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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

超常的オカルト現象研究探索記録

いつから変えたの帰り道

作者: ウラエヴスト=ナルギウ

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。短いものなので、長いものを好む人は見ないで下さい。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


ご了承下さい。

 帰り道。読んで字の如くだ。漢字の意味さえ分かれば小学生でも分かる。

 家でも何でも良い。何処かから出て、出た所に帰る。そのための道。それだけの道。

 その道は何か特別なことが起こらなければ変わることは無い。例えば遅刻したり、残業したり。そんな状況じゃなかったら帰り道はただの見慣れた日常だ。つまらない日常だ――。


 八月七日。

 会社に夏休みと言う概念は無いのだろうか。あと半年すれば労基にチクってやる。

 曲がりくねった登り坂。そこのガードレールに沿って歩く帰り道。私は重い体を引きずって歩いていた。

「あの上司め……。何時かハゲ散らかしたあの頭に抹茶をぶち撒けてやる……!」

 時刻はもう夜だ。夏の夜は早いと言うのに私はどれだけ仕事をしたのか。何時終わらせたかも記憶にない。

「……このまま社畜で人生を終わらせたくないなぁー……」

 疲れ切ったこの体に曲がりくねった登り坂はキツすぎる。街頭で余すところなく照らしてくれるのは有り難いが、もう少し坂を緩やかにして欲しい。

「よ……う……や……く……登りきったー!」

 一番キツイ登り坂は登り終えた。後は平坦な道だ。

 だが、歩くとなると三十分はかかる。

 駅の近くは家賃が高い。私の会社のような労働基準法ガン無視の賃金だと彼処に住むしかない。

 五分ほど歩いて分かれ道を右に曲がった。

 いつもならこの時間は誰もいない。そのはずだ。だが、少し奥には街頭に照らされた誰かがいた。

 何せこの時間だ。幽霊か何かと言う思考にまず行き着く。だが、良く見れば足がある。格好も現代的だ。取り敢えずは日本式の幽霊ではないようだ。

 私は安堵の息を鼻から漏らした。

 その人は髪を短く切っており、女性のような体型だ。襲われる心配も無さそうだ。

 私はその人を横切った。顔が一瞬見えたが、中々に美形だ。レズビアンではない私でも惚れてしまいそうなほどだ。ハリウッド女優にでもなったら良いんじゃないかと思ってしまった。

 四分ほど歩いて分かれ道を左に曲がった。

 ここから街頭は少なくなる。夜に女性一人で歩くのならとても恐い思いをするが、少し向こうに交番がある。それで少しだけ安心できる。

 交番の中から漏れる灯りが街頭の代わりだ。その中に警察官もきちんといる。

 流石にあの女性のことは言わなくても大丈夫だろう。不思議に思うだけで聞くのも何だか申し訳ない。

 そのまま真っ直ぐ進んだ。ようやく家だ。

「ただいまー……――」


 八月八日。

 今日も私は社畜のまま。残業なんて滅んでしまえ。

 曲がりくねった登り坂。そこのガードレールに沿って歩く帰り道。私は重い体を引きずって歩いていた。

「まさかあの上司のハゲ散らかした頭に部下のラーメンがかかるとは……」

 時刻はもう夜だ。今日は時間は分かる。もう十一時だ。

 だが、タイムカードは十時に切られている。今日はまだマシなほうだ。いつもは上司に勝手に定時でタイムカードを切らされてしまう。

 やっぱり頭にぶち撒けるのは抹茶じゃ駄目だ。緑茶にしてやる。カッチカチに冷えて固まった緑茶だ。

「……ペットボトルから直接ぶち撒けてやる」

 疲れ切った体に曲がりくねった登り坂はいつも通りキツすぎる。国の税金はこう言う時のために使って欲しい。

「のーぼーりーきった!」

 一番キツイ登り坂は登り終えた。後は平坦な道だ。

 いつか転職して賃金を増やして良い所に住もう。七夕の短冊にそう書けば良かった。

 五分ほど歩いて分かれ道を右に曲がった。

 昨日は街頭に照らされた女性がいたが、近隣住民にあんな人はいない。最近引っ越してきた人か、それとも里帰りでここまで帰ったのか。それは分からない。けど、今日はいないだろう。

