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白と黒を基調とした、かっちりとした礼服。腕には複雑な文様がかたどられている。
神殿に仕える者の式服であることは一目瞭然だった。
「神祇官……」
男が青ざめて言葉を失う。
「準、だけどな」
少年はにやりと笑った。
手を離すと、男は無言で脱兎のごとく逃げ出していった。
「すげー逃げ足だな」
男の後姿を見つめて口笛を吹くと、少年は少女に向き直った。
「大丈夫か?淡雪」
淡雪と呼ばれた少女はにっこりと笑った。
雪のように白くきめ細かい肌、大きな暗緑色の瞳は、光を浴びると鮮やかなエメラルド色に輝く。
桜色の唇、くっきりと孤を描く眉。
男が吸い寄せられるのも頷ける、清楚可憐な美少女だった。
「ええ。助けてくださってありがとう、九曜」
九曜と呼ばれた少年は、淡雪の乱れた髪を慣れた手つきでとかしてやった。
艶やかな黒い髪は、さらさらと肩を流れる。
「お前を助けたんじゃねえよ。あの男を助けてやったんだ。お前の恐ろしい急所蹴りからな」
「まあ。そうでしたの」
淡雪は微笑んだ。
籠から何もこぼれていないか確認し、安堵の息をつく。
輩に絡まれるなど、淡雪にとっては日常茶飯事だ。
それよりも、胸騒ぎがおさまらないことが気になっていた。