第四話 気絶と膝枕
そこは石畳の迷宮で初めて見る土の地面だった。
天井も道幅も今まで通ってきた道より開かれていて多少の開放感がある。
脇の方には湧水があり、遠くから見ても水が澄んでいるのが分かる。
洞穴のように壁が抉れているので結構な人数でも横になって休む事が出来そうだ。
「どうだ、中々良さげな場所だろ?ここで少し休息を取るぞ」
「いい場所じゃねぇか、でも休んでいるところを魔物に挟み撃ちされたりする心配は無いのか?」
「安心しろ。迷宮にある綺麗な水溜りはある種の魔物を退けるスポットの役割を持っているのだ。
我々にとって憩いの場であっても魔物からしたら近付くだけで苦しい毒沼のようなものだぞ」
「なるほど、確かに迷宮に安心して休める場所が無いとおちおち探索も出来ないもんな」
「湧水が無い迷宮も往々にしてあるがな。
その場合はパーティーで順番に休息を取ったり魔法で結界を張って身を守るのが定石だ」
「こうやって話を聞くだけだと楽しそうだよな迷宮探索。
いろんな迷宮に入ってみたいと思えてくるぜ」
「であろう、実際楽しいからな迷宮探索は。
これから東西南北いろんな迷宮に連れ回すつもりだったし、そなたが想像も出来ない景色を見せてやるぞ」
「俺の予定、勝手に決まってるんだが?」
「何だ不服と言うのかそなたは?」
衣服に抑えられたはち切れんばかりの巨胸の前で腕を組むクレイ。
ただそれだけでプルプルと揺れる豊かなお胸に視界を奪われそうになる。
体裁を保つ為、軽く咳払いをして意識を逸らした。
この世界について全くの無知である俺からすれば、少し変わってはいるが、親切で可愛くて、何よりムチムチなクレイと旅が出来るなんてこれ以上無い贅沢な境遇だろう。
全裸かつ無知な俺にも優しいムチムチなクレイ。
彼女との出会いに俺は心の底から感謝をしていた。
「最初此処で目が覚めたとき、俺の感情は不安で一杯だった。記憶も曖昧だし見慣れない場所にいたからな。
でも今は違う、クレイのおかげでこの世界で生きていきたい気持ちが持てた気がする。
俺、クレイと一緒に旅がしたいよ。
だからもっと力を付けて肩を並べて戦えるようにように頑張るつもりだ」
「ふっ、最初から素直にそういえば言いのだ。
あらたまって恥ずかしい奴め。
だが嬉しいぞアキリ、そなたがそこまで力を求めているのは望外の喜びである。
徹底的に鍛えてやるから覚悟をしておくのだぞ」
「まぁ強くなって損はねぇし。よろしく頼むぜクレイ!」
「うむ」
俺達は立ち話を終えて湧き水の近くに腰を降ろした。
「この水が魔除けになってるのか?
それだったらこいつを持ち出せば安全に迷宮を探索出来る……ってそんな上手い話はないよな?」
「無論だ。あくまで水が湧いている周辺に魔物を退ける効果があるのであって水そのものにはなんら効力も無いぞ」
「だよなぁ、そんなところだと思ったぜ。
じゃあこの水ってこのまま飲むことは出来ないのか?案外触ると危険だったりする?」
「飲み水として使うなら煮沸が必須であるな。
体を洗ったりしても健康に害は無い」
「そっか、なら安心した。
あとごめんつまり喉が乾いた時にはどうすればいいんだ」
「我から飲め、それが一番確実であろう」
「わりぃなクレイ、助かる」
「別に悪くは無いぞ、魔力に余力は残してあるからいつでも言え」
水を貰った時を思い出しただけで恥ずかしくなって来る。
これからもっと恥ずかしい事を提案するのに先が思いやられた。
「なぁ水浴びしていいか。汚れた体を洗い流したいんだが?」
「構わぬぞ、他に人もいないし水も入れ替わりで綺麗になるしな。気にせず入るといいぞ」
「クレイは汚れ落とさなくていいのか」
「なんだアキリ、そなたは回りくどい言い回しを好むのだな。
我の裸が見たいのならば最初からそう言え。
遠回しな物言いは我の半身を持つ者として情けないぞ」
下心は簡単に見抜かれてしまった。
そして少し怒っている、まぁ当然の結果だった。
しかしその後が当然ではない。
クレイはいそいそと服を脱ぎ出しあっという全裸になった。
弾けるような瑞々しさで彼女の爆乳が暴れている。
そして驚愕だが今は俺の方が着込んでいる状況になってしまった。
たまらず俺も彼女に呼応するように剣とマントを外し対面する形になる。
思考は欲望に飲まれて制御が出来ていない。
そして何を思ったのか俺は唐突に気の触れた発言をした。
「なぁクレイ、喉が乾いたんだが水を貰えるか?」