 その予想はどうやら間違えていた。また同じ所で街頭に照らされ立っていた。

 やはり幽霊か何かなんだろうか。それにしてはあの時一瞬見えた顔は生気がきちんとあった。

 影も見える。不気味には思うが、怖がる必要は無い。

 私はその人を横切った。

 昨日とは少しだけ違う感覚がした。何だか気分が悪くなる匂いがその人から漂っていた。

 そこまで強くはないが、微かに違和感を感じる匂い。

 あまりすぐに分からない匂いだ。だが、特に気にするものでは無いだろう。

 四分ほど歩いて分かれ道を左に曲がった。

 少し歩き、交番の前を通った。

 だが、何故かその交番の中に警察官がいなかった。何か緊急性の高い事件でもあったんだろうか。

 私は何故か横切った女性を思い出した。それと同時に、あれが何の匂いか思い出した。

 あれは、血の匂いだ。気分が悪くなる生々しい匂い。

 つまり交番の警察官が動くほどの緊急性の高い事件は……。あまり考えないでおこう。

 そのまま真っ直ぐ進んだ。愛しの我が家だ。

「ただいまー……――」


 八月九日。

 昨日のせいで寝不足だ。そのせいで仕事効率が悪くなって更に遅くなってしまった。

 曲がりくねった登り坂。そこのガードレールに沿って歩く帰り道。私は眠たく重い体を引きずって歩いていた。

「……眠い……。あーそうだ……警察にあの人のことを言わないと……」

 時刻はもう夜だ。もう時間も分からない。寝不足で体力が不味い……。

 今はもう、あの綺麗な女性の顔が少しだけ怖く感じている。知っている情報で人を見る目が変わる良い例だ。

 ……いつまでも不安になっては駄目だ。上司の復讐を考えよう。

 緑茶は良い考えだと思う。ならば、冷たいのではなく、地獄の釜で煮たあっつあつのものをあのハゲ散らかした頭にかけてやろう。

「魔法瓶に詰めたものをかけてやろう」

 いつもより体が重い。この登り坂を登るだけで一苦労だ。

「……やっと……」

 一番キツイ登り坂は登り終えた。後は平坦な道だ。

 こんな所早く引っ越そう。あの人が不気味に思えて仕方が無い。

 五分ほど歩いて分かれ道を右に曲がる前に立ち止まった。

 影に隠れながら向こうを見た。

 今日は街頭に照らされた女性はいないようだ。私は安堵の息を漏らした。

 目撃した私まで狙うかもしれない。そんな恐怖はまだ私の背中に這っていた。

 今日も安眠できないようだ。

 四分ほど歩いて分かれ道を左に曲がった。

 少し先の交番に入り、警察官に軽く会釈をした。

「すみません。少し良いですか?」

「どうしました? こんな……夜中に」

 心配そうな顔で警察官の男性はそう問いかけた。

「実は……昨日と一昨日に変な人がいたんですよ」

「変な人ですか?」

「昨日この近くで何か事件があったんですよね?」

 すると、何故か警察官は驚いた顔をした。

「……そ……うですね。それがどうしましたか?」

「昨日、道で血の匂いがする女性が立っていたんです。少し怖くて」

「な……るほど……。特徴は覚えています?」

 そう言って、警察官は手帳のようなものを片手に、ボールペンを片手に持った。

「女性で、髪を短く切っていました」

「身長は?」

「170〜180くらいですかね……。あと美人でした」

「……ちょっと待っててください」

 そう言い残し、奥に入っていった。

 奥にいるもう一人の古株の警察官と何やら話した後に、またこちらに戻ってきた。

「えーと……あまりそれを他の人に言わないでください」

「何でですか?」

「……この近くにあったのは事故です。事件じゃありませんよ。ですので、その人を貶めるような発言になる可能性があるからです」

 先程と言っていることが違う。私はその矛盾に気付いたが、警察官の深刻そうな顔にそれを聞くことは出来なかった。

 すると、その警察官は手帳の一ページを破り、それを手渡した。

「お帰りください。心配でしたら家まで送りますが?」

「……大丈夫です」

 私はもう一度、帰り道を歩いた。

 貰った紙には、乱雑な字でこう書かれていた。

「あれは事件です。事故扱いされていますが、被害者の証言があります……。……じゃあ何で動かないの……?」

 止めどなく溢れてくる不安の感情。やはり安眠は無理そうだ。

 しかし、考えれば考えるほど訳が分からない。少しでも事件性があるなら調べるはずだ。ネットに蔓延る陰謀論のように国を操る人でもいるのか? そんな人いるならとっくの昔に世界は平和になっている。

