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「それで、星雲とやらを殺して、神殿に潜りこんでいるであろう手下を殲滅して、偽の巫女姫はどうするのです」
「国を惑わしたんだ、死して然るべきでしょう」
「星雲にいいように操られているだけだとしても?」
狭霧は怪訝な顔になった。
「何を馬鹿なことを。千早が星降里に何をしてきたのか、どれほど長い間戦ってきたのか、あなたは知らない。だからそんな愚にもつかないことを言えるんだ」
「そうね。だけど狭霧、あなたは一つ忘れています。私は花散里の巫女姫。私の思いは、すなわち里の総意。あなた方が千早をいかに憎もうとも、千早に一度も脅かされていない花散里の民は、それに同情の念は抱いても、復讐の手助けをすることを良しとはしないでしょう」
「それが本音ですか。自分さえよければそれでいいのか!」
狭霧は思わず立ち上がった。
だが、淡雪の眼には覇気があった。思わず気圧されてしまうほどの。
同じ思いを、違う人にも感じたことがある。
――星降里の巫女姫と、星雲だ。
王となるべくして、生まれながらに兼ね備えた力なのか。
だが、負け惜しみであろうと捨て台詞であろうと、狭霧はそのまま従順になってやるほど素直ではなかった。
「俺と藍晶様がいなければ、たとえあなたが本当の巫女姫様でも、生きて聖都へは戻れないことをお忘れなく」
実際、樹海をうろつく獣を仕留めたり、この近辺を根城とする盗賊を追い払ったりしたのは彼らだ。
「淡雪殿」
気がつけば、藍晶は先ほどまでの悲しみに打ちひしがれた顔ではなくなっていた。
「あなたを守って、必ず巫女姫にしてさしあげます。その代わり、私たちに協力していただきたい。お願いします」
何の感情も映さない瞳で、淡雪は藍晶を見下ろした。
「藍晶さん。あなたに人が殺せるのですか?」
巫女姫殺しの重罪人に問いかけるには、あまりにも見当違いで、穏やかで優しい質問だった。
詰問ではなく、心配と労りの気持ちが篭っていた。




