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第三話 魔物を斬る

俺達の目の前に現れたのはスライムだった。

半透明な体がゆっくりと動いてこちらに近付いて来る。


「よし、剣を抜けアキリ。そいつは雑魚だから攻撃を食らっても痛く無いぞ」


「そうなのか、スライムでも舐めたらヤバそうな気がするが?」


「いいから行け。戦闘は体で覚えるのが一番早いのだ」


「分かったよ」


背中の鞘から剣を引き抜いて前方に構える。

鎧でも着ていれば様になるのかもしれないが今の俺は黒いマントを身に付けただけの全裸だ。

黒マントの変態と評されるのが関の山だろう。


相手との距離が縮まる。

俺は踏み込みスライムに対して振り下ろすように一撃を叩き込んだ。


「ふんっ!」


剣先がスライムに当たりそのまま石畳まで振り落とした。

石畳が鉄を弾く音がカキンと響いて俺は剣を引っ込める。

スライムはというと、まるで攻撃をされた事実が無かったかのように元の形に戻っている。


攻撃が効いていないのかと一瞬思った後、うしろから声が響いた。


「中々いい振りっぷりだぞ。スライムは体の中央にある核を狙うのだ。

それを壊せばそいつは止まる」


それは先に言って欲しかったぜと思いながら、弱点を聞かなかったのも俺かと自省する。


スライムに意識を向け直すと奴がこちらに対して攻撃を仕掛けようとしているのが分かった。

体の一部分が触手のように伸びてこちらに向かってくる。

俺は咄嗟に右側に避ける形を取った。

しかしサイドステップでかわせたと思えた矢先、触手は軌道を変えてそのまま俺の脇腹に殴打をかましてきた。


「グワッ」


見た目からは想像もつかない強い力で殴られた。

攻撃を受けた脇腹はとんでもなく痛い。

クレイの基準はどうなってんだ。

こいつ力は全然雑魚じゃねぇ。


「おい、近接戦では避けるときバックステップが基本だぞ」


そりゃどうもと頭の端で聞き流しながら腹の痛みを堪える。


スライムは間髪入れず触手を伸ばして来る。

今回はアドバイス通り後ろに避けた。

触手はリーチの限界達したのか俺まで届かずに伸びっぱなしの状態だ。


すかさず剣を叩きつけて伸びた触手を吹き飛ばす。


「良いぞ、そのまま核を破壊するんだ」


すっかり俺のコーチになっているクレイからの激が飛んで来る。

どこか可笑しく感じたのは彼女に失礼かもしれないが、指示が的確なのは非常にありがたい。


勢いよく踏み込む、先程よりもスライムとの距離が近い。

そして直前でスライムが仕掛けてきた。

俺は咄嗟の判断ですり抜けるように前に避け、そのまま剣をスライムの中央に叩きつけるように思い切り振り抜いた。


スライムの体が抉れ、先程より硬い物を斬る感触が剣越しに伝わってくる。

そしてスライムは動かなくなった。

俺は初戦闘に勝利する事が出来たようだ。


「ふぅ、何とか勝てたな。アドバイスのおかげでスムーズに動けたよ、ありがとうクレイ」


「素直に聞いたそなたの力だ。

それと最後の攻防は見事だったぞ。初戦闘にしては見込みがある」


「そうか?あんまり戦うのは向いてないと思っていたが努力もしていかないとな。

この剣も使ってやらないといけないし」


「その通りだ、よく分かっているじゃないか。

……おや、なんだお仲間がやって来たみたいだぞ」


「仲間?」


クレイが向いている方に振り向く。

更に5体のスライムが群れをなしてこっちに向かって来ていた。

戦闘による興奮状態も冷めやらぬ頭のまま、再度俺は剣を構える。


「待て、その数はまだそなたには早い。

我が戦闘の手本を見せるからそこで見ているといい」


クレイが俺の前に躍り出る。

改めて見る彼女はやはり美しく、そしてやたら全身的に揺れていた。


「本当に素手で行くのか。剣は使わなくて大丈夫か?」


「無論だ。殴れば倒せるし私には魔法もある」


そう言ってクレイはスライムの群れに飛び込んだ。


一斉に襲い掛かるスライムの触手を危なげなく避けていく。


「いいかアキリ、スライムは動きが鈍いからちゃんと動きを見て避ければこうして囲まれても攻撃を喰らう事はないぞ」


スライム達の中央で踊るように軽やかなステップを続けるクレイ。

彼女が跳ねる度に巨大な胸と尻が見事に揺れる。

衣服で抑えつけられた巨乳の方はドッサドッサと柔らかいスカート越しの巨尻はブルンブルンと縦に揺れている。

俺はそれを見ながら、尻ってあんなふうに上下に動くんだなと関心しならがら自分の半身を縦揺れさせていた。


「まぁ避け方はこんなところだな、次は攻撃方法だ。

こっちはそなたも良く出来ていたぞ、踏み込んで上から振り下ろすようにするのが近接戦では効率的だ」


攻撃を避けながら解説を続けるクレイ。

次は一転攻めの姿勢に入ったみたいだ。

大きく振り上げた足をそのまま下に振り下ろす。

いわゆる踵落としだ。

動きの反動でスカートが捲れ上がり尻に食い込んだ黒いパンツが視界に入る。


一際躍動感のある巨尻の上下運動に俺の半身は縦揺れする事も忘れ、優等生が如くピンと背筋を伸ばしていた。