 ……何故これを渡したんだろう。隠すことならこんなことをしなければ良い。それも分からない。

 私はそのまま真っ直ぐ進んだ。ようやく家だ。

「……ただいま――」


 八月十日。

 考えすぎて寝不足だ。それに上司からも叱られた。今日だけでも散々な日だった。

 曲がりくねった登り坂。そこのガードレールに沿って歩く帰り道。私は重い体を引きずって歩いていた。

「……何だったんだろう……あの言葉……」

 時刻はもう夜だ。こんな心情でも残業を押し付ける上司に新たな復讐を……。

 ……昨日はあの女性がいなかったから、今日もいないことを祈ろう。

「……登りきった……」

 ようやく一番キツイ登り坂を登り終えた。平坦な道を歩くことも嫌になる。

 五分ほど歩いて分かれ道を右に曲る前に立ち止まった。

 影に隠れながら向こうを見た。

 今日もあの女性はいないようだ。私は早足でその道を駆けた。

 少し走ると、何かにぶつかった。

 私の前に透明な何かがいる。柔らかい感触や人の肌ほどの暖かさをその見えない何かから感じる。

「すみませーん」

 そんな男性の声が聞こえた。ひとまずあの女性では無さそうだ。私は安堵の息を漏らしてしまった。後ろを振り向いた。

 ……最悪だ。

 あの女性だ。男性の声だからと安心することが駄目だった。

 あの女性……もう分からない。男性かもしれない。あの人は笑顔でこちらを見ていた。

「少し聞きたいことがありまして」

 ようやくあの警察官があれを渡した理由が分かった。

 事件と言うことは加害者がいる。事故として処理されても、加害者を見た私に接触する可能性があるからだ。

 加害者を刺激しないように。事前に教えていたんだ。

「この近くに交番があるんですが、そこに私のような特徴を持った人を見たと言っている女性がいるようなのです。貴方は知りませんか?」

「わ……私です……」

「そうでしたか! お会いできて良かったです」

 あの人は丁寧な口調で明るい声を出していた。

 一歩、一歩と後退りしようとした。あんな不気味な人と対面するだけで夏には似合わないほど体が凍る。

 だが、私の後ろに何かがいる。その何かが私の逃げ道を塞いでいる。

 ……今はとにかくあの人を刺激しないように。

「お会いしたかったのは、少しだけ簡単な()()()を聞いて欲しいんです」

「……何ですか?」

「私と会ったことを誰にも言わないで欲しいんです。もちろんタダでとは言いません」

 不気味な印象とは裏腹に、とても丁寧な口調にさらなる恐怖を掻き立てる。

「貴方の嫌いな人、復讐したい人、誰でも良いですよ。その人を……分かりますね?」

 たった一人だけ思い付いた。この人に敵意が無いのなら、別に良いのかもしれない。

「……私の部の上司……です」

「……成程。程度はどれくらいにしましょうか?」

「……瀕死くらいで。お願いします」

 流石に無理だろう。やれば確実にこの人は捕まる。

「……分かりました。それではまた明日。()()との契約とは本来こう言うものですよね」

 その人は歩いて何処かに行ってしまった。

 私の背後にいる何かも、その人を追いかけたのかいなくなっていた。

 四分ほど歩いて分かれ道を左に進んだ。

 恐怖が私の手足に重りを付けたようなものが体を動かすたびに感じる。

 一度だけ警察に相談するのも考えた。だが、あの人は警察から聞いたような口ぶりだった。もしもう一度警察に言えば今度こそ……考えたくない。

 私から溢れる汗は夏のせいなのか、それともあの人から感じる人外のような雰囲気から来る恐怖心からか。そんなことも今は考えたくない。

 私は精一杯走りながら家にまで辿り着いた。

「……っ……ただいま……――」


 八月十一日。

 どうやらあの人は上司に何もしなかったようだ。今日も綺麗にハゲ散らかしていた。だが、それは良いことだ。少しだけ残念に思ったのは秘密だ。

 曲がりくねった登り坂。そこのガードレールに沿って歩く帰り道。私は重い体を引きずって歩いていた。

「……今日はいませんように……」

 今日は特に残業してしまった。時刻はもう真夜中だ。それに比べて上司は定時で帰ってる。何時か潰れてしまえあのブラック会社。

 もうこの帰り道を通るのも嫌だ。だが、ここを通るしかない。

 半分ほど登ると、正体不明の不安感に襲われた。そこには何もない。いつも見るガードレールと街頭だけだ。