「うむ、よかろう。そこにしゃがめ」
俺は言われるがまましゃがむ。
必然したからクレイを見上げる形になり彼女の垂れ下がった牛乳、いや化乳が目の前に現れる。
前後左右に揺れる巨乳を捉えた俺の無意識はその窪んだ先端部に向かって行くように自身の半身を勢い良く伸ばし始めていた。
「では放出するぞ、こぼさぬようにな」
「ああ、頼む」
俺は口数少なくクレイの接吻を受け止めた。
前回と違ってお互い全裸であるからかショートしそうな程、顔が熱く火照っている。
だが水分補給は短く終わってしまう。
何事かと思った俺はクレイの顔を見てみた。
そして彼女からとんでもない発言が繰り出される。
「この体勢だと胸が重いな。悪いがアキリ、水を飲むときはそなたが手で持って支えて貰えるか」
と悪いどころか歓喜の雄叫びを上げたくなるような提案をしてくるクレイ。
「しっかり持っとくぜ。クレイは水を出すのに集中してくれ」
「うむ、頼んだぞ」
これまた立場を弁えない物言いをする俺にクレイは無表情に応える。
そして口づけを再開して俺は彼女の巨乳を手に収める事になった。
しかし当然片乳を片手で受け止める事など出来ず手の端からは軟肉が溢れ、持ちあげたせいか、まさかの指の間にまでしっとりとした感触で埋め尽くされていた。
手の平では先端が擦れ、その度にクレイが低い声で、「うッ」と声を漏らしている。
クレイの馬鹿でかい腰がピクッピクッと震えじんわりと全身に熱が籠もっているのが分かった。
俺にとって夢のような一時が終わり互いに離れる事になる。
その時、俺の目に入ったのは今まで内側に隠れていた……つまりデカすぎる先端の突起が外界に露出していたのだ。
「えっっっ!」
思わず声を出してしまう俺。
反射的に赤ん坊に逆成長しようとする衝動を抑える事に成功する。
だが興味は止められず初めて見る隆起した突起から目が離せなかった。
「おい、あまりジロジロ見るな」
いつになくしおらしいクレイの可愛い表情と所作に気絶して意識が飛びそうになる。
なんとか現世に魂を留めた俺は慌てて謝罪繰り返した。
「すまない、本当にすまない」
「悪いと思っているのかそなたは?」
胸を隠しながら、いや全く隠せていないのだが俺に背を向けるように振り向くクレイ。
「っ!!!」
衝撃であった。
俺の目の前には広大なる大地、いや上下左右に広がった大陸と呼べる程の真っ白な生尻がそこにあった。
縦に伸びた長方形の尻は触らずとも限界まで柔らかさを追求した素材で出来ていると判断出来る。
更にその下には大陸を支えるかのような見事な逆三角形のぶっとい支柱が添えられていた。
大陸と支柱の繋ぎ目は暗い影になり深く窪んでいる。
その深淵はマリアナ海溝より深いと推測された。
俺の指を定規の代わりとして用い、その深さを体験したいところだ。
彼女から漏れ出した何とも言えぬ臭気にやられ思わずガクついていた腰を落とす。
クレイの太ももに滴る雫はダイヤモンドのように煌めいていた。
「あっあっあっあっあっ……」
衝撃のあまり人語を発せなくなる俺。
俺の半身はメトロノームの振れ幅で上下に繰り返し揺れていた。
クレイが一歩動く度、足先から伝わった振動がふくらはぎを通り太ももを通過し生尻まで届いた後さらに腰肉を震わせる。
それは天然の成せる芸術と言えるだろう。
あまりの光景に俺の意識は停止し視線は虚空を見つめていた。
「おい、どうしたのだアキリ」
そんな俺を不審がってクレイが近付いて来る。
しかし、もう俺は彼女が恐かった。
彼女に向けられた意識、そして卑小なる自己への嫌悪感が内側で乱反射してメンタルをズタズタにしていたのだ。
勝手ながら抱いてしまった感情。理性と本能が互いを殺し合うように争っている。
俺の意識は高負荷によって既にシャットダウン寸前だ。
視覚から伝わる肉塊の暴威と聴覚に入り込んで来る妖精の存在を錯覚する程の美声。
俺の人生経験で組まれた脆弱なCPUでは到底処理出来ない。
お願いだ、今の俺に触らないでくれ。
このままでは壊れてしまう。
鼻腔が吸い込んだ空気にクレイの匂いが混ざる。
俺の虚ろな瞳は既に彼女を映していない。
「お〜い、聞こえているのかアキリ?」
彼女の手が俺の頬を摘む。
一瞬だけ戻った俺の意識が眼前に迫った彼女の顔を捉えた瞬間、発狂した。
「う、うわぁ!」
「落ち着け!いったいどうしたのだ!」
珍しく声を荒げるクレイ。
彼女に抑えつけられる俺。
