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「門番に何かされたのですか」
淡雪はあえて平坦な声で聞いた。
父親はむっと唇を引き結ぶと、
「あんたみたいな若い子が聞く話じゃない」
「紋様がないか確かめられた。男の衛士の前で、服を脱がされて。そうですね?」
綺羅の顔からざあっと血の気が引き、青ざめる。
「あ、あんた……そうか、あんたもなのか」
父親が頬をぶたれたようによろめいた。
淡雪は否定も肯定もしなかった。
涙ぐみ壊れそうなほどに震える綺羅の傍に寄り、その手を取って、自分の額に当ててひざまずいた。
ちょうど、邸で藍晶が淡雪にしたように。
「ごめんなさい」
それは恭順を意味する正式な跪拝だった。
綺羅も両親も、藍晶も狭霧も、ぎょっと目を見張る。
「い、いいんだよ!辛い目に遭ったのはうちの子だけじゃない。あんただって……辛かったね」
母親が慌てて割って入り、とりなしてくれた。
「藍晶様、これを!」
その時、新聞に目を落としていた狭霧が唐突に叫んだ。
「どうした?」
狭霧は、新聞の一面を指さした。
藍晶が思わず声を上げる。
「翡翠様を殺した犯人が割れた?」
「ああ」
と父親が頷いた。
「やったのは偽巫女と、あの巫女姫殺しの藍晶らしい。酷い話だよ」
狭霧が顔色を失う。
必死に堪えているものの、今にも父親に飛びかかり、喉首をかき切りそうだ。
なるほど。ここで翡翠の死という情報を明かし、その犯人に偽巫女を仕立て上げれば、偽巫女を徹底的に探して殺す理由をよりいっそう強化できるというわけか。
絶妙の間合いで利用するために、翡翠の死を伏せ、その体を保存しておいたのか。
――どこまで死者を冒瀆すれば気がすむというのだ。
三人は家族連れと別れると、迷いの森と呼ばれる青林山の麓の樹海へ入った。
ここは現地の人々も滅多に訪れようとはしない。ひとまず見つかる可能性が最も低い場所と言えた。
だがどこまで逃げようとも、星雲は藍晶を、淡雪を追いつめる。
本当の意味で安全に息をつける場所など、どこにもないのだ。