 私は不安感に支配され、足を止めた。

 辺りを見渡した。やはり何もいない。だが、誰かから見られている。その理由も説明できない漠然とした感情だけで私は動いていた。

 右から感じた。

 いや、左から感じた。

 違う、上からだ。

 それも違う。私の後ろだ。

 違う。

「誰よ! 誰が見てるのよ!」

 その大きな声は夜の闇に溶けるだけ。その返答は全くない。

 誰もいないのではなく、見つかりたくないから静かにしているような違和感を感じる。

 まるでかくれんぼをしている子供が鬼を見るように、私を見ている気がする。

 私は走った。恐怖で走った。逃げるために走った。

 登り終えると、その視線は感じなくなった。後ろを振り向いても、やはり何もいない。

 五分ほど歩いて分かれ道を右に曲がろうとした。その前に立ち止まった。

 何かが匂う。気分が悪くなる匂いだ。この匂いを少し前に嗅いだことがある。これは、血の匂いだ。

 私は右に曲がった。そこには、見慣れた寂しい頭皮をした中年男性が街頭に照らされて立っていた。

 やはり上司だ。だが、その様子がおかしい。何か違和感を感じる。より近付いて上司を見た。

 血の匂いはこの人からだとすぐに理解した。

 頬に口の中と通じる穴が二つほど空いていた。そこからも悲鳴混じりの荒い呼吸音が聞こえる。

 胸には針が何十本も深く突き刺さっており、そこから血が腹に、腰に、足にまで流れ、地面に落ちた。

 脚のズボンは焼けた痕があり、露出した脚の肌も火傷があった。火傷の痕は、人間の肌のようにも感じられず、まるで黒い灰のようだった。少しだけ触れるだけでその脚が崩れてしまいそうだ。

 そして、もう一つ、最初から思っていた違和感の正体に気付いた。

 上司は、まるで誰かに抱えられ無理矢理立たされているような印象を受けた。

 私は小さな悲鳴を出した。瞳に涙を満たしながらスマホを取り出した。

 早く警察に……。

「何をしているんですか?」

 私の両肩に誰かの手が置かれた。そして、この声は聞いたことがある。

 もう嫌だ。何故こんな目に私があわないといけないんだ。

 後ろには恐怖がいる。恐怖を司る悪魔がいる。

 振り向きたくない。後ろにあの人がいる。嫌だ。

「貴方が望んだんですよ? きちんと殺してはいません。それに、()()()()()()()って、約束したじゃないですか」

 スマホを持っている私の手が震えていた。

 草木が眠っているように静かな夜のせいか、私の鼓動の音が煩く聞こえる。

「……あぁ、倒れている人がいると言いたいんですね。それなら良いですよ」

 私の体は動かない。後ろが恐い。あの声が恐い。

「どうしました? 早く通報しないとあの人が死んでしまいます。それは私も好ましくありません。……あぁ、成程。私が恐いんですね」

「そ、そんなわけ……」

「恐いんですよね?」

「……は……い……」

 私の背から手が伸びた。救急車の呼ぶために119と入力した。

「さぁ、どうぞ」

 私の背にいた人が前へ歩き、上司の横の空間に触れた。その直後に上司の体が力が抜けたように倒れた。それとも、最初から抜けていたのか。それは分からない。

『救急ですか?』

「は、はい……! 人が倒れてて……」

『外傷などはありますか?』

「え、えっと……!」

 私はあの人の顔をちらりと見た。あの人は口元に指を立てていた。まるで、「私のことは喋らないでください」と伝えているようだ。

「……は、針が刺さっていて……火傷もしています……!」

『場所は何処ですか?』

「え、えーっ……と……」

 そこからはあまり覚えていない。眼の前にいるあの人が、ずっとにこやかな笑顔でこちらを見ているからだ。その顔に、震えていたからだ。

 次に良く覚えているのは交番の中だった。自分がどうやってここまで来たかも覚えていない。それに、何を話していたのかも覚えていない。

 混濁した記憶の中で、確かに残っているのは悪魔の笑顔。あの絶やすこと無い笑顔だけが、私の記憶の隅にずっと座っている――。


 八月二十一日。

 十日も休んでしまった。会社から休むように促されたからあまり後ろめたさはないが。

 久しぶりに会社に行くと、同僚も心配していた。

 それに新しい上司は優秀だった。前の上司はあのまま自主退職したそうだ。残業も少なくなったし仕事は早く終わるしタイムカードは勝手に切らされないし。こればかりはあの人に感謝しなくては。

