い光が溢れる。

それに呼応するようにもはや人型を捨てさった異形が反応した。


迷宮に鳴り響く咆吼。


骸骨は彼女の方に振り向き、今にも突進を始めようとする。

赤黒い灼熱に染まった瘴気は奴の怒りを表しているようだった。


しかし遅い。クレイの練り上げた氷魔法が奴の全身を覆う。


一瞬の間だけ骸骨の動きが完全に止まる。

しかし次の瞬間には氷は砕け散り奴の暴威を再開させる。

その瞬く間を逃さないように光になったクレイが健気にこちらに向かってきた。


氷の破片を掻い潜り確かに真っ直ぐ進んでいる。

それは直感であった。

骸骨がクレイを視界にとらえている事を感じた俺は全力の踏み込みを行った。


「クレイっ!」


骸骨の背中に生えた手がクレイに襲い掛かろうとする。

俺の剣先がそれを抑え込んだ。


「っぐはぁ!」


別の手が俺の腹を貫いたのが分かる。

熱い、いや寒い。

急激な失血により一瞬で死が近付く。

視界が真っ白に飛ぶような痛みの中、俺の頬に触れる柔らかい手の感触。

振り向いた俺が見たのは酷く悲痛な表情をしたクレイだった。

ああ、そんな顔も出来るんだな。

初めて見る彼女の表情にどこか嬉しさを感じた。


爆発するようで、しかし暖かい光の輝きに抱擁ほうようされ俺は意識を失った。



「アキリ、聞こえるか?」


「んっ、クレイ?」


目の前にクレイがいる。

理由は不明だが彼女は裸であった。

というか此処はどこだ?周りの景色が白く歪んでよく見えない。

それでもはっきりと分かるクレイの姿に問い掛けた。


「負けたのか俺達?」


「いや、負けてはおらぬ。融合は成功した」


「……そうか、成功したか」


めちゃくちゃ嬉しいはずなのに力が出ない。

まぁ死にかけというか死んだようなもんだし当然か。


「これは夢の中なのか?」


「違う。今我らは融合の最中、精神体として会話をしている。

そしてこれより融合の為、我らは一つになるのだ」


裸のクレイが浮遊するように近付いて来る。

重なるように抱き合う俺達は互いに相手を受け入れる事を心根に誓った。




《この度は【クレイモア戦記】を読んでいただき誠に有難うございます。


続きを読みたいと思われましたら評価やブックマークをして頂けると大変ありがたいです。


また、ご感想やご意見なども気兼ねなくお書き下さい。


作品の質を向上出来るよう努めて参ります


投稿時間は出来るだけ安定させたいと思っています。


応えられるかは分かりませんが、ご希望の時間などがございましたら感想ージ等に書いて頂ければ参考にさせていただきます。


現状では朝の5時〜6時が良いのかなと判断しております。


今日は更新の時間が遅れてしまい大変申し訳ございません》

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