第3話
美澪『わぁ…!すごい賑わってる…!』
場所は妖界の琳帆、大会当日
明楽が柊菜に聞いてみたところ、大会が賑わうなら問題がないと言われた
それに規格外ならば白虎自身が満腹にいく前に既に差が開いていると考えその時にストップがかけられる
流石に白虎の腹を満たすだけの料理は用意されていない為、かなりの差が開いていたらストップはかける、そして追いついてきたらまた食べる、という条件付きだが
それに大会で出てくる料理は元々琳帆にある料理でありその日は特別に会場でも屋台が出てより沢山の料理がその場に集結する事になる
明楽『何とか開こうと、皆頑張っていたからな』
目をキラキラさせて辺りの様子を見る美澪の横に明楽が立ち、そう説明する
惰殺で建物や畑等にも被害は出ていたが活気付ける為にと全地域の妖達が尽力して何とか開いたのだ
柊菜『全ては琳帆に住む者達が、他の地域に住む者達が成し遂げた事だ、俺一人では出来ない、皆が協力して、出来たことだ』
更に柊菜が来てしみじみとしながら二人のそばに寄る
柊菜『美澪も楽しめ、屋台には琳帆の美味いものが揃っている、お前が好きそうなチゲスープも向こうにあった、せっかくだから食ってみると良い』
そう言い残し、柊菜は大会の事があるからと急いでまたどこかへと急ぎ足で向かっていった
明楽『美澪、行くか?』
美澪『うん…!』
明楽の問いかけに、美澪は笑顔で頷く
その笑顔を見て明楽もつられて笑顔になり、手を差し出し行こうと誘う
明楽の誘いに美澪も嬉しそうに手を置いて握りしめる
明楽『他にも気になったものがあったのなら遠慮せず言うんだぞ美澪』
美澪『えへへ、ありがとう』
にこにこと幸せそうな笑みを浮かべながら美澪は明楽に手を引かれて歩いていく
その背中をどこか羨ましそうに見つめる者がいた
茜璃『………』
茜璃だ
自分のキャラ的にも自ら甘えにいくようなものでもなければ手を差し出してそのまま、と行くようなものでもない
どちらかと言えばのんびり喋りながら普通に歩く、の方がしっくりくるような気がした
が、本音言えば茜璃だって甘えたい時は甘えたいのだ
美澪の幸せそうな表情を見て良かったと安心する気持ちと同時に甘えられて羨ましいなという気持ちにもなり意図せず表情が少し暗くなる
白威『茜璃?どうしたんだ?』
そこに物を買って帰ってきた白威が茜璃の側へと寄るが行きはなんて事なかったのに帰ってきたら表情が少し暗いのでどうしたんだ、と心配しながら問いかける
茜璃『あ、おかえり白威、大丈夫よなんて事ないわ』
少し考え事をしていただけだ…と、そう茜璃は言い心配させぬ様にと穏やかに微笑む
まさかこんなくだらない考え事をして心配させてたなんて事したくないし知られたくない
それにまだ始まったばかりだ、急ぐのは良くないしそれは欲張りだ
そうだから、ゆっくりのんびりいこう
そう茜璃は心の中で一人決意した
白威『………』
その様子を見た白威は何かを考える様子だったがしばらくすると「閃いた…!」と言わんばかりの表情を浮かべた
白威『おい茜璃』
茜璃『…?何かし…むぐっ…』
呼ばれたと白威の方を振り向くがその瞬間口の中に何かを入れられた
茜璃『………』
なんだこれはと食べているが少しづつその味が何なのか分かってきた
茜璃『これ…シフォンケーキ…』
自分の好物だと目をキラキラさせ白威を見つめる茜璃
白威『お前の好物だろう?そこに一口サイズにカットされたものがこうやってカップに入れられ売られていたんだ、見つけたから買ってきたんだ』
そう言うと白威は茜璃の手を取りそのまま引いて会場の方へと歩いて行った
白威『どうせなんだから近くで見よう、それに座って食べた方がきっと食べやすいだろう?』
茜璃『…えぇ、そうね、…ふふっ、そうね、そうしましょう』
成り行きとはいえ結果的には白威と手を繋げたと茜璃は手を引かれて白威の背中の後ろで幸せそうに微笑んでいた
…というのを白威は全て見通してた
からこれなのかと思い切って手を繋いでみたが正解だったみたいだ、良かったと思うと同時にこんなにも可愛い表情をするのかとチラッと茜璃の表情を盗み見ては恋とは凄いもんだと少しの間天を仰ぎながら会場の方へと向かった