 だが、何だか疲れた。早くここから引っ越したい。……もう少し稼ぎが上がったらね。

 曲がりくねった登り坂。そこのガードレールに沿って歩く帰り道。私はいつもより軽い体を動かしながら歩いていた。

「……もういないわよね」

 夕焼けに近い赤い空。こんな景色を帰り道で見たのは久しぶりだ。

 あの笑顔はもう二度と見たくない。あの丁寧な口調はもう二度と聞きたくない。

 だが、ここ十日であの人と出会うことはなかった。だからもう、怖い思いをすることは無いだろう。

 半分ほど歩くと、またあの感覚だ。誰かから見られているようなこの不気味さ。

 だっておかしい。あの人とはもうあの日から会っていない。

 この視線はあの人がいたから……。それに会社に行く時は感じなかった。帰る時だけ見られているなんておかしい。

 夕焼けはゆっくりと暗くなっていく。こんな視線を感じながら私は走った。

 最近は帰り道の時ばかりおかしい。

 暗くなり始めた空に合わせるように、影が地面にも落ちてきた。

 登り終えると、その視線は感じなくなった。後ろを振り向いても、やはり何もいない。

 あの時もそうだった。後ろを振り向いても何もいない。これと同じことが起こるのなら、次に会うのはあの人だ。

 ……どうすれば良い。どうすれば……。

 怯えながら、震えながら、時間をかけて分かれ道まで歩いた。

 右を覗いても、あの人はいない。嗅覚を研ぎ澄ましても、血の匂いはしない。だが、私の頭の片隅にはあの笑顔。

 帰りたくない。いつも見ている日常に組み込まれた帰り道のはずなのに。何もいないことは見れば分かる。なのにあの道に見えない恐怖がいる。

 見えないはずなのに、私の本能が逆立っている。そう耳元に語りかけている。あの人と会うまでこんなこと起こらなかった。

 全部あの人のせいだ。あの人が……。

 道から私を呼ぶ声が聞こえる。いや、聞こえるような感覚だ。きっとそうに違いない。

 全てが間違いだ。幻想だ。幻聴だ。今私が感じている恐怖も何もかも全部ウソだ。虚構だ。

 過度なストレスのせいだ。そのせいだ。何もおかしいことはない。私が歩いているのはただの日常だ。非日常的な恐怖は何も無いはずなんだ。

 四分ほど歩いて分かれ道を左に曲がった。

 交番の灯りが何故か懐かしく感じる。この道に入ると、何故か恐怖も不気味さも感じなくなった。

 やはりストレスのせいだ。いつでも頼れる交番を見たことで精神的に安心できたのだろう。きっとそうだ。そうに違いない。

 後は真っ直ぐ進むだけだ。心の片隅に不安がまだ残っているが、それはもう忘れよう。忘れればこんな思いをしなくても良い。

 私はようやく家に着いた。

「……ただ……いま――」


 八月二十二日。

 今日は気分が良い。会社で良い成績を出せた。この精神状態なら恐い思いをすることはないだろう。

 曲がりくねった登り坂。そこのガードレールに沿って歩く帰り道。私は軽やかな体を動かしながら歩いていた。

 少しだけの残業のせいか、辺りはもう暗い。明るく街頭が点いている。

 少しだけ登ると、また誰かに見られているような感覚がする。

 昨日より降りてきているような気がする。昨日よりも、少しづつ、ゆっくりと、その視線の正体が降りてきている。

 だが、それはこちらを見るだけ。あの人のようにこちらに接触することはない。それだけでいくらか安心できる。

 だが、やはり不気味だ。もうどうすれば良いかも分からない。

 そして、登りきれば視線を感じなくなる。……はずだった。

 まだ誰かに見られている。私の背中から視線を感じる。見られる場所がやはり広くなっている。

 五分ほど歩いて分かれ道を右に曲がった。

 元上司が倒れたところだけ綺麗になっている。この道を通るだけであの時の記憶が蘇る。

 血の気分が悪くなる匂い。

 不自然な立ち方をしている瀕死の元上司。

 そして、あの悪魔の笑顔。

 私は息を整え、その道を歩いた。

 誰かが大きな声で私を呼んでいる。何度も何度もくぐもった声で、とても低い声で、とても大きな声で。何度も何度も何度も何度も何度も何度も。耳元で私の名前を叫んでいる。

 だけど、私の視界には何もいない。見えない何かがいるわけでもなく、あの笑顔が浮かんでいるわけでもない。

 なら、誰が私を見ているの。誰が私を追いかけているの。

 背筋にある不気味な気配を背負いながら、いつもより長い時間をかけて分かれ道を左に曲がった。

 私の名前を叫ぶ声は聞こえなくなった。不気味な気配も背中からすぅっと消え、肩の重みが無くなった。

 交番から漏れる灯りに違和感がある。だが、それは些細なことであり、気にすることでもない。

 いつもより漏れる灯りが小さい。本当に些細な違和感。だが、その違和感もさっきまでの不気味な気配と合わせると、何かあるのではないかと勘ぐってしまう。

 それさえも気のせいだ。全てが気のせいだ。いつもいつまでもその全てが虚像だ。

 今はそう信じよう。きっといつかこの虚像も晴れるはずだ。

 私はようやく家に着いた。

「ただいまー……――」


 八月二十三日。

 鬱屈になる。こんな場所を登らないといけないことに。誰かから見られるのはもう嫌だ。

 曲がりくねった登り坂。そこのガードレールに沿って歩く帰り道。私は重い体を引きずって歩いていた。

 登り始めただけで誰かに見られている感覚が前から感じる。そうだ。前からだ。ようやく分かった。この上の前から感じるんだ。

 登りたくない。こんな場所を登りたくない。だって、この上に何かがいる。私を見ている何かがいる。

 一歩、また一歩、歩みを寄せる。

 嫌だ。

 更に歩みが速くなる。

 嫌だ。

 どんどんこの道を登っている。とても力強く、とても素早く。

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。私は登りたくない。帰りたくない。今すぐ引き返して。今すぐ別の所に行かせて。

