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「仕方ありませんね」
少女の繰り出した拳は見事、男の顎にクリーンヒットした。
完全に油断していた男は、攻撃をもろに食らってのけぞった。
顎のあたりを押さえて呻き声をあげる。
「見たところ、十分お元気なようですね。私はこれで失礼いたします」
「て、て、て、」
「手がどうかしたのですか?」
「てめえ!!なめた真似しやがって、このアマ!」
本性を見せた男が、少女の長い黒髪を束にして掴み、引っ張った。
不穏な空気を感じた群衆がざわめく。
だが男は、「見てんじゃねえよ!」と一喝する。
怯えたような視線がいくつもこちらを向いてくる。
少女は冷静だった。
「痛いじゃありませんか。離してください」
「うるせえ!下手に出てりゃつけあがりやがって、来い!」
「お断りします」
髪を持ったまま引きずられ、ぶつりぶつりと毛が抜ける。
少女は顔をしかめた。
仕方なく、男の股間めがけて蹴りを入れようとした時、
「やめろ」
低い声と共に、男は地面に押さえつけられていた。
じたばたと暴れるが、関節技を極められて完全に制圧されている。
上に乗っている少年は、冷徹なまなざしで言った。
「こんな日に狼藉を行うとは、いい度胸してるなお前。儀式の妨害行為及び巫女姫様への叛意とみなし、牢にぶちこむぞ?」