21
明石は大きく息をついた。
「今日、この日あなた方がここへ訪れたことも、あらかじめ定められていたことなのでしょう。恐らく真珠姫のことも、その星雲とやらが関わっているに違いありません。巫女を殺すよりも、自分の言うとおりになる少女を巫女として立て、傀儡として操るほうがずっと容易ですし、無傷で里を手に入れることができますからね」
そして、淡雪に向き直った。
「淡雪。このままでは、あなたは命を狙われるでしょう。偽者側にとって、あなたは一番厄介な存在。それにまだ巫女として認められておらず誓願もしていないのだから、殺すことに障害はほとんどない。相手は偽者とはいえ巫女姫を懐中にしているのですから、里中の警邏機関があなたに牙を向くも同然です」
淡雪は、忍び寄ってくる死の危険に身をすくめた。
明石はそんな淡雪の両手をしっかりと握り締め、二人に向き直る。
「藍晶殿、狭霧殿、あなた方に頼みがあります。どうか、淡雪を守ってやっていただけないでしょうか」
狭霧は、値踏みするような目で淡雪を眺め回した。
淡雪は胸を張り、堂々と不躾な視線を跳ね返す。
「この子が巫女姫になれば、きっと星降里の復興に力を貸すでしょう。あなた方の目的も果たせるはずです」
藍晶は立ち上がり、淡雪の傍で膝をつき、その手を取って額にあてた。
狭霧は、
「藍晶様!」
と咎めるような声を出したが、藍晶は構わず、
「こちらこそ、お願いします。淡雪殿……どうか私たちを、星降里の民をお助けください」
見上げてくる視線は、炎のように熱い。
信頼できるかどうかは賭けだが、この状況で護衛を断るのは自殺行為だ。
淡雪はそれが分からないほど愚かではなかった。
それにもう、覚悟はできている。
「分かりました。わたしを護ってくださるのなら、無事巫女姫になったあかつきには、あなた方の望みを叶えましょう」
こうなることが運命なら、私はそれを受け入れよう。
握り締められた掌に、力がこもる。
淡雪の瞳をまっすぐに見つめたまま、藍晶は凛々しく微笑んで見せた。