 私は曲がりくねった登り坂を登り切ってしまった。

 私の意志とは裏腹にだ。私の心は帰りたくない。にも関わらず私の体は喜々として帰ろうとしている。

 もう嫌だ。これ以上進みたくない。これ以上ここにいたくない。これ以上怖い思いをしたくない。

 意志は否定される。

 心は否定される。

 思考は否定される。

 恐怖は否定される。

 今の私は全てを体によって否定される。

 いつもより速く分かれ道を右に曲がった。

 すると、街頭に照らされたあの人がいた。あの人は私に笑顔を見せると、私の体は歩みを止めた。

 先程までの不気味さも恐怖も無くなった。それはそれとしてまた新しい恐怖が目の前にいる。

 あの人は終始不気味な笑顔を貼り付けたまま、こちらを見ている。

 徐々に歩みを寄せている。今すぐ目の前から逃げ出したい。だが、後ろに戻るとあの視線が戻りそうで恐い。

 あまりに怖い思いをすると、体が動かないのは今更ながら良く分かる。大きな恐怖の前では、人など震えるしか出来ない。

 あの人は私の前に立つと、口を開いた。

「久しぶり……と言うには些か早いですかね? こんばんわ。今夜は月が綺麗ですね」

 この人は依然丁寧な口調で私に語りかけている。

「少し気掛かりなことがありまして。……その様子を見ると、私の予感は当たっているようですね」

 この人は淡々と、説明するような口調で話し続ける。

「視線を感じる、誰かに呼ばれる、異様な気配、恐怖。ですね?」

 私が帰り道で感じた違和感を全て答えてしまった。この人は何か特別な人間。それを簡単に信じてしまった。

「……もう手遅れかもしれませんが、こちらを」

 そう言って、赤いお守りを手渡してきた。

「何か危ない目に会えば、私の笑顔を思い出して下さい。そうすれば、もしかしたらですが、助かるかもしれません。……もう手遅れかもしれませんが」

 そう言って、あの人は私の横を通り過ぎた。私が振り向くと、その人は何かに持ち上げられたように浮いていた。その体勢のまま空高く飛び上がり、夜の闇に消えていった。

 あの人の笑顔が私の頭から消えた途端、また私の足は動き始めた。

 まるで獅子に見逃され、全速力で逃げ出した兎のように。

 いつもより早く分かれ道を左に曲がった。

 私を呼ぶ声が聞こえる。だが、行きたくない。行けば私を呼んでいる何かと会ってしまう。それだけは嫌だ。だが、私の足は進み続ける。

 交番から漏れている灯りがいつもより小さい。昨日よりもよりはっきりと、目に見えて分かるほど。

 だが、その中を見れるほど私の足は遅くない。微かに中に見えたのは、真っ赤な果実。

 赤い液体に塗りつぶされた赤い果実。白い何かが所々露出している。

 その正体が何かは分からなかった。

 分かりたくもなかった。

 分かることを否定した。

 分からないほうが良かった。

 分かっては駄目だ。

 あれは、人だった。いや、厳密にはつい先程まで動いていた人だった肉の塊だ。恐怖に歪んだ顔で分かる。

 それは歪められ、歪曲し、捻じ曲げられていた。

 もう嫌だ。これ以上帰りたくない。

 帰りたい。

 帰りたくない。

 帰りたい。

 帰りたくない。

 帰りたい。

「帰りたくない!」

 誰かが私を呼んでいる。私は行かなくてはいけない。

 あの人が呼んでいる。行かなくては。帰らないといけない。

 私は家の前に立った。

 玄関を開けて、私は声を出した。

「ただ……いま……」

「……おかえり――」


 八月二十九日。

「ねぇ、聞いた? 前の上司の事故を間近で見たあの女性社員の話」

「聞いた聞いた。最近来てないって。何かに呪われてたんじゃないの?」

「そうよね。最近様子がおかしいって思ってたのよ」

 その女性社員が何処に行ったのか、それは彼女だけが知っている。


「早く帰らないと」

 真っ直ぐに下に向かう坂道。私は急ぎ足でその坂道を降った。

 早く帰らないと。待っている。

 私を見ている。そんなに寂しいのだろうか。早く帰らないと。

 私は坂道を下りきった。早く帰らないと。

 辺りはもう夜だ。街頭がポツポツと道を照らしている。早く帰らないと。

 街頭の下には瞳があり、彼が私を見つめている。早く帰らないと。私の頭には瞳があり、彼が私を見つめている。早く帰らないと。私の背中には瞳があり、彼が私を見つめている。早く帰らないと。