「凄い身のこなしだ」

思わず感嘆の声が漏れる。


クレイはそのまま全身を揺らしながら全てのスライムを片付けた。

あんな近付いた状況で一撃も触手が当たらないなんてスライムもさぞ驚いた事だろう。


戦いに勝利したクレイが近付いて来る。

「ちゃんと見ていたか。そなたも遠くない内にこれぐらい動けるように鍛錬するからな」


「マジか!?俺あんな風に動けるかなぁ」


「努力次第で出来るようになるぞ」


「そっか、クレイが言うんだったら頑張れそうだ。それにしても凄かったな、あの数に囲まれても攻撃が当たる気配が全く無かった。俺、クレイの強さに感動したぞ」


「そうであろう、アキリが感動しているのはそなたの半身を見ればすぐに分かる。

我の強さがあれば、この程度の迷宮で遅れを取る事はまず有り得ぬ事だ」


クレイのクールな瞳が俺の半身を貫く。

気恥ずかしさに身が縮む思いだった。

反比例している一部分を除いて。


「それでは、取り敢えずスライムを食べてみるか?」


「えっ!?スライムって食えんの!」


「無論だ、こうちょっと凍らすと良い具合に食べやすくなる」


そう言ってクレイは俺の倒したスライムの死体に手をかざす。

彼女の手から冷気が放出されスライムの表面が白く濁っていく。つまり凍らせているのか?


「こんな感じだな?どうだ食べてみろ」


クレイは少し固くなったスライムを千切り俺に渡してきた。

触った固さは寒天に近いだろうか。

口に運んで味を確かめる。


「味がしない……」


食感は寒天に似ている。少し食料っぽくは無いがギリギリ食えない事は無い。


「あまり栄養は無いが腹は満たせるぞ、今は持ち運ぶ為の容器が無いから此処で出来るだけ食べておけ」


クレイもスライム寒天を食べだす。

彼女の顔は無表情だ。あまり美味しくはないのだろう。


「スライムを冷やしたのは氷魔法を使ったのか」


「良くわかったな、我は水と氷の魔法を得意としている。迷宮を探索をする上で何かと使える便利な魔法だぞ」


「そうだろうな……っといつの間にかスライムが消えてる!」


「うむ、それは迷宮が吸収したのだろう。このように此処で死ねば跡形も残さずに姿を消すのだ」


「……なぁ俺って誰かに連れてこられて捨てられたんじゃないか。普通迷宮に裸で寝てるなんて死んだも同然だろ。迷宮を使った人殺しってあったりしないのか」


「あまりそういった話は聞かぬな。そんなまどろっこしい方法は取らずとも人殺しは行われているし、迷宮に入る事自体が非常に危険なのだ。どんな低レベルの迷宮であろうが突然変異が起こって強力な魔物が現れたりする。

力がある者でも安易な探索はしないのが常識で無駄な立ち入りは極力避けられているぞ」


「なるほど、そういうものなのか」


「それに誰かがそなたをこの迷宮に運んだという話も有り得ぬ。

この迷宮に一番最初に入ったのはこの我なのだからな」


「そんな事が分かるのか?そういえば此処に来るまで人と遭遇していないな」


「まだ迷宮自体が見つかっていないのだろう。

我としても目の前に突然現れた迷宮を気まぐれに探索したに過ぎない。

そこに偶然そなたが落ちていたと言う訳だ。

良い拾い物が出来て良かったと思っているぞ」


「未だモノ扱いなのか……それは置いておいて迷宮ってそんな突然現れたりするものなのか?

何か想像つかないんだが」


「そうであろうな、迷宮の出現は直接自分の目で見るのが一番納得出来るだろう。

辺りが霧で覆われたかと思ったら、まるで今までそこにあったかのように存在する。迷宮とはそういうものだ」


「話を聞いていたら、この迷宮の外観が少し気になり始めたぜ。早いとこ出口に辿り着いて見ていたいな」


「良い心掛けだアキリ。迷宮に興味を持つのは探索する人間には必須の素養だぞ。

あともう少し進めば開けた場所に出たと思う。

綺麗な湧き水もあったし、ゆっくり過ごすには最適だ。

そこで軽く寝てからまた出口を目指す事にしよう」


「おお良いな、湧き水で体の汚れも落とせそうだし早く行こうぜ」


「忙しない奴だなそなたは」


初戦闘からの流れは無事に一段落ついたみたいで安心する。

そして高まる水浴びへの期待感に俺の心と半身が自然と膨らんだ。




《この度は【クレイモア戦記】を読んでいただき誠に有難うございます。


続きを読みたいと思われましたら評価やブックマークをして頂けると大変ありがたいです。


また感想やご意見なども気兼ねなくお書き下さい。


作品の質を向上出来るよう努めて参ります


投稿時間は出来るだけ安定させたいと思っています。


応えられるかは分かりませんが、ご希望の時間などがございましたら感想ページ等に書いて頂ければ参考にさせていただきます。


現状では朝の5時〜6時が良いのかなと判断しております。


今回は予定時間より投稿が遅れただけでなく、確認が甘く誤字脱字も散見していたので次回から改善するように努めて参ります》

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