想像よりもずっと強い腕力は遠き日にあった少年時代の取っ組み合いを思い出させるようだった。
人の肌と人の肌が触れ合う。
その刺激と安心感に俺は意識を飛ばす事になる。
そして完全に気絶した。
どれくらいの時間が立ったのだろう、
やけに安らかな気持ちで俺は目を覚ました。
寝起きの朦朧とした意識な中で優しい声が聞こえてくる。
「起きたか。あぁ、もう取り乱したりするなよ。
殴って気絶させるぞ」
少し物騒な内容が聞こえるがとても穏やかだ。
俺は安心して彼女の顔を見る、しかし胸が邪魔をして全く見えない。
「落ち着いたか?」
「ごめんクレイ、大分迷惑を掛けたみたいだな」
「本当だ。そなたが寝ている間、我が母親のようになだめてやっていたのだぞ。ちゃんと感謝をしたらどうだ」
クレイの手が俺の頭に触れる。
膝枕された状態でよしよしして貰うなんて幼児になったみたいで気恥ずかしい。
「甘えまくるのも結構良いもんだ」
「そなた、少しは我の身になれ」
クレイがアイアンクローを仕掛けてくる。
「痛ったぁ!」
洒落にならない痛さだった。
膝枕を強制解除された俺は座った姿勢でクレイと向かい合う。
当然、彼女は服を着ていて俺は全裸だ。
「すみません、調子に乗り過ぎました。
それと大分落ち着かせて貰った。本当にありがとう」
「貸しにしておく、何かあった時には我もそなたに迷惑をかけるぞ?」
「ああ、痛いの以外だったら何でも言う事聞いてやる」
「分かった、なるべく痛い事を頼むとしよう」
「それは意地が悪いぞクレイ」
「だったらあまり我の面倒にならぬよう今後は気を付ける事だ、そうだな気絶男?」
「……善処します、今回は何もかも俺が悪かった。もっと逞しくなります」
「うむ、反省したらちゃんと改善すれば良い。
この程度で見限る程、我は短気でも狭量でもないのだ」
「ありがとうクレイ」
無表情なクレイが少し微笑んだような気がする。
今はただ彼女の慈悲深さに感謝した。
「それで俺はどれくらい眠っていた?」
「恐らく30分も寝ていないだろう、そう何時間も膝枕をしていたら我の足も痺れるからな」
「長い時間迷惑を掛けたな、本当に済まない」
「もうよい、ところで水浴びはするのか。我は結構疲れているからさっさとさっぱりして休みたいぞ」
「もちろん浴びる」
俺は今回の行いを恥じ自分の至らなさを噛み締めていた。
間違っていたんだ、自己に対する嫌悪感など最初から無かった。あれは己の臆病さから来ている。
それを取っ払うだけで先程のような事にはなるまい。
余計な頭のノイズが消えたら案外クレイの裸を見ても落ち着いていられる事に気付く。
少しくらい頼もしいとこ見せたいななんて柄にもない事を考えていた。
だから俺は何ら恥じる事も無く横から見たらカタカナのトを逆さにした状態でクレイと共に水浴びをする。
無駄に長引かせた反省より強くなる為の努力で挽回していくつもりだ。
「冷たすぎない水温で気持ちいいな」
「うむ、もう8日間は体を洗ってなかったから汚れも溜まっていたし、いい気分だぞ」
8日は結構だなと思った。
それにしては全く不快な匂いをさせないクレイにむしろ驚く。良い匂いだと思ってたくらいだ。
「クレイって良い匂いがするから、そんなに体を洗ってないなんて少し驚いたな」
「そうか?まぁ、我は体を洗うのをよく面倒くさがるのだ。水浴びの回数は人より少ないぞ」
「そういうのって性分みたいなところあるからな。良い匂いがするんだから問題無いか」
「無論だ。我は体を洗えと強制されるたりする事
がなにより受け付けないのだ。このままで生きてくつもりだぞ」
「ああ、それで良いと思うぞクレイは」
「うむ、そなたがそう言うなら変えなくて良さそうだ」
そうして俺達は水浴びを済ませ横になる事にした。
マントを丸めて長い枕にして並んで寝ることにする。
「すぐ眠れるな」
そう言って目を閉じる彼女は全裸だ。
「クレイ、おやすみ」
「うむぅ」
俺はクレイに背を向けて横になる。
半身が遊び盛りの少年くらい元気な姿のままだったが疲労のおかげか奇跡的に眠る事が出来た。
浅い眠りの中、夢か幻覚か知らないが横になった俺にクレイが覆い被さる形でキスをしているのが見える。
「……っんっんっん、アキリ……」
彼女の吸い付くようなキスは甘くて俺は幸福な気分で再び目を閉じた。
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