 十分ほど歩き、分かれ道を右に曲がった。

 街頭一つ付いていない暗い道。早く帰らないと。

 誰かが私を呼んでいる。誰かが笑顔で私を呼んでいる。気のせいだ。

 彼は私を見ているだけだ。最初は寂しそうに私を呼んでいたが、今は大人しく家で待っているはずだ。だからこれは気のせいだ。早く帰らないと。

 七分ほど歩き、分かれ道を真っ直ぐ進んだ。

 あともう少しだ。早く帰らないと。

 灯りが僅かに漏れる交番が私の目の前にある。何故こんなに懐かしいのだろうか。私は一度も見たことがない。私の記憶にはあんなものは帰り道にない。早く帰らないと。

 どれだけ歩いただろうか。ようやく私は家の前に着いた。

「ただいま」

「おあえり――」


 八月三十日。

「早く帰らないと」

 真っ直ぐに下に向かう坂道。私は急ぎ足でその坂道を降った。

 辺りはもう夜だ。街頭がポツポツと道を照らしている。早く帰らないと。

 街頭の下には瞳があり、彼が私を見つめている。早く帰らないと。私の頭には瞳があり、彼が私を見つめている。早く帰らないと。私の背中には瞳があり、彼が私を見つめている。早く帰らないと。私の足には瞳があり、彼が私を見つめている。早く帰らないと。

 誰かが私を呼んでいる。誰かが笑顔で私を呼んでいる。気のせいだ。

 彼は私を見ているだけだ。最初は寂しそうに私を呼んでいたが、今は大人しく家で待っているはずだ。だからこれは気のせいだ。早く帰らないと。

 違う。

 気のせいだ。早く帰らないと。

 十分ほど歩き、分かれ道を右に曲がった。

 街頭一つ付いていない暗い道。早く帰らないと。

 誰かが私を呼んでいる。誰かが笑顔で私を呼んでいる。気のせいだ。

 違う。

 気のせいだ。早く帰らないと。

 七分ほど歩き、分かれ道を真っ直ぐ進んだ。

 あともう少しだ。早く帰らないと。

 帰りたくない。

 早く帰らないと。

 灯りが僅かに、更に小さく漏れている交番が私の目の前にある。

 光は小さく、そして見えづらくなっている。つまりこれは気のせいだ。最初からなかったものだ。

 違う。

 私の記憶にはあんなものは帰り道にない。早く帰らないと。

 どれだけ歩いただろうか。ようやく私は家の前に着いた。

「ただいま」

「おあえい――」


 八月三十一日。

「早く帰らないと」

 嫌だ。

 真っ直ぐに下に向かう坂道。私は急ぎ足でその坂道を降った。

 嫌だ。

 辺りはもう夜だ。街頭がポツポツと道を照らしている。早く帰らないと。

 嫌だ。

 街頭の下には瞳があり、彼が私を見つめている。早く帰らないと。私の頭には瞳があり、彼が私を見つめている。早く帰らないと。私の背中には瞳があり、彼が私を見つめている。早く帰らないと。私の足には瞳があり、彼が私を見つめている。早く帰らないと。私の瞳には瞳があり、彼が私を見つめている。早く帰らないと。

