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「翡翠様は病に伏せってらっしゃって、顔を見せることもできないのですってね。お気の毒なこと」
翡翠姫は先代の巫女姫である。
聡明で賢く、よく理を知り、先見の明に優れた明主だった。
ここ半年ほど、体調不良ということで公の場に姿を見せることはなかったが――。
「新しい巫女姫が現れたんで、ほっとして気が抜けたんじゃねえの?」
「そうでしょうか」
「あの人は十五年近く巫女姫をしてるんだ。疲れが出たんだろうよ」
「ですけど、神器の勾玉を渡して後継するという儀式には、翡翠様が必要なんじゃありません?」
「あんなの、ただのお飾りだろ?必要ねえよ」
「またそんな事を言って。罰が当たりますよ」
九曜は金持ちのくせにしっかりと値切って、てきぱきと淡雪の買い物を済ませていく。
荷物を持って、迷いのない足取りで屋台の間を歩く。
どうしてか、淡雪は切ないような、やるせないような気分に襲われた。
立ち止まると、彼は必ず気づいて振り向く。そして、首をかしげ、
「どうした?」
淡雪の側へ駆け戻ってきてくれるのだ。
そうやって何度でも、引っ張ってでも光のある方へ、正しい道のりへと導いてくれる。
「……何でもありません」
いつでも――いつまでも。