大きすぎるクラゲの大量発生
陸上でもクラゲの大量発生することが増えてきた近頃、
クラゲが大量発生した街はもう住めない街になるという。
主人公の街もそうなってまた移動式住居を転々とすることになるが、主人公はその得体の知れないクラゲに興味を持つようになる。
「この一帯はもうだめだね」
母は呟いて簡易な居住用テントを畳む。こんな山までクラゲが来たんだ。
「何も取りに帰って来れないから、大事なものをちゃんとバッグにしまっときよ」
窓から1匹のクラゲが見えた。
「クラゲが来たらなんでウチを出て行かなきゃいけないの?」
「んー、お母さんもよくわかってないや
でもクラゲが大量発生した街は終わるって聞くし...なによりなんかあんな大きいクラゲ、エイリアンみたいでこわいじゃん」
なんか周りの人は、偏見でクラゲを災害だと決めつけている気がした。
確かにあれだけのサイズのクラゲが押し寄せてきたら地上の構造物は全て破壊されてしまう。
誰か一人でもそのクラゲと対話した人はいないんだろうか。
そんなことでこのまま被災をし続けたり、クラゲの駆除のために政府委員会を立てようとする大人たちの動きが愚かに感じたんだ。
それで、僕は窓の向こう高く聳え立つ、ミズクラゲに話しかけることにした。長ったらしい触手を伝って、クラゲ本体にまで登り詰めて、傘の中に入れた。グローブをしてたのに触手毒に流されてしまったんだ。
「どうして!お前は俺たちの街に来るんだよ!」
クラゲに話しかける。
当然日本語の返事はない。パッションで動物同士分かり合えればいいかなと言う期待しかしてなかったし。
「やめてくれ!!こっちにくるの!おうちがあるんだよ」
クラゲはふぇーーーーと鳴くだけだった。クラゲの頭部の透明な構造体が高速でぐるぐる回転し出した。そしていくばくかノイズがしてから
「ヤ、ヤァぼく、くらげ」
「日本語通じるんだ!」
「ガンバッタ」
「じゃあ!」
「マチ、キチャ、ダメ、ナンデ?」
「だって、そんなに大きかったら、ビルも何もかも壊れるじゃん!」
「オモサゼロダヨ?」
「え?」
「ウケバイイシ」
「ボクラ、コワイ?」
「まあ、かなり怖いね」
「ボクノナカ、こんなヌクヌクフワフワナノニ、コワイカ」
確かにクラゲの中はヌクヌクフワフワしていて居心地最高だった。
「そういや、川崎のあたりはクラゲで酷いことなってると聴いたけど、このまま見てみていいかな?」
「カワサキネ」
そのままクラゲに揺られて空を飛んで、カワサキにやってきた。
「わぁ、これは壮観だ」
みんなクラゲに吸い込まれてクラゲの傘の中でダラダラしていた。中には川崎からうちに通ってる中田の姿もあった。
「おい!サッカー部の練習どうしたんだよ!中田」
「なんかここヌクヌクしてるしいいかなって」
そうか、クラゲの大量発生で危ないのは物理的な被害ではない
このエイリアンクラゲは居心地良すぎるんだ。つまり、人間性をそこから奪われて怠惰になってしまうんだ。
クラゲの壁を齧ってたべてれば生きてけるし、
いきたいところにゆらゆらいけるし、クラゲの中はひんやりお布団みたいで居心地がいいし。
そっか、こういう戦争もあるんだ。クラゲは戦う気はないんだろうけど。
もう僕は楽したいから人間サイドではない気がしてきた。
このクラゲ側の生き方を肯定している気がする
クラゲに寄生する人もクラゲも同じ考え方をしている感じがした。
そう思うと、既存の人間生活をしていた街って
人類が食にありつけたのにさらに働くとかいうとんでも無く意識高い集団なのかもなと思った。
なんか本当に傘の中は心地が良くて起きるのも億劫になった。家族が心配しているだろうか?
そんなこともどうでも良くなった。
食べるのに困らないのなら、寝ていたい。
だから僕はクラゲといることを選んだ。
十日で僕自身がクラゲに飲み込まれてクラゲの一部になってしまうらしいのだけど。
こうやってエイリアンクラゲは世界人口の80%を捕食していったのでした。
でもこれは不幸なんですかね?