 嫌だ。

 誰かが私を呼んでいる。誰かが笑顔で私を呼んでいる。気のせいだ。

 違う。

 彼は私を見ているだけだ。最初は寂しそうに私を呼んでいたが、今は大人しく家で待っているはずだ。だからこれは気のせいだ。早く帰らないと。

 違う。

 気のせいだ。早く帰らないと。

 嫌だ。

 十分ほど歩き、分かれ道を右に曲がった。

 違う。

 街頭一つ付いていない暗い道。早く帰らないと。

 嫌だ。

 嫌じゃない。

 嫌だ。

 嫌じゃない。

 嫌だ。

「……早く帰らないと」

 誰かが私を呼んでいる。誰かが笑顔で私を呼んでいる。気のせいだ。

 違う。

 気のせいだ。早く帰らないと。

 嫌だ。

 七分ほど歩き、分かれ道を真っ直ぐ進んだ。

 違う。

 あともう少しだ。早く帰らないと。

 帰りたくない。

 早く帰らないと。

 帰りたくない。

 早く帰らないと。

 帰りたくない。

 早く帰らないと。

 帰りたくない。

「……早く帰らないと」

 もう私の目の前には交番は存在しない。やはりあれは私の帰り道にはなかった。

 違う。

 早く帰らないと。

 帰りたくない。

 早く帰らないと。

 帰りたくない。

 早く帰らないと。

 帰りたくない。

 早く帰らないと。

 帰りたくない。

 早く帰らないと。

 帰りたくない。

「……早く……帰ら……ないと……。彼が……待っている……家で……待っている……」

 どれだけ歩いただろうか。ようやく私は家の前に着いた。

 違う。

 違わない。ここが私の家だ。

 違う。

 違わない。ここが私の家だ。

 違う。

 違わない。ここが。

 違う。

 違う。

 違う。

 違う。

 違う、

 違う。

 違わない。

 違う違う違う違う違う違う。

「……違う……! 私はいつもの帰り道で帰るだけ! あの道は私の家に続く帰り道じゃない!」

 直後に思い浮かんだのは、あの人の不気味な笑顔。

 私の懐から、燃えるような熱さを感じた。そこは私の記憶ではお守りを入れた場所だ。

「おや、これは随分遅いことで」

 あの人は家の玄関の扉の前に立っていた。

「……もう手遅れに近い。少し急ぎますよ」

 あの人は家の扉に手をかけた。そのまま開けようとした。

「離れていて下さい。飲み込まれますよ」

 あの人は扉を思い切り開けた。

 その先の空間にいたのは、もはや生物とも言えない造形の怪物だった。

 直径は2mを優に超える肉の塊が、まるで鼓動と合わせるように全身を蠢かせていた。

 肉の塊には瞳が無造作に埋め込まれており、それぞれが別々の特徴を持っていた。

 金色の目。銀色の目。緑色の目。黒色の目。灰色の目。青色の目。それぞれが蠢いていた。

 その肉の塊から人間の口が一つ、浮かび上がった。

「こちらによこせ」

「そうはいかない。この女性は元の世界に帰す。この女性はあのまま帰り道を通るべきだ」

「……われらのためににんげんがけんしんてきにつくすのはあたりまえのことだ。なぜいまごろのにんげんはそのみをかみにわたさない」

「人間は身勝手だからだ。自分の身を守るために。だが、それは我々と変わらないはずだ。我々だって、殺されないために人間に恵みを齎す。何も変わらない」

「……よこせ」

「そうはいかない。もし、これ以上人間に手を出すのなら、こっちも容赦はしない。俺と戦う気があるならそれでも良い。その方が手っ取り早い」

 その怪物はそれ以上何も喋らなかった。この人はそのまま玄関を閉じた。

 そして、指をぱちんと鳴らした。

 その直後、私の視界は暗闇に閉ざされた。

 次に現れた灯りは、小さな小さな焔。焔は辺りにも現れ始めた。やがてあの人を照らした。

「さぁ、後はいつも通りの帰り道を歩くだけです。しかし簡単には帰れません」

 そして、あの人の背後に数多くの鳥居が現れた。大きさも様々で、そこから感じる雰囲気も様々だ。

「この先の一つだけが貴方の元いた世界です。私は教えられませんが、貴方なら分かるはずです」

 今ならあの人の笑顔がとても優しく思える。私は鳥居に近付いた。

「……一つ助言を。貴方がいたあの世界は貴方が元いた世界ではありません。最悪あの世界に帰ってしまいます。最も慣れ親しんだ鳥居を潜って下さい」

 私は様々な鳥居の前を歩いた。そして、一つの鳥居の前に佇んだ。

「……ここです」

「……本当に、そこで宜しいですか?」

「はい。ここです」

「……それなら、どうぞ」

 私は、足を一歩前に出した――。


 九月一日。

 曲がりくねった登り坂。そこのガードレールに沿って歩く帰り道。私は重い体を引きずって歩いていた。

 いつもの帰り道だ。日常に組み込まれた帰り道だ。

 時刻はもう夜だ。街頭は辺りをまんべんなく照らしている。

「ようやく登り切った……」

 一番キツイ登り坂は登り終えた。後は平坦な道だけだ。

 もう今すぐにでも引っ越そう。

 五分ほど歩いて分かれ道を右に曲がった。

 あの人はいない。一言お礼でもしたかった。

 四分ほど歩いて分かれ道を左に曲がった。

 ここから街頭は少なくなる。夜に女性一人で歩くのならとても恐い思いをするが、少し向こうに交番がある。それで少しだけ安心できる。

 交番の中から漏れる灯りが街頭の代わりだ。その中に警察官もきちんといる。

「あぁ……いつも通りの帰り道だ……」

 早く帰ろう。もうあんな思いをしないように。

 そのまま真っ直ぐ進んだ。もう家だ。

 帰り道。読んで字の如くだ。漢字の意味さえ分かれば小学生でも分かる。

 家でも何でも良い。何処かから出て、出た所に帰る。そのための道。それだけの道。

 その道は何か特別なことが起こらなければ変わることは無い。例えば遅刻したり、残業したり。そんな状況じゃなかったら帰り道はただの見慣れた日常だ。つまらない日常だ。

 帰り道とは、そうあるべきなのだ。

「ただいま」

「おかえり」

 あぁ、いつもの日常だ。何の変哲もないただの日常。

 そうだ。忘れていた。今日は八月三十二日だ。

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。


怖さ全開。趣味全開。

ラストは各々で考えようね!

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